第22話 初めて信者を獲得した
村に戻ると──更にゴブリンの骨が増えていた。
そして、ゴブリン(大人)の2匹目も捕縛されていた。
「ベル、お疲れさん」
俺は村を守る人型のベルに労りの言葉をかける。
「いえいえ、それより──ちゃんと焼肉食わせて下さいよ?」
さっきの豚肉を所望らしいが……。
「お前味音痴なんじゃないのか?」
「人型であるなら、ちゃんと味ぐらいわかりますよ!」
「ゴブリン食ってる奴がよく言えるな……」
あんなもん食えるなんて尊敬するわ。
「蝿モードの時は人のような味は感じないんですよ。どちらかというと肉とかに含まれる魔素を喰らうのと、腹を膨らませる為に食ってるんです!」
蠅の時は全く味を感じないのか……魔素って確か──空気中にある魔力だよな? 確か昔にそう聞いた記憶がある。
「なら、わざわざ焼いた肉とかいらないだろ?」
「……人型であれば人のように味は感じます。嗜好品なんです! 是非僕にも食事を!」
……まぁ、面倒臭い事やらせてるしな……食わせてやるか……。
「……わかった。ここの守りはそのままいけるのか? それなら来ると良い」
「お任せを!」
俺達は村の中心にある広場へと向かう。
「ラキ、皆を集めてくれるか?」
「はい──」
そして、しばらくすると村人が集まってくる。
「これはこれはレイ様……今日も食料を分けて下さるのですか?」
村長が代表で俺に聞いてくる。最近はこうやって食料を提供しているから村長も悪い気がするのだろう。だが、直ぐに討伐を開始しない以上はこれぐらいは俺も面倒を見るつもりだ。
俺も質素な食事より、豪華な方が良いしな。
「あぁ、今日はオークの子供が大量に獲れたからな。一家族に一匹配るのと──ここで今日は大人のオークを使って焼肉パーティを行う。こいつは美味いぞ?」
「はて? オークに子供などいましたかな?」
疑問符を浮かべる村長。
「これが子供だな。とりあえず──各家にこれを男共は持って帰れ」
俺は『黒の書』からオーク(子供)を出す。
男共は「これって子供なのか?」と驚きつつもそれらを運んで行く──
「……レイ様……誠に言い辛いのですが、これは子供ではなく──普通のオークです。大人のオークとは??」
「これだな。凄く美味いぞ?」
俺は『黒の書』からオーク(大人)を出す。
「オ、オ、オークキング!? しかも一撃で仕留めている!? レイ様はやはりお強い……」
「そういえばラキもそう言っていたな。俺からするとオークに変わりははないんだがな」
「レイ様……これはここで食べるわけにはいきません」
ん? 俺は食いたいぞ? かなり脂が乗って上手いからな。
「何故だ?」
「オークキングの肉はかなりの高級品です。それこそ王侯貴族や金持ちしか食べれないぐらいの物なのです。是非、お待ち帰り頂き換金した方が良いです」
なるほど、金になるから言ってくれてるんだな。
「ん? あぁ、気にしなくていいぞ? 俺は今食いたいんだ。さぁ! 解体出来る奴はやってくれ! そして焼いて食おう!」
「「「うおぉぉぉぉっ! レイ様万歳っ!」」」
俺の声に村人は反応し、大声で称えてくれる。
とても気分が良いな!
「レイ様……ありがとうございます。不安な村人の為にこんな高級品まで提供してくれるとは……どう恩を返せばいいのやら……」
俺の意図を汲み取ってくれる村長はやはり人生経験が豊富だなと思った。
不安な日々を少しでも紛らわせてやりたいと思ったのは事実だ。
断じて俺が今すぐ食いたいからではない。
「礼など不要。俺はやりたい事をやるだけだ。さぁ食おう。後、数日もすればエマが戻るだろう。そしてとっとと討伐して──いつもの日常に戻れば良い。それと申し訳ないと思うならラキの言っていた魔物の本をくれ」
「後で本をお渡しします! しかし、それだけでは足りない。私はこれより、アストラ教を抜けて──リディア教に入信します! せめてこれぐらいはさせて頂きます!」
言ってみるもんだな……本貰えるのはありがたいな。しかも初めて布教が成功したぞ!
「そうか……俺が初めてゲットした信者だな……ありがとう。こういうのってどうしたら良いんだったかな? そういえばエマが、このメダルを渡せとか言っていたな……村長にこれを与える。リディアの加護があらん事を──」
俺は苦笑いを浮かべ、エマから預かったリディア教のメダルを出して村長に渡すと──教えてもらった言葉を告げる。
入信って簡単なもんだな。俺の時なんか何もなかったんだがな……。
しかし──なんか……恩の押し売りで信者を獲得してしまったな……。
まぁ、嫌なら抜けるだろう。
さぁて、目の前に肉も来たし──食べるか。
ベルも味わいながら食っているな……年相応の子供に見える。
ベスも3人娘になって食事を堪能している。
村人達もこれだけ笑顔なら、もうしばらく耐えてくれるだろう。
早く、エマ来ねぇかな……ゴブリンはこのままだと10000は軽く超えるぞ?
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