第23話 勇者たちの挑戦2
手のひらは魔王よりは若干遅いものの、それでも驚異的なスピードで二人に襲いかかってきた。
手のひらばかりに気を取られていると、メイスの一撃をくらってしまう。かといって、魔王にばかり対応し続けると、手のひらに捕まってしまう。
防戦一方のラディすけとヒロ太は互いの背中をくっつけるところまで追い込まれてしまう。
「ラディすけ、ちょっとハードだな」
襲いくる二つの拳を左右に分かれつつ跳んで避ける。
「もう根を上げんのかよ」
二人はヘラヘラしつつも戦い続ける。ヒロ太は拳をかわし、その直後に襲いくるメイスを盾で防御する。ラディすけは、そんなヒロ太をサポートすべく駆けつけようとする。しかし後ろを向いた瞬間手のひらに捕まってしまった。
「ラディすけ!」
「よそ見をしている場合か?」
魔王はスラスターをふかし、メイスにかける力をさらに強める。
ヒロ太は魔王をいなしながら剣で魔王を突く! しかし、突きのスピードより速く魔王はその場を去っていた。
ラディすけを地面に叩きつけた量の手のひらは、魔王の元へ引き返して行った。
ヒロ太はラディすけを立ち上がらせる。
「確かにハードだな」
「ああ、なかなかに手強い。それよりラディすけ」
「なんだよ」
「あの手のひらは両方とも俺が引き受ける。魔王は任せて大丈夫か?」
「なんだよ、勝算でもあるのか?」
ラディすけの言葉に、ヒロ太はフッと笑う。
「まあいい、両手は任せた。オレは何がなんでも魔王を叩く」
「相談は終わりかね?」
「勝負だ魔王」
「俺たちは絶対に勝つ!」
ラディすけとヒロ太は各々剣と盾をかまえる。その目は絶望の中でも光り輝いていた。
魔王は、それを鼻で笑う。
「ではそろそろ終わりとしよう」
魔王と手のひらたちは、二人に向かってきた。
ヒロ太は精神を統一させ、気合とともに駆ける。ラディすけを追い越したその速度は、瞬間ながら魔王よりも速かった。
「これは……」
その様子を見た魔王は、この戦いで初めて完全な防御の体勢をとった。
「これが! 俺の超必殺技! サンライトストラッシュ!」
山吹色に輝く剣の一撃は、両の手のひらを切り裂いた。次の瞬間手のひらは大きく爆発する。
ラディすけも思わず防御の姿勢を取る。
爆発に巻き込まれたヒロ太は、天井に体をめり込ませた。
「ヒロ太!」
「よそ見をしている場合か!」
襲いくるメイスの一撃をラディすけはモロに食らう。
「テメエ、生きてやがったが」
吹っ飛び、転がり、壁に叩きつけられたが、ラディすけはなんとか立ち上がった。
「この魔王を討滅したければ、あと三倍は持ってくるんだな」
ラディすけは怒りに任せ、魔王に斬りかかる。
「所詮はその程度よ」
ラディすけの怒りの一撃を魔王はメイスで受け止める。魔王はイマイチ踏ん張りが効いていない。流石に爆発のダメージは大きいようだ。
ラディすけは連続で剣を繰り出す。魔王の脚部はそれに耐えきれず、追加パーツだけではあるが自壊した。これで反応速度ギリギリのスピードは無くなった。
不意に壊れた追加パーツのせいで、魔王の体勢は大きく崩れた。
「もらった!」
と、剣を振り上げる。しかしそこでラディすけは悪寒がした。突進をなんとかやめ、その場をバックステップで二歩三歩と離れる。
「そうかそうか、ようやく見えた」
魔王は俯きながらメイスを捨てる。
「ヘッ、勝負を捨てたか?」
魔王は手のひらをラディすけに向ける。
そして放った。
ラディすけは思わず盾で防御する。魔王の放ったそれは、ラディすけの盾を破壊し、そのまま研究室の壁を突き破った。
「ふむ、威力は五割といったところか。まあ、もう少し慣れれば元に戻るだろう」
「テメエ! 魔法を!」
ラディすけは盾の残骸を投げ捨て、改めて剣をかまえなおす。
「なに、心配いらねえ。ピンチはチャンスだ」
そう自分に言い聞かせつつ、ラディすけは魔王に向かっていく。
魔王は魔法を放つ。魔力を放っているだけだが、今までのどの攻撃よりも強力だった。あと一歩までは来ている。少しでもいい。ヤツにスキができれば!
その時だった。魔王の後方すぐのところで何かが着地するような金属音がした。
思わず魔王はそちらを振り返る。それは天井からヒロ太が投げた剣だった。
ラディすけはその瞬間精神を統一させ必殺技の体勢を作りあげ、魔王に向かって駆けていった。
「おのれ!」
ラディすけは放たれる魔法を紙一重でかわす。
「必殺! ヴァリアントブレイク!」
放たれた必殺技は、魔王の魔力で作られた壁を軽くやぶり魔王の左肩から胸にかけてを斬り裂いた。
「そうか、貴様も魔法を……ククク……しかしこの魔王、タダでは死なん」
すると魔王は素手でラディすけの鎧を貫きメモリーカードに触れる。
「貴様も道連れだ」
魔王は邪悪な電流を流した。ラディすけのメモリーカードはその電流に耐えきれず、そのデータ全てを消去した。
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