第44話 話したい
「少し早いけど、私からクリスマスプレゼントよ」
雪が降っている街にオーナメントで着飾られたもみの木が描かれているクリスマスのしおり。
その賑やかそうなプリントに私は笑みをこぼす。
「ありがとうございます」
「大したものじゃなくてごめんなさい。本が好きなんだと思って使えるものにしたの」
「嬉しいです。早速使わせていただきます」
私は今日読もうと思っていた2冊目の本にしおりを挟んだ。
そしてちょうど音が鳴った体温計を脇から取り出して香奈恵さんに渡す。
「うん、今日も大丈夫だね。
朝ごはん取りに行って食べて、食べ終わったら戻しに行ってくれるかしら?」
「はい、わかりました」
「それじゃあまた昼頃来るわね」
私が「はい」と返事をすると、「午前中なら
私は心の中でガッツポーズをしながら「じゃあ朝食べ終わったら行きます!」と返事をした。
ご飯を持ってきた私は、食べる間にスマホを開いた。
歩夢先生から昨日の返信が来ていないことを確かめて、少ししょんぼりしながら『後で伺ってもいいですか?』とメッセージを送る。
そして持ってきたご飯を食べながら、早く返信こないかなぁと思っていたのだ。
結果から言うと、返信は来なかった。
私は返事が来なかったけれど、歩夢先生の病室に向かった。
会いたかったから、声が聞きたかったから。
でも歩夢先生は眠っていた。
その綺麗な寝顔にときめきながらも、起こしてはいけないと部屋を後にする。
部屋へと戻る途中、たまたま廊下で香奈恵さんに会うと、「ごめんなさい、佐々木さん」と声をかけられた。
「今歩夢研修医は体力を消耗する手術をしているらしいの」
「え?」
手術と聞いた私は驚きに溢れた声を出す。
「といっても、点滴の中の液体を体の中で利用させるのに体力を使うからそんなにおおごとではないんだけどね。だから眠ってる時間が長いみたいなの」
詳しい説明に「そうなんですね」と返しながら心の底からほっとしていた。
「だから午前中は部屋でのんびりしててくれるかしら?」
「はい、分かりました。
お仕事頑張ってください」
「ありがとう」
こう言葉を交わして私は部屋に戻った。
朝しおりを挟んだ本を開いて、ゆっくり文字を解いていく。
もちろん、勉強しないといけないことは分かっていたけど、歩夢先生と話せなかったことで少し気分が落ちていた。
だから自分に甘い私は本を読んだ。
そんなまったりと過ごしていた時、開く予定のない私の病室のドアが開いた。
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