第41話 朝日の時3
三人は帰宅し、家の中で一息つくころには辺りはすっかり夜の闇になっていた。
「でもさ、ビックリだったよね」
「ああ、アイツがあんなこと言うなんてなあ。な、ヒロ太」
ヒロ太は上の空だった。
窓の外を、月を見てぼーっとしている。その姿は気になる男子に告白をされた女の子のようだった。
「ヒロ太を返して欲しい」
あの時麗一は確かにそう言った。
「そんな、そればっかりは……。それにヒロ太の意思を聞かないと」
なんとか誤魔化そうとする守人だった。ヒロ太は口を開く。
「少し、考える時間をくれ」
そして現在に至るワケだった。
「ヒロ太、どうするの?」
「考えている」
「そう」
「モリトほっとけよ」
ヒロ太は考える。考えに考えた。もし自分がこの家から居なくなったら。守人は寂しがるだろうか? ラディすけのヤツは、バトル相手が居なくなるとか文句垂れそうだな。ドラゴン玉の続きも気になる。超ヤサイ人勝ったかな? そんなことよりも、麗一のヤツあんな他人に対してオドオドしたヤツだったとは。それが守人に向かってあんなこと言ったのだ。
「勇気……出したんだろうな……」
そこまで考えた時には既に眠る時間になっていた。
明日麗一に会うまでに考えをまとめないといけなかった。
「でもな、考えなんかまとまらないよな」
一晩中考えていたが、考えはまとまらなかった。
次の日の午後三時。三人は約束通り時間通り麗一の家へと再びやってきた。
守人はインターフォンをのボタンを押す。
「はーいチャンさんヨ」
チャンさんは守人の姿を確認すると、扉の前で待つように指示を出した。守人はその指示に従う。
「はーい入っテ入っテ」
扉は開き、守人たちはチャンさんに通され、麗一の部屋へと向かう。
「チョト待つヨ。ココでネ」
「はい」
昨日通された部屋とは別の部屋で守人は待つ。応接間だろうか? 皮張りのソファーに腰をかけ待つ。
「ヒロ太……」
ヒロ太は守人の言葉を聞きつつ顔は見なかった。
麗一は五分もしないうちにやって来た。
「そ、その。決意は決まったか?」
守人の対面に座った麗一の開口一番だった。守人は肩からヒロ太をおろす。
「麗一、俺は」
ヒロ太が言葉に詰まった瞬間だった。廊下の方だ。何かが駆けてくる音がする。
「ヒロ太!」
ラディすけはヒロ太とともに剣を抜き、その侵入者を待つ。
入って来たのはバトルアーツだった。しかしそれは大型。通常の人型バトルアーツの三倍はあろうというもの。ヒロ太がこの間戦った相手だった。
「ガルム!」
荒い息、様子がおかしい。
「ラディすけ、これは」
「そうだモリト。悲嘆の種だ」
悲嘆の種を植え付けられたガルムが、五人に襲いかかる!
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