第38話 古代魔道具だった
しばらくして白金貨50枚とトカゲ代金貨20枚と豚肉(大人)代金貨20枚の合計金貨40枚を受け取り、『黒の書』に収納した後は例の店に行く為に出発した。
普通のトカゲと豚肉(大人)の素材代は同じでけっこう金になるんだなと思った。
討伐報酬は常時依頼であるゴブリンにしか出ないらしいから、他の魔物は基本的に素材代で稼ぐ事になるらしい。
まぁ、後は依頼との兼ね合いだろう。たまに素材は依頼主に渡す事になる奴もあるからしっかり依頼は見ないとダメらしいけど。
まぁ、そんなこんなでまた骨董品屋に到着した。
「お婆ちゃんっ! 指輪買いに来たですよ! さっさと出すです!」
エマの催促が炸裂する。
「おやおや、もうお金を工面出来たんかえ? さすがはリディアじゃのぅ……」
リディアとわかっていたのか……というか知る人が見ればわかるよな……。
「ちゃんと耳揃えて持って来たですよ! レイさんお金を!」
「確かに大量の耳を揃えたな……ゴブリンだが……」
俺は倉庫に山積みされた耳を思い出しながら、白金貨50枚をカウンターに並べる。
「意味がちげぇっすよ! さぁ、お婆ちゃん指輪を!」
「……確かにあるねぇ……よく集めて来たねぇ……今の時代はゴブリンでこんなに稼げるんだねぇ……ほれ、指輪じゃ」
感慨深そうに言う婆さん……実際の所はゴブリンでこんなに稼げる事はほぼ無いぞ?
「ありがとうございます♪」
エマは差し出された指輪を大事そうに握る。
相変わらず、婆さんの胸に入っているんだな……。
つけたくねぇな……。
俺達はそのまま婆さんに礼を言い、店を後にした。
「うふふ……ふふっ……ふひひひ……」
エマの笑い声が不気味に変わって行く。
「気持ち悪いからその笑い方やめろ……」
「うへへへ、嬉しいんだから良いじゃないですか! 早くつけましょうよ♪」
「……あの婆さんの温もりが籠ってるやつだろ?」
「そう言うと思って、私の温もりに変えておきまきた!」
エマは無い胸の隙間から指輪を出す。
「……胸あるのか?」
「本当失礼ですねぇ!? ちゃんと胸ぐらいあるんですが!? ほら、つけて下さい♪」
「……」
婆さんの温もりからエマの温もりに変わっただけまだマシか? エマは指輪を挟めるだけの胸があったのか……これは新事実だな。
俺は指輪を見詰める。
「何でつけないんですかねぇ!?」
「いや、さすがに躊躇うだろ……」
「いいからつけるですよ!」
「はいはい……」
仕方ないか……せっかく買ったしな……。
とりあえず、右手の人差し指に入りそうだなと装着するとサイズ変わった。
マジかこの指輪サイズが変わるのか!?
エマは左手の薬指だ。涎を垂らして表情がヤバいな。
母さん(優しい方)曰く、結婚したら指輪をつける指が左の薬指だと聞いているが……こいつ──まさか既成事実を作る為にあんなに必死だったのか!?
外堀が埋められて行っているような気がするな……。
まぁ、なるようにしかならないだろう。
とりあえず、この指輪の効果はかなり良いのは間違い無い。
俺にとったら魔力の自動回復はかなり、ありがたいからな。それに任務中にエマとはぐれたら探しやすい……。
俺はふと、エマの転職選択肢に
あの
あの店の商品はデメリットの多い物が多かったし、この指輪は問題無いと思っていた……しかし、今の事を鑑みるに──この指輪もある意味デメリットがある気がする。
「レイさん、考え込んでどうしたんですか?」
「……いや、1人の時間の尊さを考えていたんだ」
「?? まぁ、これからは1人になんかさせませんよ! 私がずっと一緒にいます!」
これは確定ではなかろうか?
もうこの事は考えるのはやめよう。
「程々にな? 『自動回復』の効果を調べたいから『黒の書』からベルでも出すか……」
俺はベルを召喚する。
「やっと、出してくれましたね……暇でしたよ……」
「こっちも忙しかったんだよ。それより、お前──どうやったらあんな事になるんだよ……」
俺は復興工事をしている王城を指差す。
死人が出ていないのは幸いだが、風穴が空いてかなり壊れている。
「あぁ、あれはアルファでしたっけ? あの犬がブレスぶっ放しました。僕が当たりそうな人を運ぶのに苦労しましたよ……」
「まぁ、死人を出していないのは褒めてやる」
「本当もっと褒めて欲しいですよ……」
げんなりするベル。
「まぁ、今日は適当に散策するけどベルはどうする?」
「ついて行きます……もうお守りは嫌です……」
この間で相当懲りたのだろう。
俺達は適当に歩き出す。
するとエマから声がかかる。
「レイさん、魔力の回復はどうですか?」
普通に忘れていたな。
「いつもより回復が少し早いぐらいだ。まぁ、あれば便利だな」
『黒の書』からの常時消費魔力を上回っている気がするな。
「へぇ、古代魔道具じゃないですか。よく手に入りましたね?」
ベルの言葉であの値段の高さに納得する。
古代魔道具は高い──これは世間知らずの俺でも知っている事だ。
賢爺の家には大量に置いてあったが……。
まぁ、滅多に手に入らない物が手に入ったと思うか……。
良い買い物かどうかは置いておくが……。
「骨董品屋の婆さんが胸の谷間に挟んで持ってたな」
「……それを付けてるんですか?」
「そうだ」
「……」
なんとも言えない顔をするベル。
いや、気持ちはわかる。
「……何も言わないお前は気遣いが出来る奴だな」
「どうも……」
しばらく無言の時間が続いた。
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