第52話 世界と医療に願う
病が流行る前の、世界恐慌が起こる前の世界と現在で違うのはお金の価値だ。
資本主義の世の中でお金は命と同等の価値があって、生活の基盤になるといっても過言ではないだろう。
でもこれも政府はお金の価値を上げる対応をする様子はない。貿易や世界とのお金の感覚がずれてしまうからだろう。
病の発生から1年と少しが経過して、死者も増えて、それでも世界の雨は止まなかった。
世の中で慎重なことはいいことなのだろうけど、私や患者さんの家族、医療関係者は焦りに焦っているのにその動きが見られないことが悲しい。
想いの伝染の壁は実に医療と政府にあるのかもしれない。
だからと言ってすぐの解決はできないのは医療側の、うつ枯れ病を治す実績がないからとも言えるのだろう。
そのためには私のことを治ったと言ってしまえばいいのに。きっとそうしないのは
回復傾向。そう言われたあの日は少しだけ理解をしたくなかったし、気持ちが焦って退院を願ったけれど、今こうやって冷静に考えれば本当にありがたいことなんだと思う。
私が出会った人との繋がりはすごく恵まれている。
出会った人が大夢先生じゃなかったら、
考えてもきりがない運命に対して私は幸せを隠せない。
……そういえばどうしてあの日、お父さんやお母さんが病になっていた私の家に大夢先生は来たのだろう。
あの時すでに私のことを知っていたのだろうか。
この病院から離れた家にどうして足を踏み入れようと思ったのだろうか。
まだ知らないことも、知れないこともたくさんある。
私にとってこの病は夢を与えてくれていいものだったけれど、それは世間には知らされていないし、世間はこの病に対して嫌悪感しか抱いていないだろう。
私にできることがしたい。
生きることの再確認がどれほど大切なものなのか。
回復に向かっている私だからこそこの病の認識を覆してしまいたい。
病が
どうやったら世界にそんな私の声が、想いが伝染してくれるのか考えながらその日は目を伏せた。
頭の中はいろんな言葉や想いが散らばって落ち着かないけれど、就寝時間の音楽が院内に流れたからベッドにとりあえず転がり込んだわけだ。
……熱い。想いの強さが、考えで血がめぐる頭が温度になってあふれ出る。
12月だというのに布団からつま先を少し出して真っ白な天井と見つめ合った。
その白さに、私もこれくらい白くなれたら、優姫乃さんみたいになれたらって思いながら眠りについた――。
先生、私は間違っていますか……? 雨宮 苺香 @ichika__ama
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