第28話 リディア教と変わらなくね?

 魔法陣のある中心地に順調に向かっている。


 ベルには満腹感はあるのか不思議なぐらい喰らい続けている姿が所々見える。さすがゴミ処理担当だ。


 スレイも機嫌良く血を吸っている。


 たまに撃ち漏らしたゴブリン(大人)はアルファ、ベータ、ガンマの3人娘が5歳の姿でブレスを吐いて倒している。


 その姿を見た、ゲイル達や騎士団長達は頬が引き攣っていたが──


 そんな中、ちゃんとアルファ達は無事に村人を守りながら離脱していた……。



 もう少しで中心に到着する。


「ベル、敵は後どれぐらいだ?」


 俺についているベル(蝿)に向かって話しかける。


『まだまだいますね』


「……なんか増えてね?」


 そんなに時間が経っていないのに、ゴブリン(大人)が増えすぎだろ……。


 ──既に20匹は倒してるぞ?


 まぁ、別に問題はないんだが。


『魔法陣が昨日追加されてますからね』


「……そういうのもっと早く言ってくれね?」


 そりゃあ王様も2人になるわ……。


『いや、1匹だと僕の出番が無いかもしれないでしょ?』


「いや、あるだろ。俺が勝てる保証が無いんだからな」


『ぶっちゃけると、生まれたてでそんなに強くないんですよね? 簡単に終わりそうなので黙ってました』


「ん? そうなのか? なら皆を逃す必要なかったかな?」


『いや、逃して正解ですよ。森の全方位から喰らい尽くすはずが、多すぎて漏れてますからね。だと全てを一気に喰い尽くすのは無理です。避難させるのが最善でしたよ?』


「なら良かった。しかし、この魔法陣刻んだ奴は何がしたかったんだ?」


『……滅ぼしたかったんじゃないですか? この魔法陣──蝿を近付けて調べた感じ僕らが使うような古代魔法陣です。まぁ、手に負えなくなる前に既に破壊しましたが』


 既に破壊してるのか……本当、そういう大事な事は早く言ってくれね!?


「古代魔法陣ね……既に破壊してるなら問題ないか……あの魔法陣って珍しいものなのか? 故郷で使ってる人いたんだけど?」


『……僕もレイさんの故郷が気になりますね……今では失われた魔法のはずなんですが……』


「なんか賢王と言われていたぞ? 爺さんだったから俺は賢爺って呼んでたけどな」


『……あの爺さんまだ生きてたのか……そりゃあ納得です』


「知り合いか?」


『まぁ、昔ちょっとやり合った仲ですね。もしかしてレイさんの故郷って化け物ばっかなんじゃないですか?』


「化け物ばっかだな……俺が勝てる奴がいない……ゴブリンロードだっけ? たぶん一部を除いて普通に倒すぞ?」


『……機会があれば是非見てみたいですね』


「絶対嫌だ! 連れ戻されて地獄のような日々を送る事になる! それで、この魔法陣は誰が作ったかわかってるんだろ?」


『えぇ、今も昔も変わらず──イビル教会が暗躍してますね』


「イビル教会? なにそれ?」


「イビル教会!?」


 俺が疑問の声を上げるとエマの声が聞こえてきた。


「何でここにエマがいるのかな? お前ら説明を」


 とりあえず、一緒にいるアルファ、ベータ、ガンマに説明を求める。


「えっとですね! 無事に森から脱出した時に起きたエマちゃんが森に入ってきました!」


「連れ返そうにも言う事聞かないのでそのまま護衛しながら来ました」


「凄く必死そうだったので私達が守ればいいかなと?」


 アルファ、ベータ、ガンマの順で話して行く。


「……まぁ、来たものは仕方ない。お前らがちゃんと守れよ? 俺達は余裕ないからな?」


「「「イエッサー」」」


「それでイビル教会って?」


 エマが知ってそうなので聞いてみる。


「悪魔ばっかり召喚して悪さをする集団です!」


 凄く簡単な説明ありがとうな! すっごいわかりやすいわ!


 ただ、俺が思った事を言おう──


「リディア教とそんな変わりなくね?」


 魔契約で悪魔使うぐらいだしな。


「あっちはもっとタチが悪いんです!」


 戦鬪狂ばっかの集団もタチが悪くないか?


 そんな事を思っているとベルから補足が入る。


『まぁ、補足すると魔神を復活させる為の集団ですかね? と言っても小物ですがね。そうそう、既に魔法陣を設置した奴は殺してますよ。生かしておいてもろくな事にならないですからね。はい、これはお土産です』


 魔神って小物なんだな……。


「なにこれ?」


 ベルから器用に蝿で運びながら腕輪を渡される。


『魔道具ですよ。古代魔法陣を作る為の補助道具みたいな物ですかね? まぁ、慣れればこんなもの必要ないんですがね』


「ふーん、賢爺に昔使わせてもらった練習用の腕輪みたいだな」


「……レイさん……失われた古代魔法をもしかして使えるんですか?」


 エマが驚いた顔で聞いてくる。


「まぁな。普通の攻撃魔法は初級しか使えないけどな。まぁ時間かかるから実戦じゃ俺は使わないけど」


『「……」』


「何故2人共黙る!?」


『だって、この魔法──ちっ、邪魔だなぁ』


 ベルの話し中にゴブリンキングが現れ、攻撃する。



「やっと、中心地に着いたか……って大人ばっかじゃねぇか……」


「な、な、な、何ですかこの地獄絵図……」


『魔素の供給が無くなって共喰いでもしたんでしょうね。蠱毒って奴ですよ。強い奴だけが残る仕組みですし』


 面倒臭いな……大人だけで100匹以上は確実にいるぞ?


 エマの言う通り、共食いしてたみたいで酷い惨状だな。


「まぁ、さっさと済ますか……行くぞベル──食っていいぞ。一応大人は首から上は残せよ?」


『やった♪ さっさとこっちに来ますね♪』


「私は応援してますね!」


 エマ……何しに来たんだ……まぁ、なんとかなりそうだし問題ないか。


 俺達は周りのゴブリン(大人)を狩る為に動き出す──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る