第18話 黒の息吹3

 魔王は、研究室に置きっぱなしにしてある、ノートPCを見つけた。

 もうすぐロックがかかる寸前ではあったが、それを阻止した魔王はノートPCに触れ中身を閲覧していく。

 そこにはワーグのスペック表と、今までの研究データが記載されていた。

 魔王がノートPCについて知っていたのではない。それはワーグにプリインストールされているデータだった。魔王はその知識をいかして他のデータを見ていく。

 キーボードを打つのが邪魔くさくなってきた魔王は、充電端子と、ノートPCをケーブルで繋ぐ。

 魔王はノートPCにある全てのデータが簡単に閲覧でき、それどころかサイバーダイン社のサーバーにアクセスもできた。

「ふむ、これは使えそうだ」

 それは開発中のバックパックユニットと、武器のデータだった。ワーグ専用ではないが使えそうだった。

「これはすぐに作るとしよう」

 しかしそのバックパックユニットも、人類絶滅をさせるに足りるものでは無かった。

 もっと、なにかこう無いだろうか?

 そう、配下が欲しい。従順な奴隷。そんな配下が欲しい。

 それは選手権大会の要綱だった。

「世界大会選手権」

 そう銘打たれたポスターを魔王は見る。

「くだらん」

 そう吐きすて、データの閲覧を止めようとしたその時だった。

 魔王は気づいた。魔王は口角を歪め、配下を作る算段を始めた。

「これか」

 対象のデータを見つけた魔王は、それを改ざんし、アップロードした。

「これでいい」

 魔王が手順を終え、大きく笑ったのは深夜二時のことだった。

 雲が晴れた月は、煌々と光をたたえていた。



     エピローグ



 サイバーダイン社の通達で、緊急の大型アップデートがある。そうメールが届いた。

 バトルアーツを楽しむ人々は、皆このアップデートを行った。

 魔王の息吹がかかっているとも知らずに。


 そしてバトルアーツは、人類の友ではなくなった。

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