地球では
父との電話1
『もしもし? 俺だよ俺、俺だけどさ。元気にしてるか?』
ラトソールダンジョンの30層をクリアした翌日の朝、地球で目覚めた俺はぼーっとスマホでネットサーフィンをしていた。そんな折、父さんから電話がかかってきたので取ってみると、電話口からこう言われたのだ。
「いや、オレオレ詐欺かよ?! ってツッコミが欲しいのかもしれないけど、それって普通、子供が親にするやつだろ」
『それでもスルーせずに、ちゃんとツッコんでくれるあたり、やっぱり我が息子は優しくて親思いだな!』
「いやいや、意味が分からん。何と比較してそうなるんだよ……」
『いやな。この前、和樹から聞いた話なんだけどさ』
和樹とは俺の血縁上の叔父の名前。つまり、咲良や加奈の親であり、俺の育ての親だな。
~~~
和樹「もしもし? 俺だよ俺、俺だけどさ」
加奈「……」
和樹「……」
加奈「……」
和樹「(汗)」
加奈「……?」ガチャ
~~~
『って事があったらしくてさ。スルーした上で、無言でガチャ!だってさ。和樹ってば、相当ショックしてたぜ。で、それに比べたら俺の息子はいい奴だなって!』
「いや、加奈ならそうなるだろ……」
サク姉にそれを仕掛けたら、きっといいツッコミが発せられたと思うけど、加奈だとなあ……。加奈は基本的に静かな子だから、少なくともツッコミ役には向いていないと俺は思う。
『それはともかくとしてだな。どうだ、調子は?』
「調子? うん、良いよ。父さんは?」
『いや、それだけかよ。もっとこう、ほら。色々あったんだしさ、言う事もあるだろ?』
「何かあったっけ?」
『いや、ほら。ステータスとやらが出てきたじゃないか! それ以外に何があるって言うんだよ~』
「ああ~、なるほど。って、逢魔が日からそこそこ経ってるじゃん」
『逢魔が日? ああ、日本ではそう呼ばれているのか。まあ、色々あって忙しかったんだよ』
「だろうと思ってたけどさ。あれだろ? 父さんが前に探索してた遺跡がダンジョンになったんじゃない?」
『正解だ! よく分かったな……って言うほどでもないな。うん、まあ。そういう事だ』
「でも、父さんは考古学者だろ? 正直、あまり役に立たないのでは……?」
『いやいや、何を言ってるんだ。父さんはトレジャーハンターだぞ? だから、まさにぴったりじゃないか!』
「そう、なのか? まあ、確かに一般人よりはノウハウを持ってそうだよな」
『まあな!』
「なるほどね~と素直に納得するとでも思ったか! どうせあれだろ、探索に便利なスキルを授かったとかそんなとこだろ?」
『お、凄い。まさかそこまで見透かされるとは。正解だ。実は、なかなか面白いクラスとスキルを授かってな』
「ほうほう」
『まずはクラス【教授】とスキル【思考加速】、これはメジャーなスキルだな』
「そうなのか? なかなか凄そうに聞こえるけど」
『【思考加速】はあくまでデスクワークが早くなるスキルなんだ。弾がゆっくりに見える、なんてことは無い。思考力が向上するだけだから、凄いって程でもないぞ。便利ではあるがな』
「へえ、なるほど。で、他には?」
『クラス【トレジャーハンター】とスキル【ドロップ上昇】【トレジャーハント】。これがなかなか便利なんだ』
「【ドロップ上昇】? 【ドロップ数上昇】ではなくて?」
俺が持つクラス【コレクター】のスキルに【ドロップ数上昇】があるが、それとは別なのか?
『違うな。ドロップ数とドロップ率にバフがかかるみたいなんだ』
「ドロップ率って幸運値じゃないのか?」
『今の所、似ている。けど、幸運値バフとは違って、俺のはドロップ率に特化しているんだと思う』
「ふーむ、なるほど。で、【トレジャーハント】は?」
『隠し部屋の発見、罠の発見、索敵なんかが出来る。トレジャーハンターに相応しいスキルだな!』
「それは凄い! なるほど、そんなスキルもあるのか……!」
『まあ、そういう訳で、ダンジョンの探索に駆り出されたって訳。まあ、俺も乗り気だったしな。楽しかったぜ~! まさにゲームって感じで! 今、日本ってダンジョンに入れないだろ? いやあ、入れないお前たちが可愛そうだ!』
「先に言っておくけど、俺達も逢魔が日の当日にダンジョンを探索したんだ。だから、ダンジョン探索を自慢されても困るんだ」
『へ? どういう事?』
「ステータスシステムが起動、学校が混乱、休校になる、帰るや否やダンジョン探索って事」
『マジかよ! すげえな! え、どこにあったんだ?』
「夢見町の月見山」
『まじか、結構近所じゃん! ってなんでそこにダンジョンがあるって分かったんだ?』
「ふふふ。スキルを授かったのが父さんだけではないって事さ!」
どうせダンジョン対策課やお義父さんお義母さんも知っている事だ。父さんに話しても問題なかろう。そういう訳で、軽く自分の授かったスキルについて話す。大半は隠すけどな。
『そっか、【魔力感知】に【水魔法】かあ。羨ましい限りだなあ』
「だろ? 攻撃、防御は勿論、氷の生成なんかは実生活でも役に立つから、かなり便利なんだぜ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます