第39話 周りの想い
「笑ってもらえると思っていたので、そんな顔をされると困ってしまいます……。何か不満なこととかありますか? 勝手に決めてしまったので――」
「いえ、全然! むしろいいのかなって……」
私の言葉に
「そんなこと気にしなくていいですよ。
それに、僕にも協力してもらうので」
「もちろんです!」
こうして私と大夢先生は取り引きの内容を改め、私は検査結果の書類を受け取った。
大夢先生が手で書いた『医師からのコメント』を読む。
『〝治すこと〟から〝世の中に馴染むこと〟に目標を変えていきましょう。退院の準備です!
何かあればお伝えください。力になります』
手書きというのも相まって、大夢先生の言葉は私の胸に熱くなった。
「私、頑張ります!
治すことも、学校に行く準備も、夢に向かうことも……!」
「はい。サポートさせてください」
私はこぼれそうな涙を必死に抑える。
支えてもらえてそばに居てくれる人の安心感が、私の胸を嬉しくさせたのだった。
コンコン。
「失礼します〜。
あら、大夢先生。ここに居たんですね、お疲れ様です。
佐々木さんこんにちは」
「お疲れ様です。安藤看護師」
「こんにちは!
やってきた香奈恵さんに大夢先生と私はそれぞれ挨拶を交わす。
「あとは安藤看護師に任せますね。
佐々木さんまた今度」
「はい。ありがとうございました!」
入口で香奈恵さんと大夢先生がすれ違って、今度は香奈恵さんが私の近くに来て、お見舞い用の椅子に座った。
「午後はどうしましょうか。
今は午後2時半なので、30分間病棟内歩行でもいいかしら?」
私は「はい」と返事をして、ベッドから足を下ろした。
布団を半分に畳んで立ち上がると香奈恵さんは笑った。
「丁寧なのね。たしか血液型はA型だったわよね?」
「そうです。なんかこういうのきっちりしないと気持ちが悪くて」
「1個1個の行動に意味をもてる人って看護師に向いているのよ」
私は目を見開いた。現役の看護師さんにそう言われて嬉しかったから。
「私は1個1個の行動ががさつすぎて看護学生時代はよく怒られたわ」
あははと口を開けて笑う香奈恵さんに、私はつられて笑った。
「でもやること多いと私も適当になってしまうので気をつけなければです!」
「そうね。
そういえば昼頃に検査結果を聞いたわ。
退院できなくて不満もあるかもしれないけど、前進してることを受け取って頑張れるといいわね」
香奈恵さんのちょっと他人事のような言葉に私が「はい……」とキレのない返事をすると、香奈恵さんは言葉を紡いだ。
その言葉は私を嬉しくさせるのだった――。
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