第42話 朝日の時4
ガルムは麗一の首目掛け噛みつこうとする。
「わっ!」
ヒロ太はガルムの横っ面を殴り吹っ飛ばす。バランスを崩したガルムだったが、綺麗に着地しすぐさま襲いかかってくる。
「わわわ……」
麗一は思わず腰を抜かす。そんな麗一を庇うように、守人はラディすけにガルムに攻撃するよう指示を出す。
ラディすけは指示通り、ガルムに襲いかかる。ヒロ太も一緒にガルムに襲いかかる。
「麗一君、立って! 次が来るよ!」
立てない麗一を守人は無理矢理立たせる。
「ヒロ太に指示を出して。僕はラディすけに指示出すから」
「そ、そん……わかった」
麗一の目に炎が灯った。
「ヒロ太、ガルムの右から攻めるんだ!」
「ラディすけは逆サイドから!」
「わかった!」
「了解」
ガルムは左右からの攻撃に一瞬たじろぐ。どう反応していいか困ったのだ。
バトルアーツ二人による気合の一撃に、ガルムはダメージを受ける。
「まだだよラディすけ!」
そう、ガルムの装甲は硬いのだ。ダメージは受けても、深刻なほどのそれではない。
「こうなったらヴァリアントブレイクで……」
「ラディすけまだ早い。今度は頭部に攻撃をするんだ」
「かしこまり!」
跳んでいくラディすけを見送ったヒロ太はじっと麗一を見る。
「ひ、ヒロ太、ガルムの足を狙うんだ! そこは装甲が薄い」
「了解」
その指示通りヒロ太は気合の一撃を脚部に食らわせる。頭部の装甲の厚さに弾かれたラディすけだったが、ヒロ太の攻撃を受けたガルムはバランスを崩す。
「今だ! ラディすけ、ヴァリアントブレイクだ!」
「ヒロ太もサンライトストラッシュだ!」
二人の必殺技を前に、流石のガルムも体力値をゼロにし機能停止した。すかさずチャンさんが、ガルムのメモリーカードを抜き取る。コレで一安心だ。
「やったねラディすけ」
ラディすけとヒロ太は剣を一振りし、鞘に納めた。
「四人でやればこんなもんだな」
「ああ」
ヒロ太はなんとなく気の抜けたような返事だった。ラディすけの視界の端で、何かが跳んでいったのが見えた。
「あのヤロウ」
ラディすけは守人の元へと戻り、肩に乗る。
ヒロ太は立ち尽くしている。そして決意し、麗一に顔を向ける。
「麗一、良い指示だった」
「ヒロ太……あ、ありがとう」
「でも、お前がここまで内弁慶だとは思わなかった。これからは俺がお前を鍛えてやる」
「え、ええ?」
「満珍軒、後継ぎたいんだろ?」
「う、うん……」
「俺が、お前を鍛えてやる!」
「わ、わかったよ!」
ヒロ太は守人にむく。
「すまない守人。俺は麗一の元に戻る」
「うーん、ヒロ太の顔からしてなんとなく予想してたけど……。わかったよ」
「しゃーねーなぁ。また会おうぜヒロ太」
ヒロ太は「ああ」と返事をした後、麗一の元へと歩いていく。
「麗一、ビシバシ鍛えるからな」
「お、お手柔らかに」
「麗一君。ヒロ太はマンガが好きなんだ。今ドラゴン玉の二十八巻読んでて、いいところだからできれば読ませてあげてね」
守人とラディすけはそのまま麗一の家を立ち去った。
エピローグ
「あーあ、ヒロ太のヤツ行っちまったな」
守人とラディすけは家に帰って来ていた。出しっぱなしのマンガが、ヒロ太の残滓を見せる。いたことを思い出させる。
「なんだか、部屋が広くなっちゃったね」
バトルアーツは小さい。それこそ小学五年生の手のひらにすっぽり入り切ってしまうほどの大きさだ。しかしヒロ太の存在は大きかった。大きかったのだ。
「なに、大丈夫だって。泣くなよモリト。モリト」
窓から見える夕日が滲んで仕方なかった。
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