閑話:ゴールデンウィークの一幕、父母の会話

※前書き失礼します

 本ストーリーは『どうすれば合法的に従姉妹二人をヒロインに据える事が出来るか』を考えた時に頭に浮かんだ設定です。

 正直に申し上げますと本編に大きく関わることはない、言わば裏設定扱いなのですが、「従姉妹二人とラブラブなんて、義両親が許さないんじゃないのか?」というツッコミを回避したくて書かせて頂きました(笑)


 前書き失礼しました。それでは、本編をどうぞ!



 私は赤木和樹。妻であるさつきと結婚し、程なくして二児の父親となり、そして10年以上が経った。家族関係に大きな問題もなく、楽しく5人で暮らしていた。4人ではなく5人なのは、私の妹の子(つまり私の甥)も一緒に暮らしているからである。

 しかし今日、非常に大きな問題に直面する事になった。正確には問題に直面したというよりも、前からあった問題を再認識したと言った方が良かろう。



 きっかけは甥である歩夢がゼリーケーキを夕飯後に出したことだった。自作したらしいのだが、手作りデザートの域を超えているように思われる。いや、私は料理がさっぱりだから、難易度がどれくらいなのかさっぱり分からないのだが。少なくとも、食べるのがもったいなく感じるような品だった。


 そしてそれが現状を問題視するきっかけになったのだ。歩夢が作ったケーキは見事な出来栄えだった。そして、そんなデザートを見せられた娘二人が

「このままだと私達、アユのお嫁さんじゃなくて、アユのお婿さんになっちゃう!」

「うん、このままだとまずい。アユ君のお嫁さんに相応しい料理の腕前を身に付けないと」

 とか言い始めた。いや、何を言っているんだね、君達は?


 その後、三人は寝る準備を整え、三人で和室へと入って行った。



「仲いいわね、あの三人」


 二人の娘と甥が仲良く寝室に入っていくのを見ながら、妻はそう言う。


「仲がいいのは悪い事ではないが……。どうするんだ? このままだと不味いだろう」


 妻は呑気にしているが、私は問題に感じている。三人の仲の良さについて。

 三人はもう高校生。にも関わらず、三人は同じ布団で抱き合いながら眠る。いくら何でも仲が良すぎるのでは?


「別にいいんじゃない?」


「だが、このままだと、咲良と加奈は結婚できないぞ?」


 変な婿を連れてこようものなら反対してやる!なんて昔は思っていたが、逆に一生独身なのも心配だ。私達が生きている間はいいとして、私達がこの世を去った後、独り身だと何かと苦労するのではないかと思うのだ。具体的には、「病気になった時に誰に看病してもらうのか」などの心配がある。

 などと妻に説明してみる。


「それこそ問題ないんじゃない? 三人で助け合うことができるでしょう? そもそも、歩夢君と結婚すればいいわけだし。和樹さんは歩夢君はダメだと思ってるの?」


「そんな事は無いぞ。為人ひととなりもいいし、二人と気も合う。成績もいいし、家事も出来る」


「ならいいじゃない。というか、これ以上ない優良物件じゃない」


「言い方があれだが、どちらかが余るから……」


「二人とも歩夢君と結婚する、とか? 咲良と結婚して、数年後に離婚。加奈と結婚みたいな」


「いや、ダメだろ? ……世間では再婚なんて普通にある事だし、何も問題ないのか? いやいや、やっぱりダメだろ」


「それにさ。お義父とおさんの件もあるから。いっそ三人で家庭を持った方が良いのではないかって私は思っているのよ」


「あ~。それはなんというか。親父おやじがすまない……」


 私の親父(歩夢たちの祖父)は昔、農業で生計を立てていた。つまり、かなり大きな田畑を有しているのである。そんな親父は少し古い考え方を持っており、「土地は男に継がせる!」と言っているのだ。

 当初、私に相続される予定だったのだが、私には息子が生まれず、妹である佐奈に歩夢が生まれた事によって親父は方針を変更。「佐奈はこっちの苗字を継いで、歩夢がこの土地を相続しなさい」と言ったのだ。

 今後、開発が進むにつれ、土地代が高騰する事を見越すと、親父の有する土地や資産は合計数億になると予想される。額が額だから、佐奈の夫は婿入りし、歩夢君は赤木姓を名乗る事になった。


 つまりだ。このままでは親父の莫大な遺産の大部分が歩夢君に行ってしまうのだ。それは避けたいと思った物の、親父が正式な遺書を書いてしまった以上、覆すのは難しい。


 こういった事情もあって、俺達一家は「娘と歩夢君が仲良くなれば、歩夢君は遺産を均等に分けようと提案するのではないか」と考えてたのだ。これは俺、妻、そして妹夫妻の四人で考えた事だった。あわよくば歩夢君と娘が結婚すれば、相続で揉める可能性が少しは減るのではないか。そう考えてしまった。


 まさかその結果、二人とも歩夢君とラブラブになるとは思っていなかった。


「仕方ないわよ。ずっと田んぼを守ってきたお義父さんが決めた方針なんだから。それだったらいっそ、二人とも歩夢君と結婚すれば、少なくとも三人が遺産で揉める可能性がなくなるわ。三人には揉めてほしくないし、二人とも歩夢君が娶るのが一番かもしれないと私は思ってるわ」


「まあ、な。うーむ……」



 複雑な事情を抱える我が家ではあるが、三人が将来揉めるような事態にならない事を、私は切に願う。





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