第14話 言うのが遅いらしい

 俺は直ぐ村に向かいたかったのだが、エマに「準備も無しで行くとか正気ですか!?」と言われて必要な物を買った。


 魔力や体力を回復させたり、状態異常を治すポーション各種や安いテント、非常食などを買ったりした。


 それなりの金額が無くなったが、エマ曰く必要経費らしい。


「ポーションとかも俺がいるからいらないだろ?」と言ったのだが──


「あんなクソみたいな魔法より、ポーションの方が効きます!」と言われた俺は久しぶりに凹んだ気がした。


 何はともあれ短時間で買い出しも終わり、俺達は門の外に出て村に向かっている。


 当然ながら徒歩だ。


 一応、馬車という便利な乗り物があるらしいのだが、目的の村を通る馬車が無かった。


「どれぐらいで依頼主の村に着くんだ?」


「徒歩で約3日という所ですね……」


「けっこう遠いな……無事だと良いんだがな」


「1週間音沙汰無いならまだ大丈夫だと思いますがね……まぁ、走って行っていざ戦えないとか洒落にもなりませんので少し急ぐ程度で良いと思います」


「そう……だな」


 どんな強敵がいるかもわからないからな。俺達しか依頼を受けていないのであれば戦力は俺達のみ。その俺達が戦えないとか笑えない。


「心配なのはわかりますが、間に合わなかった時はせめて埋葬ぐらいしてリディア様に捧げましょう」


「……リディアって人の魂でも食うのか?」


 もしそうなら、神は神でも邪神だろう。


「また呼び捨てにして……いえ、リディア様は冥界と呼ばれる危険な場所の門番です。死んだ魂は冥界に行くと言われています。せめてリディア様のご案内で召されるように祈りを捧げるんです」


「へぇ〜。リディアって凄いんだな。まぁ、間に合う方が良いんだろうけどな」


「直す気全く無いですね……。そりゃー間に合った方が良いですけどね。どんな魔物がいるのやら……本当に守って下さいよ?」


 まぁ、どんな魔物がいようと故郷の村の周りにいた奴らよりはたぶん弱いだろ……あそこは本当地獄のような場所だったからな。よく逃げ出せたと思う。


 特に俺は一番弱かったから、外に出る時は誰かが付き添わないと出れない決まりだったからな……。


「エマを最優先にする事を約束しよう。どんな魔物かいるか──か……敵がわかれば良いんだけどな……そうだ! 盗賊シーフなら遠くの敵とか発見出来るって聞いた事あるんだけど、エマは出来ないのか?」


「……レイさん、確かに盗賊シーフは極めると索敵とか有能な職業ジョブなんですが……私はまだ見習いから卒業したばかりなんです……出来ても少し離れた所ぐらいですよ……それにそんな遠い所は盗賊シーフでも無理です」


「そうなんだな。よくそれで助祭になれたな?」


 戦闘集団でも助祭になるのはまた別の素質とかがいるのだろうか?


「……まともな人がいないからですよ……無茶苦茶な司祭ばっかりですからそれを補助する為に私みたいな人でも助祭になれるんです。それでも私はちょっと特殊ですけど……」


 何故、俺をジト目で見ながら言う……俺は普通だぞ?


 後、何が特殊なんだよ!?


「俺は普通だから安心だな」


「どの口が言いやがるんですかね!?」


「この口だな。しかし、敵が分かれば対処がしやすいのも事実だな……スレイに聞いてみるか……もしかしたら『黒の書』にそんな存在がいるかもしれないし」


「……また、あれ使うんですか? 怖いんですけど……スレイさんは話しやすいんで良いんですけどね……」


「まぁ、別にいきなり他のページで解放するわけじゃないし大丈夫だろ……スレイ──」


 俺はスレイのページで魔力を込めて呼びかけるが反応しない。


『……なんだ?』


 また頭の中に声が聞こえてくるな。


「ん? 何で出て来ないんだ?」


 おかしいな……前はこれで出てきてくれたんだが……まぁ、会話出来るなら問題無いか……。


『出たらまたクソ不味い血を吸わせられるからだ……』


 出てこない理由は、この間のお仕置きが相当堪えているようだ。


「……偏食は良くないぞ? それより聞きたい事があるんだ」


『……絶対出ない……要件はそこで言え』


 スレイのご機嫌が斜めだ……そんなに前のお仕置きが応えたのか……まぁ、要件には答えてくれるならありがたいな。


「レイさんの言葉から察するに……可哀想なスレイさん……こんな畜生が主とか最悪ですよね……」


 エマが何か言っているが無視だ。俺は至って普通だからな。


「なら、索敵とか偵察が得意な奴って本の中にいるか?」


『何人かいる……』


「おぉ! どのページなんだ??」


 いるのか! しかも複数!


『確か……1番浅いページだと、50ページだったはずだ──そいつは──「ありがとな!」──ちょっと待て──』


 スレイが止めていたように思うが、今は急いでいるからな。


 俺は50ページを開く。


 すると蝿がいた。


 正直、目がデカくて気持ち悪い……。


 この蝿が偵察してくれるのか?


 解放しないとわからないな……。


 俺は『黒勢』を使う──


「ちょ、何使おうとしてるんですかレイさん!? せめて何て書いてるか私に言ってからにして下さいよ!?」


「えーっと、蝿の王ベルゼバブかな? ほれ今言ったぞ?」


「はあぁぁぁぁぁっ!? 大悪魔じゃないですか!!! しかも、言うの遅いし!!!」


「えっ? そうなの? でも弱体化してるし大丈夫だろ?」


 目の前に大きな蝿が現れる──


 俺の感想を言おうと思う。


 目が大きくて──ぶっちゃけると気持ち悪い……。





────────────


さてさて、新キャラ登場です!

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