第48話 やるべきことリスト

 翌朝、私のところに来た通知はお母さんからの『麗桜うららも風邪ひかないようにね』だった。

 画面に笑みをこぼしたとき、部屋のドアが開く。



「佐々木さんおはようございます。体調いかがですか?」



 時間的に香奈恵かなえさんかな、と思い視線を向けると、そこにはバインダーを腕に抱えた大夢ひろむ先生が立っていた。



「おはようございます、元気ですよ」



 私がそう返すと、大夢先生は「よかったです」とベッド横の椅子に腰を掛けた。



「今日はこれを伝えたくて安藤看護師の代わりに来たんです」



 大夢先生から渡される、バインダーから外された1枚の紙を受け取った。

 その紙の1番上、題名には『看護学生来院』と書かれている。



「実は来週から看護学生が勉強のためにこの病院に来ることになっていて、せっかくですので看護学生さんと佐々木さんが話せる機会を作ろうかと思っていて」


「いいんですか?」


「はい。もともと安藤看護師にも専属の学生がつく予定だったので、時間のある時にと思っていました。貴重な機会ですし、今回は1年生の実習なので年齢も近いはずです。気軽に相談や学校の話を聞くことができると思いますよ」


「嬉しいです。ありがとうございます」



 私が頭を下げると大夢先生はこう笑った。



「佐々木さんの頑張る姿勢を応援したいだけですよ。私たち医療関係者にできるのはいつもサポートまでです。頑張る患者さんを見て頑張ろうと思えているので」


「そうなんですね。これからも頑張ります」


「はい。それでは私はこの辺で。朝ごはん取りに行ってくださいね」



 立ち上げる大夢先生に「わかりました」と返事をして、貰った資料を隅々まで確認する。


 近くにある大学の看護学科の生徒が来るんだ……。

 どんな事をしているのだろうと疑問に思った私は大学名を検索してみる。

 実習の様子の写真や、資格獲得率、就職先一覧などの情報がホームページにまとめられている。聞き覚えのある大学だからか、実績は大きく、そして学費もかなり高かった。設備管理や授業、実習などを考えると高くなりがちなのかもしれないけれど、進学となるとお金の不安が大きくなる。

 早く看護師になりたいし、年間費用的にも4年より3年の方が費用を減らせるからとりあえずでも行きたい学校探さないとな。


 そう思いながらスマホの画面を消した。

 1人で決めれることじゃないから今度お母さんが来た時にでも相談しないと……。

 明日から来てくれる看護学生さんにする質問も考えなくちゃね。

 やるべきことリストを書きながら、まだまだやらないといけないことだらけなことを実感する。


 そんななかなのに、そんななかだからか、こんなことを思ってしまった。


 歩夢あゆむ先生に会いたい、と――。



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