第4話 助祭が付いたらしい
あの後は普通に皆で話しながら食事と酒を飲んで寝た。
男の司祭はローガン、女性の司祭はリーシアという名前らしい。
エマは助祭だと言っていた。
その時に聖書に書いてある内容も教えてもらったりもした。
とても良い内容が書いてあった。
この宗教はきっと俺の為にあるんじゃないかと錯覚したぐらいだ。
何より、神リディアの像や絵画を見せてもらったのだが──
俺の予想を超える美しさだった。
黒い髪、黒い瞳で黒い翼を生やしていてアストラ教会にあった神様像と全然違っていたが、世の中には亜種族がたくさんいると母さん達から聞いているから気にはしない。
是非、嫁に欲しい。存在するのかよくわからんが……。
とりあえず、このリディア教では普通の信者には強制では無いが出来る限りやってほしい事はあるらしい。
特に司祭などの役職持ちはやらないとダメと言われた。つまり俺は強制という事だ。
入ってから司祭に任命された俺はやらなければならないといけないとか……これはどう考えても詐欺だろう。
母さん(優しい方)が「変な宗教に引っかかると痛い目に合うわよ?」と言っていた意味が今わかった。
だけど、神リディアの為になるのであれば俺はやろうと思う。
なんせ、俺は敬虔な信徒だからな。
熱心な信者には『信託』とやらをしてくれるらしい。
是非声が聞きたい!
まぁそんなわけで司祭がやらないとダメな事は──
魔物の討伐、信者集め、転職が主だと言う。
アストラ教だと、魔物の討伐ではなく治療らしい。
何で魔物の討伐なのかと聞くと──
「我らリディア教の信者は頭のおかしい奴が多いからだ!」
とローガンに一蹴された。
意味がわからなかったので後でエマに聞いたら──
「アストラと違って回復とか出来る人が少ないんですよ。どちらかと言うと魔物とかを嬉々として狩ってるような連中ばっかりなんです。だから、世の為になるのなら魔物討伐をお務めにしようという流れになったそうです」
と説明された。
他にも色々と説明を聞いたが、一言だけ言えるのは──『変人』が多いという事だろう。ローガンとリーシア、エマは比較的まともに見えるのにな……。
まぁ、そんな教会に入った俺も同類という事になるのだが……。
それと、こういうのは仕事をすればお金を貰えると母さん達から聞いていたのだが、リディア教だけは違うそうだ。
寄付金があまり集まらないから、自分で稼いでくれというスタンスらしい。
なんとも酷い話だと思った……義務はあるのに報酬が無いとは……。
当然ながら冒険者も兼業していいらしい。というか信者はほとんどが冒険者らしい。
まぁ、俺は支援職になったから誰か仲間を探して戦ってもらう事にしよう。
その為には冒険者登録と仲間集めだな……。
「さっきからぶつぶつと煩いですよ?」
考え中にエマから声がかけられる。
「あぁ、すまん。エマは行かなくて良かったのか?」
今は司祭2人と別れ、エマだけが残っている。
その理由が──
「新しくなった司祭がサボらないかの監視とサポートしないとダメですからね」
と言われた。司祭には助祭が1人以上つくらしい。
ローガンとリーシアの助祭はお務めでいなかったとの事。
とりあえず1人目の仲間はエマだ。
戦えるかどうかはわからないけど……。
エマは背も低く可愛いらしいと言った方がいい見た目だからお子様に戦わせるのは気が引けるが、先程聞いた話ではリディア教の信者は戦闘狂ばかりだと聞いたので大丈夫だろう。
「どうせ、あのまま帰ったらお務めに殺されてしまいまいます」
「魔物狩り?」
「そうです。私はそんなに強くないんです!」
マジか……戦闘狂の揃った集団だと思ったのに……。
うーん、戦力増強せねばならんな……。
俺は戦いたくないからな。
「……あの2人は俺ぐらい強かったのにな」
「え? レイさんってその若さで既に司祭クラスの強さなんですか!? 使徒様でそこそこ強いから司祭に任命されたもんだと……」
やっぱり、司祭の認識って強さなのか?
「ん? 俺が勝てないのは今の所は故郷の人達とその周りの魔物だけだな」
「……どんな故郷なんですか……通常司祭になるには普通のドラゴンぐらいは単独で倒せないとなれないんですよ?」
「ドラゴン? あぁ、空飛ぶトカゲぐらい本気出せば行けるだろ」
なら俺が司祭でも問題無いな。
「……レイさんはリディア教に相応しいですね……」
色付きじゃない普通の空飛ぶトカゲぐらい倒せるだろ……。
「あと、使徒って何だ?」
「使徒様は神が選んだ神の使いです」
「なるほど、リディアは婿に俺を選んだんだな? それでいつ会えるんだ?」
「なんでそうなる!? しかも呼び捨て! 使徒とは神に選ばれた使命を持った者の事です。この本も使徒様以外は使えません」
「なにそれ、面倒臭いな……使命って何?」
「わかりませんが──いつか信託が来る時があると思います」
そっか……ならリディアの声が聞けるのを楽しみ待っておこう。ただ、使命が無いと聞いていたのに有るとか後出しばっかだな……。
そういえば──
「この本って何なんだ?」
この黒い本──神器とか言っていたな……これは俺の意思で出したり、消したり出来るのはわかった。後、中身は見てないが開かないページがあるのも確認している。
そして、かなり頑丈なのも……一回壊そうと全力で殴ったりしたけど俺の手が痛いだけだった。
このままだと鈍器代わりの武器や盾代わりとしてしか使い道が無い。
「これは『黒の書』と呼ばれる物です」
本当に名前が見た目そのままだな。
「どう使うんだ?」
「一つ聞きたいのですが──体に何か異常は出てませんか?」
「何で? なんともないぞ?」
「『黒の書』の適正者は黒い何かの力が使えるらしいですよ?」
何も使えないんだが?
「まぁ、そんな感じは今の所しないな。他には何かないのか?」
「えーっと……確か……」
頑張って思い出してくれているようだ。
その間に俺は本をめくる事にする。中身ちゃんと見て無いしな。
──!?
絵が描いてある!?
しかもめっちゃ美人!
ここんとこ美人率が高いな! これは絵だけどな!
ん?
なんかこの絵──動いてないか?
何か話しているな……何々? 俺は読唇術を学んでいるから読み取ってみようじゃないか──と思っていると頭の中に声が聞こえて来た。
『だ・し・て』
この本の中に閉じ込められているのか?
「どうやって出すんだろ?」
『ま・り・ょ・く・こ・め・て』
魔力を込める?
俺は持っている本の手に魔力を込める──
すると真っ黒な魔力が本に吸い込まれて行く──
そして、本が光り出す──
「──思い出しました! 確か危険な存在が封印されているんでした!」
「え?」
もう、解放しちゃったっぽいよ?
「え? 何してくれてんですかねぇ!? しかも手遅れ!?」
「やってしまったものは仕方ないだろ……知らなかったんだから……経典にも書いてあるだろ? 『後悔するな』って、ほら俺悪くない」
「そんな事言ってる場合かぁぁぁっ!」
まぁまぁ、さっき言ってた黒い力っぽいのが判明したじゃないか。
俺達の目の前に本の中にいた女性が現れる──
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