第37話 仲直り

 ガチャ。



歩夢あゆむごめん!」



 その後すぐ、優姫乃ゆきのさんは歩夢先生のところに謝りに行った。



「ううん、優姫乃の気持ちもわかるよ。

 心配してくれてありがとうね」



 2人の仲直りの言葉に私はホッとする。



麗桜うららちゃん、これ忘れ物」



 歩夢先生の指先の視を向けると、私のスマホがあった。

 さっき先生と交換してそのまま置いてきちゃったんだ。



「すみません。ありがとうございます」


「いえいえ~。せっかく連絡先交換したのに置いてっちゃったから、連絡できないな~、早く戻ってこないかな~って思ってた」



 無邪気な笑顔を見せる歩夢先生に私は胸を打たれた。



「それは悪うございましたね~」



 私の隣で優姫乃さんがすねた表情を見せる。



「なんで優姫乃が拗ねるんだよ。別に怒ってないし、何ならたくさん話そうねって麗桜ちゃんと話そうと思っていたのに!」


「このっ、麗桜ちゃんバカ!」


「おい、それだとなんか違うだろうよ……」


「え? なんで?

 親ばかみたいな感じ」



 私は優姫乃さんの言葉に思わず笑った。



「ほら、麗桜ちゃんにも笑われるほどアホ発言してるし。

 ってか親ばかと同じ感じって」


「ちょっと、歩夢先生掘り返さないで」



 私と歩夢先生はおなかを抱えて笑った。



「もう……。てか歩夢、そんなに笑って大丈夫なの?」


「大丈夫なわけあるかよ。酸素まずい」



 酸素マスクをずらして普通の空気を吸う歩夢先生に優姫乃さんは怒った声を出す。



「こら。だめじゃん」


「あ、それがね。明日取れる予定なんだ。

 まぁ点滴はまだ続けるみたいなんだけど」


「そっか~、それなら少し安心かも」


「優姫乃は心配しすぎ」



 仲直りして2人の仲の良さに私は安心しながらも嫉妬して、でも2人の笑顔が好きだと思った。


 人の笑顔が好きだと思って、私も笑っていた。






 お昼になって私は食堂に、優姫乃さんは外に向かった。

 1人で部屋に戻って、持ってきたお昼ご飯を口に運んでいるとき、優姫乃さんからの連絡が入った。



『麗桜ちゃん! さっき言い忘れたことなんだけど、受験の時私が使った問題集と専門1年の教科書とかいるかな?

 必要だったら言ってほしくて!』


『ありがとうございます! それで、急ぎではないのですが、もしよかったら譲っていただけると助かります!』



 私は返信する文面を幾度か確認して送る。

 メッセージ画面を閉じて、連絡先の一覧に戻ると『歩夢』の文字が目に入って私の頬が自然と緩んだ。

 早く話したいなぁと思いながらお昼時だし後にしようとスマホを閉じた私は、残っているお昼ご飯を食べつくした――。




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