第40話 金がよく飛ぶ
あの後は俺の魔力が尽き、ベルが『水流』を喰い尽くして勝負は終わった。
まぁ……エマからは散々怒られたけど……。
古代魔法はまた練習しないとダメだな……暴発率高いし、何より『黒勢』使うとかなり制御が難しい。
ゴブリンの時はよく『火球』使えてたなと思った。まぁ、手加減とかする気がなかったせいかもしれんが。
ちなみに後で腕輪を確認すると『水流』の魔法陣はちゃっかり腕輪に記録されていた。
おそらく、これでいつでも即座に『水流』が放つ事が出来るのだろう。
とても便利な古代魔道具だな。
実戦で使えるなら有りだな。特に面倒臭い時用で。
というか──これで【支援魔法】使ったら良い感じなのではなかろうか? いつか試してみたいな……。
そんな事を考えながら街を歩いていると声をかけられる。
「司祭殿……」
「えっと、騎士団長か? どうしたんだ?」
凄く申し訳なさそうに声をかけてくる騎士団長に俺は気軽に返事する。
「……誠に言い辛い事なのですが……お城の弁償代金を請求しに来ました……」
……ん?
「何で?」
「目撃証言から司祭殿のお連れが極大魔法を放ったと報告が上がっております……おそらく──目撃証言を当てはめるに……あの三つ子の1人かなと……」
俺はベルに視線を移す。
『見られてたっぽいですね……まぁ、俺達はお金無いんでよろしくお願いします』
何話で答えるベル。
はぁ……最近飛ぶように金が無くなっていく気がするな。
「騎士団長、いくらだ?」
「はっ、ありがとうございます……金貨50枚です」
現在手持ちは金貨50枚ぐらいしかない。払えるが──手持ちが無くなるのは困るな。
「……すまん、今は手持ちが無いから後日でもいいか?」
「はっはっは、またご冗談を。国からも多額の報奨金が出てるはずですぞ? それに討伐報酬を合わせたら凄い金額になると聞いております。それに比べれば修理費なんて安いもんです──ってその顔……本当に無いとか?」
「古代魔道具の代金に代わったな」
「……後日であれば払えるという事でしょうか?」
「そうだ。まだ売り払っていない素材があるから売れば足りるだろう。だから後日金を取りに来てくれ」
確かまだ豚、鬼の大人と巨体が数匹あったはずだ。たぶん、トカゲであの報酬なら足りるだろう。
「わ、わかりました。後──王が謁見の間に来るようにと言付けを受けております」
「おぅ、助かる。明日にまた取りに来てくれるかな? 謁見は面倒臭いから行かないと伝えてくれ」
普通は断る事なんて出来ないんだろうけど、俺はリディア教の司祭だからなんとでもなるだろう。ある程度の融通は効くはずだ。
「……わかりました──なんとかしておきます。ではまた明日に」
俺達は別れる。
いやー、騎士団長は良い奴だなぁ。
金貨50枚か……城の修理費にしては安い気がするな……謁見とか嫌味を言われる気しかしないな。
「エマ……金貨50枚であの城直せるのか?」
俺はけっこう壊れた瓦礫に埋もれた城を見て言う。
「……普通に白金貨が飛ぶと思いますよ? おそらく国の英雄だから体面上払ってくれって事かと……」
「だよな……」
面子ってあるもんな……。
さて──
「エマ……金を工面しなければならなくなった。この指輪を──「売りません!」──だよな……なら、冒険者ギルドにまた行くぞ……素材を売り払う」
また冒険者ギルドへ足を運ぶ──
今の手持ちは残り約金貨50枚ぐらいだ。
後金貨50枚はいるのか……。
最近お金の事ばっかで動いてる気がするな……。
本当、生きるのって金がいるんだな……。
俺達は冒険者ギルドの受付に到着する。
「すまんが、素材を買い取ってくれ」
「……レイ様……まさか履歴にあった、オークキング、オーガキング、サイクロプスでしょうか?」
「よくわからんが、豚は残り少ないから出来れば置いておきたいから、鬼の大人1匹と巨体5匹を頼む。換金したらいくらだ?」
「鬼の大人? 巨体??」
「これとこれだな」
「……オーガキングとサイクロプスですね……レイさんの事ですからきっと丸々あるんでしょう……ざっと見積もって──オーガキングが金貨15枚、サイクロプスが5体で金貨10枚ですね」
……心許ないな……子供の豚肉を売り払ったらどうだろうか?
「子供の豚肉は1匹いくらで買い取ってくれるんだ?」
「えっと……子供? ──「オークです」──なるほど、エマ様ありがとうございます。オークは一体銀貨10枚ですね」
「じゃあ、子供の豚肉を100匹売るわ。そしたら合計金貨35枚ぐらいになるだろ?」
「わ、わかりました。では倉庫の方にまた置いて来て下さい」
「わかった──」
豚の数が多いから顔が引き攣ってる受付嬢さんを尻目に倉庫に向かう──
「おっちゃん、また頼むわ」
「──またお前か!? 今日は何の素材だ!?」
「とりあえず出すわ……」
鬼の大人と巨体を出す──
「……また大物だな……」
「まだある……」
俺は豚肉をドサっと一気に出して行く。
「……また残業か……」
そんな、おっちゃんの呟きに少し心が痛んだが、明日には金が必要なので頑張ってほしい。
ちなみに鬼の子供や防具武器類は食べれないから、あの村の復興資金にあげているから手元に無い。他にも豚肉(子供)も食料に困るだろうとそれなりに置いてきている。
「何してるんですかねぇ!?」
「首を並べているんだが?」
「趣味が悪いんですが!?」
「いや、査定に時間かかりそうだし暇だろ?」
「やめてくれませんかねぇ!? さっき、チラッと聞こえてきたんですけど、レイさんって『首狩り』とか呼ばれてるんですよ!? 余計に噂が広がりますから!」
「既に噂になってるなら手遅れじゃね?」
「確かにそうなんですが──それがそのまま二つ名になる事もあるんですよ!?」
「二つ名? なんだそれ?」
「高ランク冒険者になると通称の通り名がつく事があるんです。このまま首狩りが定着したら──『首狩り』のレイって呼ばれるんですよ!?」
それは嫌だな……今から何か他の呼び方に変えれないだろうか……。
「出来れば格好良い二つ名がいいな……エマ何か考えてくれよ」
「……レイさんって黒いですよね……
「おっ、なんかそれ良いな! 今度からそれで行こう!」
これを今度から広めて行こう!
「まぁ、二つ名は周りが勝手に決めたり、ギルドが決めるんですけどね」
……じゃあ、それ広めて布教するしかないじゃないか……。
そんな事を2人で話して時間を過ごしていると、いつの間にか夕方になっていた。
その頃には査定も終わり、無事に金貨35枚を手に入れ、手持ちが合計約金貨85枚になった俺達は宿屋に向かった。
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