閑話:ゴールデンウィークの一幕、咲良との一日
姉さんが勉強部屋から出てきた。受験勉強で肩が凝っているのか、「疲れた~」と言いながら腕を回している。
「お疲れ様。何の勉強してたの?」
「English!」
英語か。そういえば、最近はポートフォリオに書くために実践英語技能検定準一級の勉強をしてるって言ってたっけ。
「I see. So, I've just made a coffee. Do you want some?」
せっかく姉さんが英語で話しかけてきたんだ。俺も英語で返す。意味は「コーヒー作ったけどいる?」である。
「Yes! Thanks」(うん! ありがと!)
「Sugar and milk?」(砂糖とミルクは?)
「Milk, please」(ミルクお願い)
「Ok, here you go」(はい、どうぞ)
「Thanks. うーん、勉強終わりのコーヒーは最高ね!」
「間違いない」
「うーん……。テレビ点けていい?」
「別にいいぞ」
姉さんはコーヒーを飲みながらテレビを見始める。俺も姉さんの隣に腰掛けてテレビを見る
「ママとパパは?」
「買い物兼デート中」
「加奈は友達と遊びに行ってるんだっけ?」
「ああ。女子会を開くらしいよ」
曰く「男子禁制! A組女子の、A組女子による、A組女子の為の女子会」が開催されるらしい。参加者は10人越えらしいので、相当大きな集まりみたいだな。
「って事は、今この家には、私達だけなのね。えい!」
「!」
姉さんが俺の膝の上に乗ってきた。
「アユ~。肩揉んでーー」
「お、おう。いいぞ」
「アユ、大きくなったね。昔は私の膝の上にアユが乗っていたのに」
懐かしい話だなあ。小学生の頃は姉さんの方が背が高かったのに、いつの間にか俺の方が高くなっていたな。だから、姉さんを膝にのせていたら、姉弟ではなく兄妹のように見えるだろうな。
「まあ、俺も成長したからな」
「背、抜かされちゃって、私ショック……」
「そうなのか? 俺は姉さんの背が低くて良かったと思うぞ。そのおかげで、今こうやって、姉さんを膝の上に置けるわけだし」
と言いつつ、姉さんの肩を揉む。
「あ~! そこ、気持ちいい! 肩こりが取れていく~」
暫しこうやってくっつきながら、のんびりとテレビを見る事になった。
「うわあ~!」
姉さんがテレビで紹介されているお菓子に目が釘付けになっている。
それはタルトだった。色とりどりのフルーツが載せられている様は、まるで宝石箱のようである。美味しそうである以上に「美しい」と俺は感じた。
「綺麗ね~! いくらくらいするんだろ? ……! 流石、高いわね」
「気軽に買える値段ではないな……」
「そうね。受験受かったら、買ってもらおうかな? っと、そろそろ勉強しなくちゃ。肩揉んでくれてありがとね」
そう言って姉さんは俺の膝の上から去って行った。
◆
俺は近くのショッピングモールへ買い物へ出かけた。
・ビスケット
・青色の紅茶
・ゼラチン
・ホワイトチョコ
・赤色のジュース
・バター(丁度、切れそうになっていたんだよな)
「材料はこんな感じだよな。もう買う物はないかな……。そういえば、二階に製菓用品店があったよな」
製菓用品店で四角形のタルト型とを購入。これで必要な物はすべてそろった。
まずはビスケットを粉砕! 麺棒でバシバシ叩いて粉々にする。そこに溶かしたバターを加えて混ぜ混ぜ。こうしてレアチーズケーキなどを作る際の土台、いわゆる「ボトム生地」が完成する。セパタルトの底にぎゅうぎゅうと詰め込む。ここで、少しだけ勾配をつけておく。俺から見て右側が低く、左側が高くなっている。
次に青色の紅茶を作り、そこにゼラチンを溶かして薄い青色のゼリーを少量作る。先ほど作ったタルト型に青色ゼリーを流し込んだ。ここで、先ほど右側を低くしていたので、ゼリーは右側に偏って出来上がる。さて、冷蔵庫で冷やしておこうか。
ホワイトチョコを湯煎して溶かす。
前にレジンアクセサリーを作る時に買ったものの、結局使わなかった貝殻型のシリコンモールドにホワイトチョコを流し込む。これは、製菓用品としても使えるタイプだったのでこうして利用しているが、「食品には使わないでください」と書いてあるシリコンモールドは使わないように。
貝殻型のホワイトチョコの完成だ。冷やして固めた後、タルト型の左側(まだゼリーが入っていない方)に設置する。
次に赤色のジュース(俺が買ったのは野菜ジュース)を使ってゼリーを作る。完成したゼリーを星形のクッキー型でくり抜いてタルト型の左側に載せる。
完全に無色透明なゼリーを作り、タルト型に流し込む。
冷やせば……完成。ボトム生地は砂、青色の紅茶は海、ホワイトチョコが貝殻、赤色のジュースで作った星はヒトデのイメージである。
名付けて「子供の頃の思い出」である。小学校三年生位の時、家族でどこかのビーチに行った時の思い出をイメージして作り上げた。
美味しそうである以上に「美しい」と感じさせるデザートになったかなあ?
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