第31話 特別報酬だ
俺達とパーティ『旋風』は一足早く街に戻った。
そして今はギルドに到着した所だ。
「俺達の依頼がどうなったかわからんが、とりあえず換金を頼みたい」
俺は受付に行き換金する事にする。
「レイ様お帰りなさいませ。ご無事で何よりです。何やら集落の討伐にそこのエマ様が変更なされていましたね。隣におられる『旋風』の皆様が依頼を受理されていますが、今回はレイ様が村を守る為に残ったとお聞きしておりますのでギルドの方から特別報酬を出させて頂きます。それと国からも報奨金が出ていますね。とりあえず事情をお聞かせ下さい。『旋風』の皆様もお願いします」
おっ、金は貰えるんだな。しかも国からもか! きっと騎士団長が知らせてくれたんだな!
「それはありがたいな。討伐隊が来るまでに増え過ぎて面倒臭かったからな──」
俺とゲイルが打ち合わせ通りに事情を話して行く。
その途中、受付嬢さんからギルドから討伐隊を組めなかった事の謝罪もあった。今回ギルドが動かなかったのはリディア教司祭の俺がいる事と、事実確認が取れてないせいだと聞いた。ゲイル達が視察する役目もあったそうだ。
リディア教が関係する理由は信者から──『戦闘の邪魔をするなっ!』とよく言われるそうだ。それで動くに動けない状態だったらしい。苦肉の策でゲイル達が派遣されたような形だな。リディア教の影響力をここでも見せつけられた……。
そう考えると騎士団長達というか国は派遣しているだけ優秀なように思うな。
話が続いていくと──受付嬢さんの顔色がみるみる悪くなって行く。
事態が想像以上に悪かったのだろう。
とりあえず、これであの村は今後も依頼を出せるだろう。今のあいつらに必要かどうかは別問題だが……自分達で倒してそうだな。
「……そんなに大量にいたゴブリンを討伐したのですか? しかもキング種もかなりいたのに?」
「そうだな。雑魚だし問題なかったぞ? 今回はゴブリンの耳でしか報酬を貰えないと思っていたから他に報酬が貰えると助かるな」
「レイさん……私には耳を集めて換金する気だったと聞こえてきたんですが?」
エマからそんな事を聞かれる。
「エマ、俺達は上納金を納めなければならない。タダ働きはダメだろ。安心しろ──ちゃんとベルが集めてくれている」
顔面蒼白になるエマ。ついでに受付嬢さんの後ろにいる受付嬢さんは以前、耳の買い取りをしてくれた子でこの子も蒼白になっている。
ちなみにベル達は適当に街で遊ぶと言って出掛けて行ったのでここにはいない。
まぁ、ベルの蝿は近くにいるんだが。
「とりあえず、事実確認を行いますので皆様の冒険者カードの提示をお願いします」
俺達は全員、冒険者カードを出す。
「……少々私は疲れているようですね。ゴブリンの数字が2万を超えていますが?」
ん? 俺はゴブリン(子供)はほとんど倒してないんだが……まさかベルが倒した数も記載されているのか?
「それだけいたからな」
「……いくら何でも多過ぎます! この世の終わりのような数じゃないですか!? しかもゴブリンキングが合わせて235体もいるとかどんな地獄ですか!? しかもレイ様一人で220体も倒してるし! 他にもオークキングとか強敵ばっか履歴にあるんですけど!? 更に──ゴブリンロードって……お伽話に出てくる奴ですよ!?」
「……そんな事を言われても事実だしな……」
何で怒られないとダメなんだ。
「エマ様との会話から察するに──大量の右耳があるんですか?」
「あるぞ? ここに出せばいいか?」
『黒の書』の中は上限が無いのだろう。いくらでも入る。
「や、やめてください! 向こうに素材を出す倉庫がありますからそこでお願いします!」
「わかった。ちょっと行ってくるわ」
俺達は言われた場所まで行く。
「兄ちゃん、素材があるならそこに置いてくれ」
「あいよー」
寡黙そうなおっちゃんが、そう言って来たので俺は『黒の書』からゴブリンの右耳を出し始める。
出続ける右耳……2万個以上あるから止まる気配が全く無い。
「レイさん……さすがにこれは……」
「「「気持ち悪い」」」
『旋風』の面々はドン引きしている。
寡黙そうなおっちゃんは応援を呼んていた。
「何でまた塔を作ってるんですかね!? しかも複数!」
エマが俺に塔を作る理由を聞く。
「いや、なんとなく? こういかに崩さずに積み上げる事が出来るか挑戦したくなった感じだな」
「このままだと倉庫がゴブリンの耳だらけに……そういえば、ゴブリンやオーク以外にも魔物っていたんですか? なんかさっき履歴に凄いのがあるとか受付嬢さんが言ってましたが?」
「凄いのかどうかわからんが、なんかいたぞ? 今回はゴブリンの集落が依頼内容だったろ? だから間引いてた」
「ちなみに何ですか? オークは見ましたけど」
「トカゲとか鬼とか巨体?」
「……言ってる事が不明なんですけど!?」
「まぁ、金になるかわからんから後で見てくれ」
「はいはい、とりあえず今はこれですね……」
「そうだな……まだ出てくるわ……」
雑談しながらも出続ける右耳……。
倉庫の大半が埋まる頃にはなんとか耳は出し切れた。この街はしばらく酔い覚ましとやらの薬に困る事はないだろう。
「兄ちゃん……これで全部か?」
「後はこれって買い取ってもらえるのか? よくわからなかったから首だけ残したんだが……」
俺は大人のゴブリンの生首を出す。エマから討伐の証明に残しておけと言われていたから首だけが大量にある。一応骨も回収したが……。
「……ゴブリン……キング?」
「そう言ってたな。これはどうするんだ?」
「頭だけなのか?」
「一応体もあるが、骨だけだな」
体は腹が減ったと言うベルに食わせたからな。
「ならそれも出してくれ。骨は錬金術の材料にもなるし、かなり頑丈だから色々と使い道がある」
「わかった。首から出すぞ?」
「あぁ。──!?」
了承を得れたので俺は首を床に並べて行く。
苦悶の表情、唖然とした表情、穏やかな表情、凛々しい表情──
色んな表情の生首が並んでいく。
「「「うわぁ……」」」
『旋風』の面々は更なるドン引きをしている。
「……私お暇してもいいですかね?」
「いや、お前俺の助祭だろ? サポートしてくれ」
「嫌だぁぁぁぁっ! こんな所にいたら私まで狂った奴だと思われるぅぅぅっ! 男が更に寄り付かなくなったらどうしてくれるんですかね!?」
「もう今更だろうに……ほらこれやるから元気出せ。今回の特別報酬だ」
俺はゴブリン(大人)の『憤怒の表情』をした生首を渡す。
「こんなもんもらってどうしたらいいんですかね!? しかも元気なんか出るわけねぇですよ! 特別報酬の意味知ってるんですかねぇ!?」
「そうか? 凄く迫力があって良くないか? 置物としてどうだ?」
「こんなもん飾ってたら見た奴がドン引きじゃねぇですか!」
「そうなのか?」
俺は『旋風』の面々に聞くと全員が頷いていた。
おかしいな……母さん(怖い方)は喜んだのにな。
「もっと、おしゃれな奴とか、綺麗な奴とか、アクセサリーとか、指輪とかくれませんかねぇ!?」
何気に最後は要求が明白になっているが?
「……この首に紐でもくっつけたらアクセサリーになったり──「するかっ!」──そ、そうか……なら暇な時に何か買ってやるから落ち着け」
「へへへ、言質取りましたよ? やったぁ〜♪」
とりあえず、これでなんとかなったな。
あー、早く飯食いたいな……。
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