第10話 宿命の再会1

 パソコンの画面に必要事項を書き込んでいるのは守人だった。

「モリト、できたか?」

「もうちょっと……」

「そう急かすなよ、ラディすけ」

 慣れないパソコンでの作業に四苦八苦しながらではあったが、なんとか記入を終えた。

「よし、送信っと。できたぁ!」

 周りで見ていた二体のバトルアーツ、ラディすけとヒロ太も思わず「「おお!」」と声をあげる。

「これで念願の選手権大会に出られるな守人」

「そうだね!」

「ワクワクするなあ、ウデがなるぜ!」

 そう、三人は、バトルアーツ選手権大会の参加申し込みをウェブ上でしていたのだった。

「これで一勝するのが夢だったんだ」

「バーカ」

 そう発したラディすけに、他の二人は顔を向ける。

「やるからには優勝、だろ?」

「そうだな、優勝しよう!」

 やんややんやと盛り上がる三人だった。



      1



「何をしているんだ?」

 ヒロ太の質問に守人はウキウキしながら、「明日の社会見学の準備だよ」と答える。

「社会見学ってなんだ?」

「学校を出て、働いている人たちの様子を見学させてもらうんだ」

 ヒロ太は「へえ」と納得し、守人の様子を見守る。

「で、どこ行くんだ?」

「キミたちの故郷、サイバーダイン社だよ」

「オレも行きてえ!」

「ダメだよラディすけ。規則でバトルアーツは連れて行けないんだ」

 それで引き下がるようなラディすけではなかったが、なんとか守人は突っぱねることに成功した。

 ラディすけは頬を膨らませて後ろを向き怒った様子でどかりとあぐらをかいた。

「ごめんよラディすけ」

 守人は二人の充電をしてから、部屋の電気を消し床についた。


 次の朝、守人はいつものランドセルではなく、リュックサックを背負って学校へと向かった。

「気をつけてな」

「ありがとうヒロ太。ラディすけはまだ怒ってるのかな?」

 一瞬ギクリとした顔をしたが、ヒロ太は腕を組んで一言「さあな」とだけ言う。守人は何か怪しいなと思いつつも家を後にした。

 小学五年生の諸君は、校舎の入り口に集められていた。今日は教室には入らず、そのままサイバーダイン社に向かうのだった。

 校長先生の長い話を聞いてから、校門の前に止まっているバスに乗る。

 話しかけてきたのは隣の席の男だった。

「よう天野ォ」

「おはよう鎌瀬くん」

「楽しみだなァ今日のサイバーダイン社ァ」

「そうだね、昨日は寝るのちょっとだけ遅くなっちゃったよ」

「ハハハオレもだぞォ」

 そしてバスに揺られること十数分、サイバーダイン社の門前に到着した。本当は学校から歩いてでも行ける距離なのに、サイバーダイン社はそれをバスをチャーターして、生徒たちをそれに乗せてきた。セキュリティ上の問題なのか、もしくは金を持っているところを見せたかったのか。

「恐らくはァ、後者だろうなァ」

 なんて鎌瀬と話しながら、守人たちをのせたバスはサイバーダイン社の敷地内に入っていった。

 会社ビルの前に止まったバスから守人たちは降り、随時会社内に入っていく。

「新作のォバトルアーツ見られるかなァ? 天野ォ」

「見られるんじゃないかな? 知らないけど」

 ウキウキしながら車内の見学を、ルートに沿って進めていく。その時だった。

「ウッ」

「どうしたァ、天野ォ」

「お腹が……急にトイレ行きたくなっちゃった」

「そうかァ。おーい先生ィ、天野ォがトイレに行きたいってよォー!」

 担任の教師は困った顔で、「どうして先に済ませなかったんだ?」なんて言いつつも、ガイドさんにトイレの場所を聞き、送り出してくれた。

「はい、行ってきます!」

「ハッハッハ天野ォ、気をつけてなァ!」

 基本はいい友人の鎌瀬に手を振られながら、守人は角を曲がってトイレへと駆け込んだ。

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