第22話 勇者たちの挑戦1

 自分の無力さを呪っていたのは守人に他ならなかった。

 ラディすけとヒロ太が戦っている最中、自分は倉庫にこもって祈ることしかできない。

「ぼくも戦えたなら……」

 そう思いつつも、ビビり上がっている研究員のスマートフォンを見ていた。

 二人は戦っている。無事な勇者の帰還を祈ることしかできなかった。



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 魔王の持つ、巨大なメイスは慈悲の無い攻撃を仕掛けてきた。魔王自身の身長ほどもあるメイスだ。鎧で受けることはできない。盾で受けてもダメージは免れない。

 メイスによる攻撃をなんとかかわしたが、その圧倒的パワーとスピードに二人は翻弄されていた。

「く、なんて破壊力だ」

 ヒロ太は思わず舌打ちをする。

「その程度でよくもこの魔王に刃向かったものだ」

 ラディすけの背後からの攻撃も魔王は先読みし、メイスで防御する。ヒロ太はその瞬間を見逃さなかった。

 魔王に必殺の間合いから突きを食らわせる。しかし魔王はメイスを手放して体を逸らし、ヒロ太の突きをかわす。

「くだらんなあ」

 ヒロ太のボディを殴り、吹っ飛ばすことで強制的に間合いを作る。斬りかかるラディすけを蹴り飛ばし、ラディすけとも間合いを取った。

「さすが魔王、手強い」

「ああ、でもこれくらいでないと歯応えがねえ」

 ヒロ太は口角を上げ、ラディすけの攻撃に続く。

 二人は気合と共に魔王へ一撃を食らわせる。しかし、魔王はそれを拾い上げたメイスで防御、そのまま振り払った。

 吹っ飛ばされた二人だったが、着地と同時に目配せして二手に分かれる。

 二方向からの次々繰り出される攻撃に、流石の魔王も手を焼き始めていた。

「ふむ」

 ラディすけとヒロ太の攻撃を、かわし、防御し、いなしながら魔王は笑う。

 すると魔王はメイスを手放し、二人との距離をとった。

「逃げるか魔王!」

「ヒロ太まて、様子が変だ」

 間合いを取った魔王は、壁に飾ってあったパーツを取り出した。

「なるほど、この魔王でも流石にこの姿で勇者二人相手は手を焼くか」

 魔王は取ったパーツを立たせ、少し飛び上がる。

 そしてドッキングし、脚部に追加パーツをつけた。

 黒い山羊の蹄のようにも見えるそのパーツからは、何か嫌な予感がする。

「ヘッ、たとえどんなものであろうと、テメエごと噛み砕いてやるぜ!」

 ラディすけとヒロ太が突進しようとする。

「笑止」

 魔王は二人に向かって突進する。そして、まだ攻撃の準備が整い切っていない二人に体当たりをする。

 吹っ飛んだ二人が見たものは、メイスを持った魔王の姿だった。

「魔王、テメエ……」

「なに、ただの脚部用のスラスターだ」

 その素速さは異常だった。目で追うのがやっと、反応できるかはギリギリのところだった。

 その凄まじいスピードも、魔王は使いこなしている。

 魔王はヒロ太との間合いを一瞬で詰め、メイスの一撃を食らわせる。

「ヒロ太!」

「他者の心配をしている場合か?」

 ラディすけとヒロ太は二十歩くらい離れていたのに、魔王はその距離を一秒かからずに詰めてきた。

 ラディすけは思わず舌打ちし、盾でメイスの猛攻を防ぐ。

「さすが魔王、あの時よりも強いかもな」

「この魔王の軍門にくだりたくなってきたか」

「フッ、それだけはねえな!」

 ラディすけは剣を薙ぐ。

 魔王は滑るように移動し、二人の中間点に立つ。

 ラディすけは思わず膝をついた。ヒロ太も立とうとしているが、なかなか立てずにいた。

「これで理解したか? この魔王には決して勝てぬということが」

 しかしラディすけもヒロ太も、魔王を睨みつけていた。

「その目、敵対をやめぬか……ならば、更なる絶望を進呈しよう」

 魔王はメイスの石突で、地面を一度叩く。すると、壁を突き破り、二機の生肉のような赤い色をした飛行物体が部屋の中へと入ってきた。

 それは展開し、漆黒の爪を持った手のひらとなった。

 ラディすけと同程度の大きさのその手のひらは、今にも襲いかかってきそうだった。

「勇者どもめ、二度とよみがえらぬよう、そのハラワタをぶちまけてやる」

 そして、魔王は二機の手のひらとともに、二人に襲いかかってきたのだった。

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