第6話 逆襲の鎌瀬3

「また三人でかかってくる気か?」

 バトルする気満々といったラディすけの言葉に鎌瀬は笑う。

「三人? そんなチャチなことしねえよ」

 そして鎌瀬は仲間を呼んだ。

「今度は五人だ!」

 新沼と市川、そして新たに神保と田代が現れた。

「コイツを倒せばいいのか?」

 田代の言葉に鎌瀬は同意する。

「そうだ、チートヤロウをぶっ壊してやれ!」

 五体のバトルアーツがラディすけの前にあらわれた。

「その代わり、お前代金ちゃんと払えよな」

「成功報酬だ」

 神保は舌打ちしながらも、バトルアーツに命令する。

「やれ、ゲブリ! そいつを壊して二千円ゲットだ!」

 剣を抜いたラディすけに、オーク型のバトルアーツ「ゲブリ」のバトルアックスが襲う。

 ラディすけはそれを簡単にバックステップでかわす。

「けっこうなパワーじゃねーか」

 剣で受けていたら剣が歪んでしまっていたかもしれない。それほどのパワーだった。

 ラディすけが反撃に出ようとすると、田代のオーク型バトルアーツ、「レーガス」が双剣を持ち襲いかかってくる。

「こっちはスピードで勝負ってか? だがなザコにかまっている時間は無えんだよ!」

 回転斬りで襲いくるオークどもを吹っ飛ばした。すると、市川のハーピーが上空から襲ってくる。それを迎撃していると、新沼のフランケンがラディすけをそのパワーで捕まえ、遠くへとぶん投げる。上空で体制を整えられないところを、ハウンドβがサブマシンガンを掃射する。

 サブマシンガンの弾はなんとか弾き返せたが、ラディすけはすっかり囲まれてしまった。思わずラディすけは舌打ちする。

「ちょっとハードだな」

 流石のラディすけも五人同時に相手はしたことが無かった気がする。ただ負けるわけにはいかなかった。後ろで見ている守人の為にも。

「神技!」

 誰かが叫んだ。その場にいたバトルアーツ六体は、思わず声の方向を、上空を見た。

「ニーベルンザンバー!」

 巨大な剣の一撃が、一番奥にいた新沼のフランケンを襲う。

「オイラのフランケンがぁ!」

 ソイツは宙返りで戦いの輪の中に入ってきた。

「手を貸してやるありがたく思え」

「テメエは!」

「鎌瀬くんたち、それはイジメだよ」

「坂下さん……」

 ミサとヴァルきちだった。

「てめえ、坂下! お前もチートヤロウに手を貸すのかよ!」

「違うよ」

 ミサはキッパリと言った。

「卑怯でカッコ悪い鎌瀬くんたちに敵対するだけだよ」

 苦虫を噛み潰したような顔の鎌瀬は味方全員に指示を出す。

「ほら、はっはやくヤツをやれよ! 金払ったんだぞ!」

 新沼以外の三人は、ヤレヤレといった具合でバトルアーツを進ませる。

「なるほど、技か……。そういうのオレも持ってたっけな。思い出してきたよ」

 ラディすけは何かをぶつぶつ言っている。

「ラディすけ! ヴァルきち! 左右からくるよ!」

 放たれるオークの攻撃をラディすけとヴァルきちはかわす。体勢は整った。

「食らえ! これが! オレの必殺技だ!」

 ラディすけは肩に剣をかまえ、目の前のハウンドーβに突進していく。

「避けろ! ハウンド!」

 しかしラディすけの速度は避け切れるものでは無かった。ラディすけの必殺技を受けたハウンドβは大きく吹っ飛ばされ、鎌瀬の足元へ落ちた。ハウンドβの耐久値はゼロになっていた。

「逃げるぞ!」

 金で雇われた手下たちとともに、鎌瀬たちは我先に逃げていった。

「ありがとう坂下さん。助かったよ」

 そんな守人に対して、ラディすけはヴァルきちに一言だった。

「な? いらねえ世話だったろ?」

「気に入らないヤツだ」

「お前もオレの必殺技で倒してやろうか?」

 ケンカがふたたび始まりそうだったので、守人とミサはそれぞれのバトルアーツを拾い上げた。

「ヴァルきち、ケンカダメだよ」

「すまないミサ」

「ラディすけも」

 ラディすけは「フン」と鼻で返事をし、守人の手の上であぐらをかいた。

「坂下さん、ありがとう。ヴァルきちと坂下さんのおかげでなんとかなったよ」

「いやいやぁ、どういたしまして」

 ちょっと照れ臭そうなミサに、何度も「ありがとう」を伝えた守人はその場をを後にした。

「モリト」

「何? ラディすけ」

 一瞬言葉に詰まったが、ラディすけはハッキリと言った。

「さっきのナイスアシストだったぜ? 前のお前なら何もせず見てただけだったからな」

 守人はちょっと照れながら、ラディすけとともに帰宅したのだった。



         エピローグ



「ついに起動試験までこぎつけましたね」

 そこはサイバーダイン社のバトルアーツ実験室だった。

「コイツが動けば世界が変わるからな」

 研究員は愛おしそうにそれに触る。もう少しだ。もう少しでそれは完成する。そうすれば現状のどんなバトルアーツ、いや、どんなものに対してでもコイツは勝ち続けるだろう。

「頼むぞ」

 研究員は手を離す。まるで恋人でも見ているような目つきだった。

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