第38話 輝きの代償4

 ラディすけはヒロ太に向かい、剣を叩きつける。

 ヒロ太は黄金色の巨大な右手で剣を防御する。

「そうだったな。ラディすけ、お前にはあの時から負けっぱなしだったな」

 ヒロ太はラディすけに握った拳を叩きつける。

 ラディすけは木端のように吹っ飛んだ。

「ハッハッハ、どうしたラディすけ!」

 そしてヒロ太は「邪魔だなコレ」と、剣を守人めがけて投げ捨てる。

「モリト!」

 向かった剣は守人の目に刺さりそうになる! 守人は思わず目をつぶる。しかし剣が届くことはなかった。ヴァルきちが剣を弾き返してくれていたのだ。

「ゴメンヴァルきち。ありがとう」

 ヴァルきちは着地し、剣をラディすけの隣でかまえる。

「すまねえヴァルきち。恩に着るぜ」

「なに、この位」

 ヒロ太は二剣士に襲いかかった。その爆発的な速度は脚部ブースターを装備した魔王に匹敵するモノだった。

「は、速い!」

 ラディすけはヴァルきちに襲いかかるヒロ太の拳を、剣でなんとか防御する。

「グッ!」

 その攻撃の重さは魔王のメイスによる攻撃以上。その重さに剣も軋みを上げている。

 気合とともにラディすけは剣を払い、ヒロ太との間合いを作る。

「体が熱い。身体が闘争を求めている!」

 ヒロ太は右手を突き出し、拳を握りなおす。

 そして殺人的加速でラディすけを追い詰めていく。

「楽しいよなラディすけ! ラディすけぇ!」

放たれる拳の一撃一撃が必殺級。下手に剣で防御したら剣の方が破壊されてしまいそうだ。なんとかかわすしかない。

「じゃあな、ラディおともだちと仲良くな」

 そのまま矢部とシーザは立ち去ろうとする。

「矢部君ヒドイじゃないか! ヒロ太を治していけよ!」

 矢部は突っかかっていった守人の顔を殴り、守人が怯んでいる間に、笑いながら立ち去っていった。

「天野くん!」

 寄ってくるミサに、守人は「大丈夫」と言いつつ立ち上がる。

「イテテ……。それよりヒロ太だ」

 頬を手で抑えることも忘れ、守人はヒロ太の前に立ちはだかる。

「ラディすけ!」

 ヒロ太の前に出たことで、今度は守人がターゲットとなった。ラディすけは思わず叫ぶ。

「モリト! 危ねえ!」

 守人を襲うヒロ太の拳に、ラディすけは剣を叩きつける。

「グッ、硬え!」

 ヴァルきちはヒロ太のボディを狙い斬りあげる。

「ガハッ」

 初めてヒロ太にダメージが通った。三者はそのまま着地する。

「ラディすけ、右手ではなく、本体を叩いて機能停止させるんだ!」

 ヴァルきちの提案を飲み、ラディすけは右手以外を狙い始めた。しかしヒロ太の防御は固く、なかなか決定打が与えられなかった。

「こうなったら……」

 ラディすけは剣を天に掲げる。

「ヴァリアントブレイクごとき」

 言いながらヒロ太は右手で防御の体勢を取る。このままでは防御され切ってしまうかもしれない。そうしたらもう打つ手無しだ。

 その時だった! 守人がスライディングし、ヒロ太を捕まえたのだ。

「モリト!」

 守人はヒロ太の右手を無理矢理力で伸ばし、暴れるヒロ太を押さえつける。

「ラディすけ、今のうちに右手をこわすんだ!」

「ヴァリアントブレイク!」

 そしてラディすけはヒロ太の右手を斬り落とした。

 ヒロ太はそのまま機能停止した。

「ウジュ……ギギギ……」

 ヒロ太の右腕が逃げようと地を這っていく。

「逃すか! ニーベルンザンバー!」

 ニーベルンザンバーの一撃で、悲嘆の種は完全に破壊され、ヒロ太の右腕は元に戻った。



  エピローグ



 少し寒いな。ヒロ太はそう感じたので、手で体をさすろうとした。

 しかし何も動かない。

「アレ?」

 よく見ると、自らの右腕が無いことに気づく。

「ああそうか」

 ラディすけたちに助けてもらった時に、右腕をなくしたんだっけ。そしてヒロ太は「マンガが読みにくくなるな」そうなんとなく思ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る