第19話 ゴミ処理担当はベルだ

 到着した日の夜は晩御飯をご馳走してもらい用意してもらった部屋で休む事になった。


 ゴブリンが襲って来たら起こすように頼むと──


 頻繁に叩き起こされた。


 正直言って全然眠れなかった。


 ゴブリンは害虫だと再認識した瞬間だった。


 そして、今は昼間で俺はバリケードの上でゴブリンを待ち構えている。


 ベルは寝床から全く起きる気配が無かったので置いてきた。


 しかし、ゴブリンの子供がかなりの頻度で数は少ないものの襲ってくる……一気に来てくれた方が俺は嬉しいのだが……。


 確かに一般人にこれはキツいだろう……よく1週間以上も持ったな。


 俺は睡眠が足りていないせいで直接倒すのが面倒臭くなった。だから遠距離で倒す事にした。


【火魔法】の初級魔法である『火球』を『黒勢』を使い、威力倍増した攻撃魔法だ。初めて使うが、これなら簡単に殺せるだろうと軽い気持ちでし──放った。


「面倒臭い──死ね」


 その結果──


 黒い火球はゴブリン数匹まとめて消し炭にする。


 俺は後悔した……。


 耳が手に入らないと……後、威力が高くなり過ぎてビックリした。


「レイさん! 凄いです!」


 落ち込んでいると女の子から声をかけられる。


 この子は村長のお孫さんでララというらしい。


 村を守りに来た俺に大層感謝してくれた人だ。


 感謝をされると気持ちが良いものだ。


「大した事ないさ。しかし、これ凄く面倒臭いな……ゴブリンまとめて襲ってこねぇかな……」


「そんな事言えるのはレイさんぐらいですよ。レイさんのお陰でお爺ちゃんも安心して昨日眠れたみたいです。ありがとうございます」


「そうか、良かったな……」


 けっこう、村長もギリギリだったんだろうな。


「はい! 私、お爺ちゃんみたいに強い人が大好きなんです!」


 そうか……強い人はモテるんだな。


「村長は強いのか?」


「昔はBランクの冒険者だったみたいですから。今でも勝てる村の人はいません。最近ずっと夜中はお爺ちゃん一人で見回りしてたんですけど歳のせいか辛そうで見てられなくて……」


 ほほぅ、いつか手合わせしたいものだ。


「まぁ、そうだろうな……俺も夜中にあれだけ起こされたら堪らんからな」


「弟もお爺ちゃんに憧れてて毎日訓練してるんですよ」


「それは良い事だ。いつか男は戦わなければならない時が来るかもしれんしな」


「そうですね。男の人は強くないとです! また来ます。これ朝ご飯なんですが、置いておきますね?」


「あぁ、ありがとう」


 村長の孫娘はパンを置いて戻って行く。



「──また来たか……『火球』──」


 ゴブリンがまた現れたのでスタンバイしていた黒い火球を当てる。


 しまった……また消し炭にしてしまった……。


 なんかこれ『火球』というより、『黒球』だな……火が黒い……。前試しに使った『水球』とか黒くて毒のようだったしな。


 しばらくすると──


「ふわぁぁぁ。良く寝た……レイさん、腹減りました……」


 欠伸をしながらベルが現れる。


「お前はそれしか言えないのか? 腹減ったなら、ここに襲って来るゴブリンでも食っておけ。楽しみにしてたんだろ?」


「はーい♪」


 ベルは蝿を大量に掌から出す。


「……ベル……一応聞く……それをどうするんだ?」


「これで村に襲って来たゴブリンを喰います。ほら丁度、が来ましたよ? 行け──」


 また襲って来たゴブリン目掛けて蝿を放つベル。


 すると蝿共はゴブリン叫び声が響き渡る中、肉だけを喰らい始める。若干魔力が回復しているな……もしかしてスレイの能力とか関係なく──可能性があるな。


 減った魔力が回復するからありがたいな。



 最終的にゴブリンは骨と右耳だけが残され──


 右耳は蝿が俺の元へと届けに来たので、触りたくない俺は『黒の書』へとさっと収納する。


「……ベル……」


 魔力還元とかはその内わかるだろ。それよりも気になる事がある……。


「何ですか?」


「……美味いのか?」


「味が薄いですね……まぁ何も無いよりマシですよ。というより──食事の光景見てその感想は初めてですよ。普通は気持ち悪がったり、怖がったりするもんなんですけどね……やはり貴方は面白そうだ」


「いや、だってゴブリンってどんな調理をしても食べれないと故郷じゃ言ってたんだぞ? 俺も一度食わされた事あるけど吐いたな……それを生で食うとか正気じゃないだろ……」


 あれは確か──母さん(怖い方)の訓練から逃げた時だな……罰として食わされた。あれほど不味い肉はトラウマものだったぞ?


 鼻の奥に突き抜ける汚物臭はこの世の食い物じゃないと一瞬にして本能が悟ったぐらいだ。


「まぁ、美味しくは無いですがね。襲って来るゴブリンは全部食べて良いんですよね?」


「そうだな。金になりそうな奴は食うなよ? 防衛は任せたぞ? 夜中も頑張ってくれ」


「やった! ずっとここにいますね? これでしばらくはご飯に困らない! 夜中も任せて下さい! 僕は寝なくても大丈夫なんで!」


 年相応の笑顔を見せるベル。


 俺も一安心だ。


 これで寝不足から解放される。


 ただ、寝なくても良いなら何で寝てたんだよ!?


 まぁ、骨にしてくれるから死体の処理にも困らない。凄く便利だな!


 骨が残ってるからなんとも言えん光景だが……骨も食えよ……。


 まぁ、別にそれなりにゴブリン(子供)がいるという証拠になるだろうし置いておくか。


 これからゴミ処理担当はベルだな。



 それから更に4日後──


 村の周辺はゴブリンの骨が山のように積み上がっていた。


 除去するか迷ったが、バリケードにもなるし放っておこう……村が呪われたように見えるが気のせいという事にしておく。


 なんか俺の思ってたスローライフと違う気がするな。

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