第5話 逆襲の鎌瀬2
鎌瀬と三体一のバトルをした次の日の放課後、守人はラディすけを連れて出かけた。バトルの為に公園に行くのではない。守人の肩に乗っているラディすけは、守人を見上げながら聞いた。
「どこへ向かっているんだ?」
「近所のお兄ちゃんのところへ相談にね」
「ふーん」
歩いて二分も経たないうちに、守人は目的の家に到着した。
「ここだよ」
「ここでとんでもねえバトルでもするのか?」
「ちょっと相談にのってもらおうと思って」
守人はチャイムを鳴らす。
「はいどちら様?」
インターホンで対応してくれたのは、この家のおばさんだった。
「守人です。太陽兄ちゃんいますか?」
するとおばさんは、「はーい、ちょっと待っててね」と、そのままインターホンを切った。
頭を掻きながら出てきたのは、高校三年生のお兄さんだった。
「よう守人、どうした?」
「こんにちは」
太陽は「おう」とあいさつをし、守人の肩に乗っているラディすけに気づいた。
「そっか、ついにお前もバトルアーツを始めたか」
「そうなんだけどね」
「まあいいや、とりあえず中入れ」
そう言って太陽は守人を部屋の中に入れた。
「あれ? 太陽兄ちゃん今日学校は?」
「ああ、今日は昼で終わりだったんだ」
二階の太陽の部屋に入った瞬間、ラディすけは痺れを切らせた。
「モリト、コイツは?」
「オレは森田太陽よろしくな」
「太陽兄ちゃんはバトルアーツの日本ランカーなんだよ」
ラディすけは「それはそれは」と剣を抜く。
「いいねえ。なかなか交戦的なバトルアーツだ」
守人は笑いながらラディすけを止める。
「さっきも言ったけど、今日はバトルをしにきたんじゃ無いんだよ」
「じゃあ何しに来たんだ?」
頭に「?」を浮かべているラディすけだったが、太陽も「そうそう、オレもそれを聞きたかった」と聞いてくる。
「ぼくのラディすけ、すごく強いんだけど」
「言うことを聞かないのか?」
「いや、ちゃんと聞いてくれるよ」
「どうしたんだ?」
ちょっと口籠もり、守人は意を決して言った。
「ラディすけは強いんだけど、ぼくが弱いんだ」
「というと?」
「バトルは全部ラディすけ任せでぼく自身は何もしていないって気づいたんだ。だからみんなにチートヤロウって言われて」
太陽は「なるほどね」と、うんうん納得した。
「どうしたらラディすけを持つにふさわしくなれるか、太陽兄ちゃんなら知っていると思って」
太陽は大きく笑い、「すまんすまん」と謝った。
「バトル始めてすぐにその壁にぶつかるとは、お前才能あるのかもな」
「ラディすけって言ったっけ? お前はどう思う?」
ラディすけは「うーん」と唸った後に口を開く。
「オレはオレ一人でも大丈夫だけど、この間みたいに多人数を相手にするときは、守人の目が欲しいかな」
「目?」
ラディすけは「ああ、そうだ」と、剣をしまいつつ言った。
「どっちから敵が来ている、それだけでも分かれば戦いはかなり有利になるからな」
「守人わかったか? 応援だけじゃダメなんだ。的確な指示をバトルアーツに出すのが重要なんだ」
「うまく出せるかな?」
ラディすけも太陽も笑った。
「まあ守人、ゆっくりやればいいよ。そんな急ぐことは無い」
太陽の言葉にラディすけも同意する。
「っていうか守人、お前多人数って何人と戦ったんだ?」
「三人だぜ?」
あっきらかんとラディすけは言った。太陽は「おお」と感心しつつも、ちょっとだけ難しい顔をする。
「で、勝ったのか?」
「相打ちだったんだ」
「モリト、アレはこっちの勝ちだ」
「勝ったけどバッテリーが切れちゃったんだ」
太陽は納得する。
「ラディすけ、お前も特訓が必要みたいだな」
「お、やるか?」
剣を抜かずかまえたラディすけに、太陽は「オレは今出来ねえんだ」と寂しそうにする。
「太陽兄ちゃん受験勉強があるからね」
「ラディすけ、お前どんな技が登録されてる?」
「いや? 何も」
太陽は思わず「は?」と聞き返す。真面目な顔のラディすけに、思わず吹き出した。
「いやいやすまない。じゃあ、守人は帰ってラディすけに技のインストールだな。それで二人でよく相談しあって、バトルの仕方を二人で考えるんだ」
「わかった。ありがとう太陽兄ちゃん」
立ち上がる守人の肩にラディすけは乗っかる。
「タイヨウって言ったか? ありがとな」
「おう、また来いよ」
見送ってくれた太陽に別れを告げ、守人とラディすけは森田家を後にした。
「技なんてあったんだな」
「ゴメンね。すっかり忘れてたよ」
「ま、いいってことよ。とりあえず帰っていんすとーるとやらしようぜ」
それからすぐに家に帰った。
「よう天野ォ」
路上で鎌瀬に出会った。
「鎌瀬君。またね」
守人は肩を掴まれ、「ちょっと待てよ」と引き止められる。どうやら家に帰る前に、もう一バトルありそうだった。ラディすけは「しょうがねえなあ」と、ため息をついて地面に降りて、剣を抜いたのだった。
それを見て、鎌瀬は口角をゆがめた。
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