俺のマナは騒いでいるか?
俺達三人は同じ高校に通っているので、昇降口までは一緒に登校する。昇降口で姉さんと分かれ、教室までは加奈と二人になり、教室に着くと別々に行動する事になる。
今日も加奈は女の子のグループに加わって談笑し、俺は男子グループととりとめのない会話をするのだ。
さて。俺が自分の席へ向かうと、赤坂がなにやら自慢げな顔をしているのが見えた。何があったのだろうか?
「よく来てくれたな赤木よ!」
「はあ。別にお前の為に来たわけではないが。ともかくまずはおはよう。で、なんの用だ?」
「赤木って魔力の動きが見えるんだよな?」
「そうだな。スキル【魔力感知】だな」
ダンジョン発見に貢献した際、学校を公欠した訳で、その理由を聞かれた俺は素直に話したのだ。だから、俺が【魔力感知】を使えることは知られている。
「そうそう。それで俺を見てみてほしいんだ!」
「別にいいけど、どうかしたか? もしかして何かスキルが生えたとか?」
「いや、まだスキル化はしていない。いや、スキルの枠組みに入らない能力と言った方が良かろうか?」
「?」
「この世界に魔法が生み出されたと知った俺は、日夜その存在を研究したのだ。そしてその結果、ついに自分の体にある魔力を知覚出来たのだ!」
確かに魔力は(基本的に)全員の体に宿っているエネルギーであり、赤坂も例外ではない。だが、本当に知覚できるのだろうか? もしそんなことが可能なら、すぐに【クラス】や【スキル】に反映されると思うのだが?
「よーく見てろよ~。これが新しく手に入れた俺の能力。
目を閉じ、集中する赤坂。魔力感知を全力で使って、彼の魔力を観察する。観察する。じっくりと観察する。……。
赤坂は集中を解き、俺の方をドヤ顔で見た。
「俺のマナは騒いでいるか?」
「一ミリも動いていないのだが?」
「なんだとぅ! 確実に、確実に何かが体内を駆け巡っているのに……!」
「ほーらみろ。何が『スキルの枠組みを超えた俺だけの能力』だよ!」
「ぐぬぬぬ……」
稲葉が赤坂をあおり、赤坂は悔しそうに睨み返す。この二人って仲が悪いようで、なんやかんや仲いいよな。
「なあ、赤木! 本当に全く反応していなかったのか? 確実に何かエネルギーが動いてるように感じるんだよ!」
「そうは言われてもなあ。具体的にはどう感じるんだ?」
「へその下、いわゆる『丹田』にあるエネルギーが全身に広がっていく感覚だ」
そういえばこいつは、魔力がお腹にあると思ってるんだったな。前もそんな感じの事を言っていた気がする。
「言いにくいが、魔力ってのは全身に満遍なく存在するものだぞ? 魔法を使う時は体内を流れるけど、普段は全身に散らばっているぞ?」
「そうなのか?! なるほど、血液みたいな物なのか! そうか、そっちなのか……」
「俺の仮説が正しかったな! ふはははは!」
「血液ともちょっと違うかな? 血液って言うと、全身を流れているだろ? でも、魔力は別に流れている訳ではないんだよなあ……。T細胞みたいな感じかな? 普段は全身のリンパ節にとどまっているけど、必要とあらばそこに向けて移動する……的な」
「「ちょっと何を言ってるか分からない」」
我ながら良い例えだと思ったのだが、理解されなかったらしい。解せぬ。
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