第34話 骨董品屋?

「「はぁ……」」


 俺達は溜め息を吐く。


 お互いに転職したのに思い通りにいかなかった事にショックを受けている。


「とりあえず、街に出て買い物でもするか……」


「そうですね……早く指輪が欲しいです」


 アクセサリーとは言ったが、いつの間にかエマの中では指輪に変換されているらしい……。


 女の子とは怖いものだ。


「じゃあ、行くか……俺、来る前に店発見したんだよ」


「──!? 乙女心が全くわからないレイさんが!?」


「本当、お前失礼だな! 約束もしたし、来る前にちゃんと発見したわ!」


 こういう約束事は母さん(優しい方)が煩かったからな。


 俺達は薄暗い支部から外に出る為に歩き出す。


「眩しいな……」


「まるで吸血鬼のような言葉ですね」


「……本当、何であんな地下に支部があるんだよ……イビル教だったか? あの宗教も地下とかにあるんじゃねぇの?」


「よくわかりましたね! ちなみにあの支部は元々はイビル教の隠れ家だったんですよ? それを内の司教様が奪って改造したんです」


「どっちが犯罪集団かわからんな……」


「まぁ、リディア教の司祭様以上は本当化け物ばっかですからね……(ちらっ)……」


 化け物と言ってから俺を見るんじゃねぇよ!


「一緒にするな。俺は故郷じゃ、一番弱かったんだからな? おっ、俺が発見した店があったぞ」


「全くどんな戦鬪民族なのやら……──って、そこですか!?」


「そうだ」


「……私には趣味の悪い骸骨が陳列しているように見えるんですが?」


「俺にもそう見えるな」


「あそこにアクセサリーがあると?」


「あるだろ。端の方にペンダントがあるだろ?」


「……あのいかにも呪われてそうな奴ですか?」


「あぁ、凄くセンスが良いペンダントだろ?」


「どこがなんですかねぇ!? あんなのつけたら次の日には変死体で見つかりそうですが!? 見た目も髑髏じゃねぇですか!」


「いや、リディア教のシンボルも骸骨だし、信者は皆好きなんじゃないのか?」


「んなわけ無いでしょうが! 私はあのシンボルは常に隠してるんですが!? 制服だって着てないです!」


「……そう……なのか? まぁ、見た目に惑わされてはいかん。こういうのは意外と中に入ったらちゃんとした物が置いてあると──故郷にいた賢爺が言ってた!」


「そいつ誰なんですかねぇ!? ちょ、本当に入るんですか!?」


 俺はエマの手を引きながら店内に入る──


「ひっ」


 エマは中に入ると俺の服をギュッと握る。


 確かにちょっと趣味が悪い気がするな。なんか悪魔とか召喚出来そうな雰囲気だ。


「……おやおや……こんな所にお客さんが来るとは珍しいねぇ……」


 見た目魔女のような婆さんが出迎えてくれる。


「ん? ここは店じゃないのか?」


「面白い童じゃな……店じゃえ? 骨董品のなぁ? まぁ見て行くと良いわい……」


「じゃあ、遠慮なく──この骸骨は何なんだ?」


 俺は大量の骸骨に目を移し、疑問を投げかける。


「殺された者達の怨念が籠っておる呪具じゃな。誰か呪いをかけたい者がおったらお勧めじゃぞ?」


「いや、別に興味無いな。エマはいるか?」


「乙女に何聞いてくれてるんですかねぇ!? そんなもんいらねぇですよっ!」


「そ、そうか。その怖い顔止めろ」


「アクセサリープリーズです! 指輪、指輪……」


「こんな所に指輪なんかあるのか?」


「自分から入って何を言ってるんですかね!?」


「いや、入る前はあると思ってたんだよ」


「指輪なら、あそこじゃ」


 婆さんが指差しながら教えてくれる。


「おっ、婆さんありがとな。エマあったぞ。好きな物選べ。今度こそ俺からの特別報酬だ」


「まさかこんな所に指輪があるなんて……──って、これ呪われてる奴ばっかじゃねぇですか! 『鑑定眼』使ったら、酷い性能ばかりなんですが!?」


「これとか見た目けっこう綺麗な感じだぞ?」


「……それは装備したら──速度が倍になるそうですが……」


「エマにぴったりじゃないか!」


「……酷い痛みが継続的に襲うらしいです……」


「それ、痛いのに速く動けるのか?」


「いや、無理でしょう……メリットとデメリットが打ち消し合うような効果ばかりです……」


「……でも、アクセサリーとしては十分だろ?」


「何が悲しくて継続的な痛みを感じながら指輪つけないといけないんですかねぇ!?」


「それもそうだな……婆さん、もっとまともな物は無いのか?」


 確かにメリットが使えないのにデメリットだけが効果のある指輪とかアクセサリーとして無いな。


「これとかどうかえ?」


 婆さんはローブのペアリングを出して俺に渡す。


 ……生暖かい……婆さんの温もりを感じる……。


「あっ、それ良いですね! 欲しいです!」


「えっ? これ婆さんの肌の温もりめちゃ感じるぞ?」


「まぁ、この際その事はどうでも良いんですよ! この効果はとても良いです! 欲しいなぁ」


 エマの目が輝いている気がする。


 でも、これ……婆さんの胸に挟まれていたと思うと付けたく無いんだが?


「ちなみに効果は?」


「相手の位置がわかるのと、装備者が危機に陥ると知らせてくれるそうです! しかも全体的に強めのバフがかかるようです! 更にですよ! 持ち主に状態異常耐性(中)や『魔力・体力の自動回復(中)』もついてるんです! これは国宝級のお宝ですよ!」


 勢いや声のトーンで相当欲しいのだろう事がよくわかる。


 軽く俺に対してディスられたが……。


 まぁ、効果は確かに悪く無いな。お互いに場所がわかるのであれば──はぐれた時とか居場所がわかるのはありがたい。エマは弱いからあった方が良いだろう。


 必要経費として割り切るか……。


「良し、ならそれを買おう。婆さんいくらだ?」


「……白金貨50枚じゃな」


「エマ、金貨で何枚だ?」


 前に言っていた気がするが忘れた。


「金貨5000枚です! 白金貨は大きな買い物の時にしか使いません!」


 ……高すぎるな……俺の手持ちは金貨10数枚なんだが?


「エマ、とりあえず今すぐは買えん。報酬がどれぐらい入るかわからんが、それ次第で考えよう」


「きっと大丈夫ですよ! ゴブリン二万体だけでも軽く金貨20枚超えてるし、キング一体の素材で金貨10枚ぐらいあるはずですし、それが235体で金貨2350枚、それにゴブリンの見た事ない奴がいますから余裕で払えますって!」


 ……問題はゴブリンの王様がいくらになるかで変わるな……。


 しかし……エマの物欲は計算も早くするのか……。


「エマの目論見通りなら払えるんだろう……婆さん──これまた買いに来るから置いといてくれ」


「誰も買わんじゃろうし大丈夫じゃろうに。まぁ、買うのであれば置いておいてやるわい」


「助かる。また2日後ぐらいに来るからよろしく」


 俺達は店から出て行く。


 エマは既に買った気分なのだろう……凄くご機嫌だ……。

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