第32話 来客者
「
「
白いダウンを羽織った可愛らしい優姫乃さんに私は思わず大きな声が出る。
「びっくりした?」
「はい……、ほんとにびっくりです」
「午後予定あるから午前中の内に来ようと思ってね」
そう言って優姫乃さんはベッドの隣の来客用イスに座った。そして充電中の私のスマホを見て彼女はこう言う。
「あ、これ麗桜ちゃんのスマホ? 連絡先交換しよ!」
さっと優姫乃さんのポケットから出されるスマホに私は「はい」と答える。
そして新規登録画面に〝ゆきの〟と表記された。
「できたっ! 何かあったら連絡してね! 麗桜ちゃんに呼ばれたらすぐ駆けつけるわ!」
「ありがとうございます」
「あとこれ」
優姫乃さんはそう言って一冊の冊子を渡してくれる。
そこには〝○○看護専門学校〟と書かれていた。
「それ、うちの学校のパンフレットなの! よかったら見てみて。カリキュラムとか分かるし、少しでも役に立ったらいいなって」
「何から何まで……ありがとうございます」
私は受け取ったパンフレットを抱きしめるようにかかえてそう言った。
「あら、お客さん。こんにちは。
佐々木さんもこんにちは~。調子はどうかしら?」
香奈恵さんと優姫乃さんが会釈するところを見ながら、私は「こんにちは。平気です」と返事をする。
「そう、ならよかったわ。
えっと、前に歩夢研しゅ……じゃなかった、
香奈恵さんは優姫乃さんに向かってそう言った。
優姫乃さんは香奈恵さんに正面を向けて立ち上がる。
「あ、
これから向かうところですよ」
「村瀬さんね。私は看護師の
じゃあ佐々木さんも連れて行ってくれるかしら?」
私は「えっ」と声を漏らす。歩夢先生に会いたかったから、嬉しい提案につい反応してしまったのだ。
「いいですけど……、麗桜ちゃん、この後何かあるの?」
「あ、いえ。何もないです。ちょっとびっくりして……」
「あら、そうならいいの。
じゃあ麗桜ちゃんと歩夢のところに向かいます」
優姫乃さんは香奈恵さんに向かってそう笑う。
「じゃあお願いしますね。昼頃ご飯を持ちに行って戻ってきてくれれば大丈夫なのでよろしくお願いします」
「任せてください」
2人の会話を聞きながら歩夢先生に会える! と心の中で喜ぶ私は、ベッドからぴょんっと飛び降りた。
歩夢先生の病室に向かう途中、優姫乃さんが口を開く。
「歩夢、起きてるかな?」
「10時過ぎですし、起きているかと……」
「たしかにそうかも!
でも、昨日の夜寝れなかったかもしれない! とか考えるのが好きなんだ、私。
麗桜ちゃんはどう?」
「私は――」
考えること、それってどういうことなんだろう。
少し頭で考えて私はこう言葉を発した――。
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