第7話 HERO1

プロローグ



 技をインストールする為に、ラディすけを一旦機能停止させ、背中のハッチからメモリーカードを抜く。

 このカードの中にラディすけの全データ、人格と呼べるものが入っている。もしこの中のデータが無くなったり消えたりしたら、それはラディすけの死を意味している。

 そんなことを考えながらメモリーカードをまじまじと見た後、守人は家のパソコンにメモリーカードを差し込む。

 バトルアーツの公式ホームページからダウンロードした、技インストール用のアプリケーションを開く。

「あれ?」

 守人は思わず声を上げた。何故ならラディすけには、一つも技がインストールされていなかったからだ。この間放ったラディすけの必殺技も登録されていない。

 守人は両腕を組み、思わず頭を横にする。

「どうして……」

 疑問は膨らむばかりだったが、とりあえず守人は太陽オススメの技をインストールしていった。



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 ラディすけは守人の肩で鼻歌を歌いつつ、足をパタパタさせていた。

「ねえラディすけ」

 ラディすけは守人に顔を向ける。

「あー、えーっと、なんて聞いたらいいのかわからないんだけど」

「なんだ?」

 そこで守人は口籠ってしまった。なんて聞けばいいのか? わからない。きっとラディすけもわからないだろう。二人して混乱するだけかもしれない。なので、言わない方がいいのかもしれない。

「ん?」

「あの、えっと……ハハハ」

 それで誤魔化そうとしたが、ラディすけは聞き返してきた。

「宿題の答えか?」

「うーん……そんなとこ」

 ラディすけは腕を組む。

「確かにあの問題は難しかった。でもな自力で解いてこそなんだとオレは思うんだよな」

「そうだね」

 なんとかお茶を濁せた。

「君は一体誰?」

 なんて聞くわけにもいかなかった。そんなことを聞いたら、ラディすけがどこか遠くへ行ってしまうのではないか? そんな気にもなった。

「アレはなんだ?」

 ラディすけが指さした先にいたのは、一匹のキャットだった。茶色い柄のキャットが口に茶色い何かボロ布のようなモノを咥えている。ネズぴょんだろうか? もうすぐお食事されてしまうのだろうな。そんなことを少し考えたが、どうも違うらしかった。

「放せー!」

 叫びながら暴れたのでソイツはキャットの口から落ちる。そして逃げ出そうとした。しかし必殺の猫パンチがそれを妨げた。

「グヘッ!」

 ボスン! と音を立てる。本気で放たれるキャットのパンチはけっこうな強さだ。侮ってはならない。

 よくよく見たらその茶色い何かは、バトルアーツのようだった。周囲に人影が無いところを見ると、やはりノラの子のようだ。

「おい、守人!」

 ボーッと見ていた守人だったが、ラディすけに言われてハッと気付いた。助けなくちゃ!

 守人は「コラーッ!」と声を上げた。しかしキャットは一瞬たじろいだが、全然引く気配がない。

 守人は二、三歩前へ出る。すると流石のキャットもその場を引いたのだった。

「キミ大丈夫?」

 守人に拾い上げられたことで、キャットにボコボコにやられていたノラバトルアーツは、ハッと目が覚めたらしい。

「礼には及ばん」

 そして去ろうとするが、右膝の関節がいうことをきかない。

「礼を言うのはそっちじゃねえのか?」

 ラディすけの鋭いツッコミ虚しく、ソイツは機能停止した。

 バッテリー切れかと思ったが、どうもキャットにやられたダメージの方が大きいようだ。

 それを見て守人は。

「一旦帰るかな」

 そして家へと引き返した。

「やむ無し」

 ラディすけもそれに同意し、家へと帰っていったのだった。

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