改めて、異世界転生の場合┈┈case-3
僕の予想はやっぱり正しかったんだ。
本当の神が現れ、改めて僕の物語が始まると分かり、僕はそう安堵した。
ご褒美があった所を考慮すると、恐らく不遇スタートか、ルートじゃない主人公は適当なタイプなのかもしれない。
…別にずっと僕の無双ハーレムルートでいいのにさ。
まぁいいさ。
僕は色々経験をして
しかも僕が主役の成人向けストーリーだと分かったんだ。
それなら神が頼ってきてるのを無下にしてやる事もないだろ。
仕方ないから邪神への為に人肌脱いでやろう。
今度こそ僕はヒーローになるんだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
今回僕は万全を期し、神からチートを得ておいた。
チュートリアルを省みて得たチート。
それは鑑定スキルだ。
鑑定スキルがあればチュートリアルであった様な、異世界との認識の差異を埋める事が出来ると考えたからだ。
異世界について知らない部分さえなくなれば、僕の知識チートが必ず役立てられる。
内政チートも農業チートも思うがままに出来るんだ。
きっとチュートリアルは鑑定の必要性を密かに伝えるものだったんだろうな。
それに気付いたのはきっと僕だけ。
他のモブ連中は神の話を鵜呑みにしただろうが、実際のところあれはカバーストーリー。
僕の無双っぷりを引き立てる為のただの前座に過ぎない。
僕がただの脇役なわけないんだからね。
鑑定スキルは僕の注文通り、目に入るもの全てが分かるスキルに仕上がってた。
視界に入ったものの名前、構造、原理、背景。
それが人なら好感度や性癖、経験人数なんて事まで分かる。
ただ転生した直後は地獄だった。
両親の性癖やら経験人数なんて、誰だって知りたくもないだろう?
経験回数とかが増えたりとかも。
…成長していくにつれて、もはや慣れて諦めた。
まぁその他はほとんど完璧だ。
鑑定スキルのお陰で、狙った女の子にはモテるし、知識チートも失敗しないし、医者まがいの診察だって出来る。
これだよこれ、僕はヒーローなんだからこうじゃないと。
唯一残念なのは、神に“視界に入ったら”と要望していたせいか鑑定は常時発動に固定されていて疲れる事と、鑑定した結果経験値みたいな概念はないらしいって事ぐらい。
まぁ鑑定で損する事は両親の件以外無いからいいとして、経験値がない事にはちょっとだけ困った。
運動はどうにもデブだった時の名残か苦手意識があるんだ。
…鍛えるのも嫌だし、最強ムーブは諦めるしかなさそうだな。
…けど知識チートで充分無双できるだろうし、問題ないと僕は判断した。
ある時、僕は突然倒れた。
鑑定スキルを大いに活用した。
まだ小さな子供なのに貴族になれるかも。
そんな噂が少し聞こえてくる位には僕は躍進した。
むしろそれを狙ってきた。
その結果、僕は鑑定スキルのリスクというものを見ようともしなかった。
…医者が言うには倒れた原因は、脳を酷使しすぎて過労死寸前だったとか。
診断には正直納得した。
鑑定によって無数の情報が一日中入ってくるから、休む暇がないんだろう。
…納得はしたけど、どうしようもない。
目を閉じても駄目だった。
まぶたについての情報が延々と脳に流れ込んでくるだけだったから。
段々と便利に思っていた鑑定にイライラしてくる。
うっとおしい。
邪魔。
ストレスで何かをひたすらに食べたくなる。
けど、食べ物を目の前にすると食材の情報がたくさん鑑定される。
うざい。
腹立つ。
その内、ほとんど食べなくなった。
視界になるべく物を入れないように。
消えろ。
頼むから。
人と関わる事もやめた。
相手の情報をいくらでも分かるせいで、設定集でも見ているような、そんな気分にしかならなくなったからだ。
頭が痛い。
割れそうだ。
物忘れも激しくなってきた。
多分、頭に情報を詰め込みすぎてるからだろう。
辛い。
苦しい。
…まぁもう良いんだけどさ。
僕は気付いたからね。
だって余りにも理不尽で不親切。
気付かない方がおかしいよね?
わかったよ。
僕は主人公じゃないって。
ヒーローにはなれないって。
これは物語じゃなくて、新たな人生なんだって。
ずっと目を背けてた現実に、目を向けないといけないって…。
でも今はとりあえずこの苦痛から逃れさせてほしい…。
あれ?君は…。
経験人数が分かるのは知ってたけど、そっちの経験人数も分かるのか…、まぁ鑑定スキル的に当たり前か。
というかすごい数だ。
…ふーん、君も悩んでるんだね。
あ、いや、分かったような口を聞いてごめん。
僕の幻覚かもしれないけど、もし君が幻覚じゃなければ。
僕の願いを叶えてくれるなら。
得意だろ?
僕を楽にしてくれ。
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転生例 No.13 …学生:C
転生先 …剣と魔法の世界
死亡原因 …動脈の切断による失血
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