第31話 看護師の考え
「人のお世話って、難しいの。
こうしなければ、でもこうしたら患者さんは嫌がるし……。
思い通りになることの方が少ないわ。
それにね、看護は保育と違って、空に向かう人がどうしても多い。
どんなに仲良くなっても、どんなにその患者さんを想っても。
それってすごくつらいと思う。
私も今年、受け持ちさんが亡くなることが多かったの……。
それもうつ枯れ病で。
その時回復傾向の佐々木さんにどうしても淡白に接してしまったわ。記録に夢中になちゃって……。今更だけどごめんなさい……。
でもね、
悲しいことだけど私たちがこうやって話している間にも亡くなってしまう人がいるの。
看護師としてどうしても救いたいって気持ちがあるのよ。
この人に関わったからにはっていう運命も感じるの。
だからね、佐々木さんに会えた時から私はずっと回復してほしいと願っているの。佐々木さんは自分のこともこれから先、未来のこともたっくさん考えて、無気力に戻らずに夢に向かってほしいの。せっかく見つけた夢だもの。佐々木さんにしかない体験からできたあなただけの夢。
それに回復した元気な患者さんに私たち医療関係者は救われるから。
だからこれからも頼ってね。お互い頑張りましょう」
そう言って香奈恵さんは腕時計を見下ろす。
「そろそろご飯だから佐々木さん受け取りに行けますか?
私は他の受け持ちさんのご飯を運ぶので」
香奈恵さんがドアを開けてくれたので先に廊下に出て、ドアの前で軽く挨拶を交わし、1人で給食室に向かった。受け取って部屋に戻れた時はできることが増えた実感を感じ嬉しくなった。
ご飯を食べた後はトレーを返却後、部屋でのんびり。
看護師について調べたり、久しぶりのスマホにSNSを見あさったり……。
なんやかんやしている間に意識が遠のいてそのまんま寝てしまった。
……普通の人っぽかったなぁ。
朝起きて、スマホに充電器を指しながらそんなことを思う。
スマホで寝落ちすることがなんとなく家でまったりと過ごす、普通の高校生な感じがしたのだ。
私はそんな些細なことで日常だった生活に戻れ始めていると感じていた。
その日、私は昨日受けたマークシートの診断結果を待っていた。
スマホやテレビでそこから気を逸らせようとしても、大夢先生がいつ来るのか気になって時計をちらちらと見てしまう。
ガチャッ。
10時前。香奈恵さんが来る時間より早いことから、私は検査結果だと期待してドアの方を振り向いた。
でも、見えたのは大夢先生ではなかった――。
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