第44話 憎悪の矛先2
放課後、守人は一度家に戻り、ランドセルを置いた後、ラディすけとヴァルきちを連れて公園へと向かった。ミサにヴァルきちを返す約束の為だった。
今日も公園は大盛況だった。
「アイスクリームの販売でもしたら大儲けだな」
なんてラディすけが思っていると、既にそこには売店がありアイスクリームが売られていた。
「やっぱそうなんだなあ」
「ん? 何がだ?」
ヴァルきちはラディすけの顔を覗き込む。
「なんていうか、考えることはもうやっているヤツがいるんだなあって」
「よくわからんがそうなのか?」
首肯するラディすけに、ヴァルきちは「ふーん」となんとなく納得する。
「それより坂下さんは……いたいた」
ちょっと奥まったところのベンチにミサは座って待っていた。
「ごめん待った?」
「待ったよぉ。三十時間くらい待ったよぉ」
笑みを見せるミサの隣に守人は腰を下ろす。ヴァルきちはミサの手の上におりた。
「ヴァルきち、お泊まりどうだった?」
ヴァルきちは心ここに在らずといった感じでラディすけを見ている。その様子を見たミサは、ワッハッハと快活に笑うのだった。
「もう完璧だね」
そう言いながら再びワッハッハとやったが、守人にはなんのことかさっぱりわからなかった。
「お前そう言うところニブチンだよな」
「ニブチンって何? 文鎮の仲間?」
ラディすけとヴァルきちはため息をつき、ミサは快活に笑う。守人はひたすらにわからない顔をしていた。
「まあ、お前のそんなとこ、嫌いじゃねえけどな」
ラディすけにそう言われ、守人は更に頭を捻るもよくわからなかった。
「天野くんはホントに面白いねえ」
「随分楽しそうじゃないか」
そう言いながら歩いてきたのは、矢部とその手に乗っているシーザだった。
「ぼくたちも混ぜてよ」
「矢部くん……」
守人は思わず顔をこわばらせる。ヒロ太をあんな目に合わせ、守人を殴って帰っていった男だ。警戒しない方がおかしかった。
「どうしたんだい? 話しなよ。今までみたいに」
矢部の言葉に呼応するように守人は立ち上がり、ラディすけも地面におりて戦闘態勢に入る。
「へえ、ヤル気なんだ。このぼくたちと」
「ヒロ太にひどいことをした借りを返さねえとなあ」
ラディすけは剣をかまえる。シーザは槍を構える。
「私も戦う」
「ヴァルきちは下がってろ。コレはオレの問題だ」
するとヴァルきちはそれを鼻で笑う。
「お前の問題なら、私の問題だ。そうだろ?」
「ヘッ、遅れるなよ!」
襲いかかってくる二人に対し、シーザは口角を上げ、ぼそりつぶやいた。
「第一目標クリア」
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