第44話 心の声ダダ漏れだな
エヴァンと不毛なやり取りが続いていたのだが、昼前になり、時間が無かったのでエマになんとかするよう伝える。
そして、エマの一言で静かになった。というかまともに話せるようになった。
その言葉は「話をちゃんと聞かないと嫌いになるからね?」だった。
どこの世界の父親も娘には嫌われたくないと故郷で聞いた。
俺も娘が出来たらこんな感じになるのだろうか?
そんな事を考えているとエヴァンが話し出す。
「さて、とりあえずエマちゃんと再会出来て嬉しいぞ? それより何でこんな所に? わしの手筈で別の場所にいるはずなのに」
「誘拐犯を捕らえる為にここへ来たんですよ! そしたらお父さんが戦ってたのです! というか手筈って何だ!? てめぇまた何か企んでやがったですか!?」
「あぁ、なるほど……まぁ、企みというか……エマちゃんが生活出来るようにと──ついでにパパを頼ってくれるようにアガラスに派遣を……」
アガラス?
「高難易度のダンジョンがある都市じゃねぇですか! そんな所で私が生活出来るわけねぇでしょうが! 小声だけどちゃんと聞こえてるからな!?」
なるほど、ダンジョン都市の名前か。ダンジョンと言えばお宝もたくさんあるし、稼ぐには持ってこいのはずだが……エマだと高難易度で攻略出来ないのか。
「いや、司祭付きじゃないし──上納金に困ってると思って……パパはいつでもエマちゃんの味方だよ!」
味方なら上納金払ってやれよ……なんで攻略出来ないダンジョン都市に行かせるんだよ。
「ぜってぇ嫌です! 頼りたくねぇです!」
そこまで頼りたくない理由があるのか?
「パパはこんなにエマちゃんの事を大事にしているのに……」
「頼ったが最後──私がお父さんのお付きになるじゃねぇですか! 司教のお付きとか司祭のお付きより最悪じゃねぇですか! しかも四六時中恥ずかしい過去言われるなんて耐えられねぇです!」
あぁ、なるほど。それは嫌だな。それ以外にも何かありそうだけど。
「そ、そんな……パパはお務めをエマちゃんとしたいだけなのに……」
「誰がするかぁっ!? 誰かさんが私を自分の助祭にしたいが為に、生活が困窮してるんです! これからはレイさんと共に生きます! お父さんには一生頼りませんっ!」
なるほど……誰のお付きにもなっていなかったから気になってたけど、そういう事か。エヴァンはエマとお務めしたくて助祭に任命したが、肝心のエマが嫌がったんだな。それで困窮してたと……。
まぁ、司教であっても助祭は選べないんだろうな……それで頼らせる為に生活が困窮するようにしていた感じか……カスだな……。
「……」
崩れ落ちるエヴァン。
それをゴミカスを見るように見つめるエマ。
何が過去にあったか知らないがエマの嫌い方は相当なもんだな。
まぁ、親子喧嘩なんてどこにでもある。いつか時が解決するだろう。
俺の所は親子喧嘩にならんぐらい俺が心を折られているけどな。
「さて、エヴァン……沈んでる所悪いが──そいつら貰ってもいいか?」
「……好きにしろ……」
心が折れてるな……まぁ、エマのお陰でイビル教徒をスムーズに受け渡し出来るから良いだろ。
俺達は動かないエヴァンを尻目に騎士団長が待つ広場までイビル教徒を連行すると──
「司祭殿! これだけの人数を一網打尽にするとはさすがリディアです!」
到着早々に騎士団長に大層喜ばれた。
聞く所によると今回の件は中々解決しなくて冒険者ギルドにも依頼を出していたらしい。その報酬分をお礼に金貨15枚程、渡された。
これで手持ちは金貨52枚になった。
俺達は感謝されながら、その場を去ると──
エヴァンが俺達の前に再度現れる。
先程のダメダメな雰囲気と違う。
「──リディア教、司祭であるレイよ。本部の命令により──今年の上納金を回収する。貴様の分の金貨10枚とエマの滞納分40枚を──」
まさかこのタイミングで上納金を回収するとは……。
「……」
俺は無言で金貨50枚を手渡す。
「……(ちっ、一気に取り立てしたら払えんと思ったのに)……確かに受け取った。来年度は白金貨3枚になる」
心の声漏れてるからな? それと……なんか聞いてた金額と違うんだが?
「──何でそんな高いんですかねぇ!? 他の司祭は白金貨1枚が平均でしょうが!」
来年度の上納金に納得いかないとエマが口を出す。
「(いや、こいつが破滅したらエマちゃんがこっちに来るかなって)……ごほん、わしが直接見た感じ──強さは既に司教クラスに近い。司祭でも上位に入るだろう。強い司祭は白金貨数枚は上納している。(さっさと破滅しろ)」
「てんめぇーっ、何て事しやがるですかね!? しかも小声で所々本音が漏れてやがるですから!」
エマに対する執着心がヤバいな……。
「これもリディアの定めだ……諦めろ……(そしてとっとと破滅してエマちゃんを返せ)」
確かに白金貨を3枚分稼ぐとなるとかなり狩りをしないとダメだろうな……この本さえ無ければ生活ぐらいのんびり出来そうなんだけどな。
「こんのクソ親父がぁぁぁっ!」
「エマちゃんの言葉遣いが荒いっ!? まぁそんなわけで使徒として励むように。払えなかったらペナルティが課せられるからな?」
「ペナルティ?」
「うむ、稼げるようになる為にリディア教会本部にある試練を受けてもらう」
「……つまり、訓練が強制されるわけだな?」
「そうだ。あそこはヤバいぞぉ? (一年我慢すればお前は地獄行きだ)」
いや、心の声ダダ漏れなんだけど……地獄か……故郷以上の地獄なのか興味はあるな。
「へぇ、楽しみだな」
「わしもお前のその余裕がいつまで持つか楽しみだ」
「クソ親父はさっさと消えろですっ!」
「エマちゃん──わしがいつか助けてやるぞ!」
「いらねぇです! 私はレイさんと一緒にいるです!」
「また来る……」
「もう、来んなです!」
少し寂しそうにエヴァンは去って行く。
それでも久しぶりに娘であるエマと会えて嬉しいのだろう。去り際に少し笑っていた。
まぁ、俺をどうやって料理するか考えてそうな感じもしない事はないが……。
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