第35話 普通の助祭ってなんだろ?
さぁ、金が手に入るまでまだ2日もあるな……。
もうすぐ夜だし、ベル達を呼び戻すか……宿屋も探さないとだしな。
「ベル──もう宿を取るから帰って来い」
『レイさん……ちょっと帰れないんですよ……魔剣と犬が暴れちゃってて……』
「はぁ? お前ら何してんの?」
『……ちょっと人気の無い所で絡まれまして……魔剣が尻を触られたと言って血祭りに上げて、犬は犬でブレス吐いたりしてるんですよね。しかも相手もそこそこ強いし』
「そうか……まぁ、『黒の書』出しておくから適当に帰って来い。俺は何も聞いていない」
『そうですね。適当に暴れたら帰ります』
「殺すなよ?」
『あ、そこは大丈夫です。ちゃんと、そこら辺はご迷惑かからないようにしてますし』
「なら良し」
人は殺すと面倒な事になるからな。ベルに任せておけば大丈夫だろ。俺よりは常識がありそうだし……たぶん。
「何が良いんですかね!? 不穏な言葉しか聞こえてこねぇんですけど!?」
エマが俺の独り言を聞いて問い詰めて来た。
「まぁ、ちょっと暴れたら帰ってくるってさ」
「……ベル君達が暴れたら街が滅ぶんじゃ……」
「さすがにそれは──!?」
地響きが聞こえてくる。
「おい、ベル──」
『大丈夫です。ちょっと王城に穴が空いただけですし、人は死んでません。なんかいっぱい人が来たんでまた後で──』
……王城に穴開けたって、それ大事だよな?
こいつ、まさか人は殺さないけど、物は壊す感じなのか?
「な、な、何が起こったんですか!? 向こうで凄い音しましたけど!?」
「何か王城に穴開けたってよ」
「……私は何も聞いてません」
「もちろん俺も聞いてない事にする……さぁ、宿屋で美味い飯でも食おうぜ?」
「そうですね……高級な料理を所望します! レイさんで疲れました!」
「酷い言い草だな……まぁ、俺も高級な料理には興味がある。すると──宿屋も高級な所だな」
「やったぁぁぁっ! ふかふかベットで寝れるです♪」
「……そんなに喜ぶ事なのか?」
「基本は野宿ですし、今まで安い宿屋の干し草のベットとか支部のソファーとかでしか寝てませんでしたからね!」
「……」
「何なんですか、その失礼な顔は!?」
「いや……好きなだけふかふかベットと料理を堪能してくれ……」
俺は優しい眼差しを送る。
「レイさんが優しい!? でもその顔やめるですよ!」
「そういえば、前から疑問だったんだが、助祭って上納金とかないのか?」
「……一応あります……」
「いくらだ?」
「……金貨20枚……」
「……どうやって払ってたんだ? それに俺より高いぞ?」
何で司祭の俺より高いんだよ……。
「初年度は金貨5枚だったんですが……なんとか死物狂いで納めたら、次の年から20枚に……」
「……って事は俺も来年からは金額が上がるのか?」
「ですね……ローガンさんやリーシアさんは確か金貨100枚だったはずなので、金貨100枚は確実に必要かと……」
「どんな詐欺教会なんだよ……それでエマは金貨20枚払えたのか?」
「払えてません……滞納してます……」
「……それでいくらあるんだ? 俺が払っておいてやるよ」
「本当ですか!? ありがとうございます! これで滞納せずに済みます! もう私の処女はレイさんにあげちゃいます!」
「いや、いらない。それでいくらなんだ?」
「そんな価値がないってか!? ……金額は……」
「金額は?」
「金貨……40枚です……2年滞納してます……」
「なんだ思ったより安いじゃないか。もっと滞納してるかと思ったわ」
「いやいや、十分高いですから……こんなの払えねぇっすよ……」
「そもそも、何で弱いのに助祭とかやってるんだよ……しかも、前に聞いた話だと司祭以上じゃないと特権も効果無いんだろ? 良い所無しだな……」
「……それはですね……育ててくれたお父さんが司教やってるからですね……そのせいで無理矢理……滞納は基本的に出来ないんですけどお父さんさんの計らいでしてもらってます……助祭の特権は司祭のお付きになれる所にあります。そうすれば危険はありますけど、強い司祭様に当たればお金も入る事もあるし、上納金を免除してもらえるんですが……この2年間はお父さんの妨害で1人でしたので……」
司教という事は俺の一つ上の役職か。強さも相当なんだろうな。
「……つまり司教の娘であるエマは周りから強いと思われてると……しかも父親が娘の足を引っ張っていたのか?」
「ですね……これが普通の助祭なら金貨20枚ぐらい納められると思うんですが……私みたいな底辺は無理です……。それに他の助祭の目的がですね……更に強い敵と合う為らしいんで……」
普通の助祭って何なんだろ?
「まぁ、滞納分は俺が払ってやるから安心しろ……だから元気出せって。それに司祭のお付きになったんなら、これからは払わなくて済むだろ?」
「ありがとうございます! 内緒で司祭のお付きの話が来て、一か八かの賭けでしたけど、レイさんについて来て良かったです!」
「……さすが
俺が司祭になるかわからんかったのに良く話を受けたな……。
「うっせぇですよ! でもきっかけがそれでも──今はレイさんと一緒にいれて嬉しいのは本当ですよ?」
ウインクしながら俺に言ってくるエマは少し恥ずかしそうだ。
「金蔓だしな?」
「ふっふふふ、そうですね? これからも付いていきますよ?」
「まぁ、これからも頼むわ」
「はいっ!」
「じゃぁ、宿屋に行こうか」
俺達は夕暮れの中、二人並んで歩いて行く──
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