第27話 行動開始だ

「ベル……リディア教ってそんな事があったのか? 前の使徒とやらの時はどうだったんだ?」


「……ここまで酷くなかったと思いますよ? 前の持ち主は僕を出してくれませんでしたから、あんまり知らないんですよね。それにレイさん達の話から察するに信者が昔と比べて脳筋になってる印象です」


 ……つまり、更に酷い戦闘狂の集団になったのは最近なのか?


「なんかこのままリディアにいても良いのか迷うな……」


「僕もそう思います」


 ベルの表情から察するに昔はきっと世の中の平和を願う為に戦うような集団だったのかもしれないな。何がどうなれば戦鬪狂の集団になるのか知りたいものだ……。


「まぁ、いいか。どうせこの本とれないしな。司祭がまとめて来られたら俺もさすがに対応出来んかもしれんしな」


「大丈夫だと思いますがね……レイさんも力を使いこなしつつありますしね。その内、僕達もなれそうです」


「どういう意味だ?」


「その力が強まれば強まる程──僕達の制限が解除されるんですよ。召喚の制限も徐々に解除されますよ?」


「へぇ〜、それは楽しみだな。とりあえずゴブリンロードだっけ? あれなんとかしないとだな……」


「まぁ、僕が行くまで持ち堪えてくれたらなんとかしますよ」


「それならなんとかなるか……さっさと片付けて来てくれる事を祈るわ。まぁ、負ける気なんてさらさら無いけどな」


「その意気ですよ。さて──こっちに向かって来てますし、出陣しますか? ちょっと面倒臭い事になりましたし。先程、ロードが2匹になりましたね」


「そうか……それは確かに面倒臭いな……行くぞっ」


 あまり良くない報告を聞いた俺は作戦を開始する──


 はずだったのだが……。


「レイさん、私もついて行きますね!」


 エマにより、いきなり躓いた。


「いや、エマ……足手まといだから村人の守りを……」


「嫌です! 私は助祭──必ずレイさんの役に立ちます!」


「はぁ……エマ──」


 俺は両肩を持ち──動けないようにする。


 顔が至近距離になり頬を赤らめるエマ。


「な、な、な、何ですか!? まさか惚れちゃいました!?」


「俺は──お前に死んでほしくない……だから──すまんっ」


「がはっ」


 俺は頸部に手刀を当てて気を失わせる。


「ゲイル──」


「はい……」


「作戦変更だ。今すぐ避難を始めろ」


「今すぐ? 何か問題が?」


「強敵が増えたし、こっちに進軍中だ。間に合う内に逃げろ」


「──!? わかりました……レイさん……ご武運を……」


「辛気臭い顔するな。生き残ったら飯でも奢ってもらうからな?」


「それぐらいするさ……年上としてな」


「そうだな。年下に接するならそれぐらい軽くでいいぞ?」


「司祭様に敬語無しは拙いでしょ? まぁ元々使えてなかったけどな」


「ふん、じゃあ後でな」


「ええ」


 拳と拳を合わせる。


「騎士団長も今言った通り、村人を守りながら避難をしてくれ。俺達が勝てないなら──この場で勝てる奴はいない。もしかしたら──司祭が複数なら望みはあるだろう。最悪の時はリディア教を頼ると良い。これを渡しておく──」


 俺はエンブレムを騎士団長に渡す。


「はっ、仰せのままに」


「アルファ、ベータ、ガンマはちゃんと安全圏まで護衛してやってくれ。そしてまた戻って来い」


「「「はい」」」


 生き残る確率を上げるにはこれが一番だろう。


 ゴブリンロードとやらが2匹になったし、既にこっちに進軍中だからな。



 先頭集団が見えて来たな。


「ベル──殲滅開始だっ! 行けっ! 俺も直ぐに追う。ほら、敵が攻めた来たぞ? お前らさっさと逃げろ! スレイ──剣になれ」


 俺の掛け声でベルは蝿になり──霧散する。


 そして、避難を開始する為に動き始める騎士団員。


 ゲイル達と騎士団長、精鋭部隊は動かない。最後尾で迎え撃ちながら移動するのだろう。



『全く……またゴブリンの血か……』


「スレイ──今回は雑魚の血だけじゃないから安心しろ」


『期待しないで待ってるさ』


 さぁて……行くか──


 俺は『黒勢』を纏い──


 走り始める──


 雑魚は既にベルが凄まじいスピードで骨にしていっているから問題無い──


 俺が相手にするのは──


 ゴブリンの大人だ。


「さぁ、スレイ──血を堪能すると良い」


 俺は一太刀で斬り伏せる。


『ふむ、味は良くないが──栄養はあるな』


 まだまだいるだろうし、いっぱい吸わせてやるよ。


 俺は次々と現れるゴブリン(大人)を斬り伏せて行く──



 すると後ろから『旋風』メンバーの声が聞こえてくる。


「なぁ、ゲイル……俺達逃げる必要あるのか?」


「無い気がするな……ゴブリンキングって雑魚だっけ?」


「「「いや、強敵だろ」」」


「だよな……俺にはあの倒れてる巨体が普通のゴブリンに見えるのだが?」


「「「確かに……」」」



 騎士団の方からも聞こえて来た。



「団長……リディア教の司祭のヤバさが今わかりました……」


「うむ、そうだろう? わしの態度にも納得したか?」


「「「はい……」」」


「それに──あのベルとか言う使い魔……絶対に大悪魔だな……おそらくベルゼバブだ……」


「「「……」」」


「さぁ、わしらも撃ち漏らしを迎撃しつつ退避するぞ」


「「「はっ!」」」



 お前ら聞こえてるからな!?


 俺を異常者みたいに言うのやめてくれないかな!?


 母さん達の方がもっとヤバいからな!?

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