第11話 司祭の特権
とても美味しそうに食べているエマだが、上納金の事が気になるので声をかける。
「一ついいか?」
「何でしょう?」
「何も得が無いのに金を納めないとダメなのか?」
「得はですね……司祭様には特権があるんです。例えば──ある程度、国に対して発言する事も出来ますし、リディア教の名の下にある程度の自由があるんです。これらは大手の教会の偉いさんとリディア教の司祭以上だけですね。教会ではトップを争うぐらい武力は強いですから……。他は──強敵と戦うのが黙認されたりとか、信者に命令する権利があるぐらいですかね? まぁ、そんなわけで司祭様は上納金を払って、お務めして、布教をするんですよ」
……ある程度って2回言ってるけど、どれぐらいなんだよ。大手の教会と同じくらいって事はかなり融通が効くのか?
後、信者に命令って……抜けないようにしないとダメなのに命令なんかして大丈夫なのか?
「何か司祭って面倒臭いな……辞めてもいいか?」
「司祭には絶対なりたくないですね。レイさんは神器外せないと抜けれませんよ? 逃げたら司祭以上が捕まえに来ますし、しかも見込みがある人には魔契約書にサインさせられてますから、ヤバい悪魔も連れ戻しに来ます」
あの契約書って強い奴を抜けさせない為にサインさせてるか? なんとも酷い教会だな。これが教会では一般的なのか?
「……この本外れないんだよな……ちなみに金の価値を教えてくれ」
『黒の書』は何度挑戦しても外れない。それにリディアの声も聞けてないから一度は聞いてみたい。聞けるまでは頑張るか……司祭がまとめて襲って来るのも面倒臭いしな。というか司祭以上という事はもっとヤバいのが上にいるのか……。
「銅貨5枚で安い定食が食べれるぐらいで、普通の宿なら1人銀貨1枚ぐらいで泊まれますかね? 銅貨が100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚の計算になります」
……金貨10枚って滅茶苦茶高くないか?
ゴブリンどれだけ狩る必要あるんだよ……幸いなのが、聖女さんから貰った金貨が10枚以上はある事ぐらいだろう。
聖女さん助けて良かった……良い事はしておくもんだな。
そういえば彼女は美人で胸も大きかったな……。別れ際に何か言ってたけど、もう少し話しておけば良かった。
はぁ……とりあえず、なんとか次の年ぐらいまでには稼げるようにならないとダメだな。
「……エマ、済まないが山分けはまだ無理だ。全面的に俺がお前の面倒を見るから許してくれ。次の年の上納金ノルマが溜まった時点で山分けにするから」
山分けが無理なら、月単位で働いたらお金をもらうと聞いているからそのようにしようかと思ったが──今の状態だと金貨10枚とか簡単に稼げる気がしない。
「良いですよ〜私は宿に泊まれてご飯が食べれたら良いです♪ そういう風にしてる司祭様もいますし問題ありません♪」
エマ……そう言って貰えるのはありがたいが……どんな生活をしていたんだ……困窮しすぎだろう……。生活ぐらいは俺がなんとか不自由なくしてやりたいな。
「すまんな。ちなみに目安で良いから教えてくれ。だいたい、一般的に一月どれぐらいが適正な給料なんだ?」
「平均したら銀貨20枚ぐらいですかね」
これで確定した。普通の手段では稼ぐ事は俺には不可能だな。冒険者で稼ぐしかない。
「わかった。なんとか山分け出来るように努力する」
「ありがとうございます!」
「こちらこそ。ところで話が変わるんだが、リディア教の布教って無理だろ。さっきの冒険者達とエンブレムを見た街の人から察するに絶対、近寄りたく無いという意思を感じたんだが?」
「そりゃそうでしょうね。私も父に拾われてなかったら絶対に関わり合いになりたくなかったです。そもそもそのフードってリディア教ぐらいしか使わないんで基本的に知ってる人は誰も近寄って来てくれません。なので布教とか不可能です」
ん? エマって捨て子だったのか? 俺と一緒だな。共通する事があるってのは何気に嬉しいもんだな。
「だよな……他の信者達はどこにいるんだ? 全然見かけないんだけど?」
「この街には今は私達2人しかいませんね。ここはアストラ教の人が多いですしね。リディア教の人は基本的に戦場とかにいますし、フード被ってるから一発でわかりますよ? 好き勝手に戦えると勘違いしている奴らが多いですからね」
そんな奴らといつか会う事があるんだろうな……。というか、このフードを好んで被っているのか……。
「……ますますこの教会が大丈夫なのか気になる所ではあるが──さっき、信者に命令出来るって言ってたけど、言う事聞いてくれるのか?」
「司祭以上の言葉は聞いてくれますよ。彼らにとって司祭以上は神に等しいらしいです。力こそが全てみたいな連中ですね。一般人なんて入っても直ぐに抜けるし、残る人は頭のネジがぶっ飛んだ人だけですよ。一般人には命令しない方がいいです」
「……そ、そうか。聞けば聞くほどとんでもない話だな……」
「まぁ、今はお金や教会の事より──初依頼達成とランクアップを祝って、ぱぁぁっと食べて飲みましょう! レイさんも食べないと無くなりますよ?」
「そうだな。腹一杯食べよう。好きなだけ頼むといいさ……」
「やったぁ! 久しぶりの肉追加〜♪」
料理が更に到着すると同時に物凄い勢いでご飯をかき込んで行くエマは可愛らしい動物のように見えた。
こんな世間知らずな俺に文句を言いながらもついて来てくれるし、色々と説明もしてくれる良い奴だな。
よく見れば、今はタンクトップで薄着のせいか──胸も多少はあるように見える。
年下に見えるけど……。
また明日も狩りに出るか……金を稼がないとだな……。
依頼板を見る限り、ランクの高い方が報酬も高い。
しばらくはランクアップを目指す方がいいかもしれない。
後は『黒の書』の他のページの確認と、収納以外に何かないか調べないとな。
後、黒い力──俺自身や魔法の強化をしてくれる事から『黒勢』とでも名付けよう。これの特訓だな。
この『黒勢』を纏うと力が溢れて来るのは既にわかっている。俺自身の強化も出来るだろう。
そんな事を考えながらエマと雑談する──
そして、食事を食べ終わる頃にはエマは腹がはち切れんばかりに膨れ上がり身動きが取れなくなっていた。
俺は指示に従い、近くの宿屋まで運んだのだが──
時間も遅く一部屋しか宿が取れなかった。
当然ながら2人同じ部屋で寝る事になった際に一悶着あった。
まず、ベットをどっちが使うかでだが……。
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