第17話 黒の息吹2
次の試験は、目の前にいる旧型バトルアーツたちとのバトルだった。
魔王はその数を数える。
「……二十か」
二十機のバトルアーツが、魔王に群がっていく。
この間、あの小僧どもと戦った時よりも、大分力が戻ってきた感がある。
抜き手で敵バトルアーツを貫きつつそう思った。魔力はまだ感じられないが、それでも力は前の世のものに近づきつつある。これは若干手を抜かないと、後々面倒臭いことになりそうだ。
倒した相手の頭部を足で踏み潰しながらも、次のバトルアーツを相手にする。
遠距離攻撃が主体のヤツが何人かいる。
魔王は、飛び交う銃弾を、その二指で受け止める。そう、銃弾すらもこの魔王には効かないのだ。
狙撃手はスナイパーライフルを捨て、ハンドガン二丁に切り替える。
銃撃戦の様相だったが、魔王は放たれた弾丸を手で打ち払っていく。
足元にあったロングソードを拾い上げ、狙撃手に向け投げた。
狙撃手は腹部をメモリーカードごと貫かれ、その機能を停止した。
あと数体魔王に立ち向かってきたヤツがいたが、それらは魔王の敵ではなかった。
魔王は二十体全てのバトルアーツに破壊の限りを尽くし、逃げ惑うバトルアーツたちも殺した。
「見事だワーグ」
主任研究員の声が聞こえてきた。
「今日の実験はもう終わりだ」
そして魔王は、背中にケーブルを挿し、充電を開始した。
いつもならここで眠りにつくハズだった。
しかし今日は、研究員の誰かが、ワーグのシャットダウンを忘れてしまったらしい。魔王は眠りにつかなかった。
そして壁の一部が、外への扉が開いた。
「どう思う? 今度の新商品」
「ワーグ?」
「いや、もう一つの方」
「試作品だろ? 両方作っちまえば?」
「もう試作品は両方できてんだ。でも色がなあ」
などと話しながら、研究員が入ってきた。魔王は脱出を試みる……かに見えた。魔王は充電ケーブルを外さなかった。もう充電が切れそうだったのだ。今はまだその時ではない。
研究員たちは、部屋の掃除を始めた。
そして、しばらくして、帰っていった。
空気の入れ替えのためなのか? 扉も開けっ放しだった。
これ以上の好機もない。魔王はバッテリーが回復したのと、誰もいなくなったのを見計らって、誰もいない研究所を歩いた。
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