第12話 宿命の再会3
気合とともに、ラディすけはワーグに剣を叩きつける。
ワーグはそれを防御しない。かわすこともなくただその体で受ける。ラディすけ渾身の一撃も、ワーグには効果ないように見える。
「うおおおおお!」
ラディすけは連続で剣を繰り出す。ワーグはやはりよけようとしない。ただその身で受けるだけだった。
ワーグはラディすけの青いマフラーを掴んだ。そしてラディすけごと壁壁めがけ投げる。
「ラディすけ!」
壁に叩き連れられつつも、なんとか着地した。
「下がってろモリト。コイツはヤバイヤツだ。逃げ道を探しておいてくれ」
「逃げ道なんて……」と言いかけて、守人は「わかった」と壁を探り始め始めた。どこかにスイッチがあるかもしれない。
たった二回の攻撃でもう体力値はほぼ無い。もう一撃食らったらマズイ。強制停止になってしまう。せめて守人だけでも逃さないと。その一心でラディすけは戦った。攻撃でも防御でもなく、攻撃をかわすことに重点を置き、カウンターで攻撃を当てる。消極的でラディすけ好みではない戦い方だが、一番時間が稼げる。
「よし、来い!」
ラディすけは膝下くらいに剣先を向けてかまえ、突進してくるワーグとすれ違いざまに剣を叩きつける。ワーグも何度かアタックを仕掛ける。しかしラディすけのカウンター戦法にうまくハマっていくだけだった。
うまくカウンターが決まるので、ラディすけが「もしかしたら勝てるかもしれない」と、一瞬の油断を見せた。
ワーグの狙いはそこだった。
ワーグは唸り声をあげる。そこでようやくラディすけも気づいた。剣がボロボロになっていたのだ。
「マズイな」
ラディすけはボロボロの剣を見て、そうつぶやく。
ワーグの狙いはラディすけの持つ剣だった。強固な自分の体に何度も当てることで、武器を破壊し、相手を絶望させる。そういう算段だったのだ。
「使えて後一回ってとこか……。ならば!」
間合いをとったラディすけは、剣を肩にかまえる。必殺技のかまえだ。これが通じなかったら……ラディすけは考えるの止め、目の前のワーグを睨みつける。
「いくぜ! 必殺技!」
ラディすけはワーグの動きをよく見る。絶対に外せない。外したらワーグは自分を破壊しつくし、守人に襲いかかるだろう。それだけは避けなければならない。
ラディすけとワーグは同時に駆ける!
そしてラディすけはワーグに必殺技を叩きつけた。
「コイツ!」
ワーグはラディすけの必殺技さえもわざと食らったのだ。
ワーグの確信通り、ラディすけの剣はへし折れた。
ラディすけの必殺技は確かにキマった。しかし既に使用限界だった剣の方がその威力に耐えられなかったのだ。
勢いあまり転がるラディすけ。ワーグはそんなラディすけに向かってゆっくり歩き、仰向けに倒れているラディすけを踏みつけた。
「この程度だったか。ラディ」
「なんでオレの名前を……。まさか、テメエは!」
ジタバタと暴れるラディすけを、ワーグは足で押さえる。
「思い出したか? そうだ。こちらも今思い出したよ」
今までの無機質な感じとは違う、尊大な態度でワーグは踏みつける力を強くする。
「ヘッ、よもやテメエもこっちに来ていたとはな!」
苦しいのを我慢しながらラディすけは両手で足をどけようとする。しかしワーグの足はビクともしない
「宿命である。やむを得まい。しかし、貴様の必殺技、ヴァリアントブレイクだったか? それを受けての気づきだ。因果なものよ……」
「そういや、そんな名前だったな。オレの必殺技」
足元でうめくラディすけを見て、ワーグはほくそ笑む。
「命令だ。命乞いをしろ」
「ヘッ、このオレが、そんなことすると思ったか?」
ワーグはその言葉に納得する。そして笑みを浮かべる。
「ではそろそろ死ぬか」
ワーグは足に力を入れんとする。そこでラディすけの意識は途絶えた。
「ラディすけ……?」
呼ばれてラディすけはガバッと立ち上がる。
「ヤツは!」
「大丈夫、ここは僕の部屋だよ」
ラディすけは辺りを見回す。確かにそこは守人の部屋だった。更によく見ると身体中のキズが治っている。というより、新品と交換された。そんな感じなのだろう。
「モリト、ヤツは?」
「あの後研究員の人が僕らを見つけてくれて、キミとワーグは停止信号で強制停止させられたんだ」
ラディすけは納得し、ため息をつく。
「ラディすけ、アイツ知り合いだったの?」
それっきりラディすけは黙り、誰とも喋らなかった。
エピローグ
ワーグは夢を見ていた。夢の中でも考えを巡らせていた。
これからどうしたものか? 自分は支配をする者。なのに今回は強制停止という他者の力を甘んじて受けてしまった。
「はてさて、どうしたものか?」
夢の中では以前の姿のまま。椅子に座りワイングラスを回しながら考える。
「まあいい、どちらにしろ、やることは決まっている」
そう、ワーグは宿命としてやらなければならないことがある。
「今世こそ人類を抹殺し、アレを手に入れなければな」
夢の中でそう決意を新たにしたワーグは、目を覚ます時を待つことにした。
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