第三幕 序章 ~更に、ご都合主義~

更に、ご都合主義なんて





人の欲は尽きないものだ。

金銭欲、出世欲、情欲、物欲、生存欲…。

挙げればキリなんて有りはしない。


欲を完全に満たす事が出来るのは、欲を追求した者だけ。

それが世の常。



では、人の欲が行き着く先は一体?

巨万の富?

…いいや、違う。


酒池肉林?

…それも違う。


絶対的支配の権力?

…残念ながら不正解。



そんな、ある程度地位が高くなれば全部まとめて手に入れられる様なものに収まる程、人の欲は甘くないのだから。


古今東西、時の権力者達が願う欲はただ一つ。

それは…





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…いかんいかん、呆けてちゃ。

遠い日の夢を見た気がする。

でも今はそんな夢を見てる場合じゃない。


贖罪の為にも俺はやり遂げなきゃ。

これをやり切れば俺はきっと許してもらえる、救われる。

そう信じなきゃ俺は俺自身すらも許せない。



…神と爺さんの賭けが決まった。

内容を聞いて寒気がしたんだ。


神と爺さん、それぞれが一つの世界につき二人まで転生、転移で人を送って、どっちの組がより長く生きられてたかを競っていく。

最終的に長生きした組が多い方が勝ちって話だった。


反吐が出る。

これじゃまるで、人の命を使ったボードゲームだ。

長生きすれば良いってルールしかないって事は、つまり殺し合いすらも認めるって事なんだから。


爺さんは一体何を考えてるんだ。

同じ人間として理解が及ばない。


でもそれぐらいしなくちゃ、神と呼ばれる様な存在には勝てないって事なのかもしれない。

俺には爺さんの目的も考えも何も分からないけどな。

大体何を賭けてるのかも聞いてないし。



とにかく俺達はもう、指し手の期待になるべく応えて動く“駒”でしかない。

ならどっちの陣営に選ばれようと大人しく頑張るしかないんだ。


だって俺達は指し手を選ぶ事すらできない“駒”なんだから。





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おれは甘く見ていた。

父がどれ程おれに会いたがっていたのかを。

何となく改めて話すのが気恥ずかしくて、面と向かって話すのを避けて異世界へと向かった。


どうせそれ程おれに会いたければ父も神様に言うだろうし、神様も貢献した父を優遇して向かわせてくれるだろうと思っていた。

それが、蓋を開けて見ればいつの間にか父は居なくなっていた。


サイコメトリーで読み取った所、どうやら父は自力でおれを追う選択を選んだ様だった。

そしてそのまま行方知れず。



どうしてこんなにも上手くいかないのだろう。

この“箱庭”にやって来ている誰もがそうだ。


まるで仕組まれているか・・・・・・・・の様に。

後悔を残す人生を歩み続けている。


そう考えると、何か大事な事を忘れている様な、そんな感覚に囚われる。


…忘れよう。

今はそんな事よりも大切な事があるのだから。




神様におれが報告した事。

それはサイコメトリーで読み取った、おれがあの世界に行く前に行われていたお爺さんと例の殺し屋の子の会話だった。


殺し屋の子は神を殺す方法か、元の世界に戻る方法のどちらかが無いかをお爺さんに聞いていた。

あの子は新たな刺激か、改めて同じ刺激を味わう、という事を求めているらしかった。


対するお爺さんの返答は、通常元の世界には戻れない……、因子というものがあって……、君が特殊だ……、なんていう細かな理由込みでの話だった。



その話を神様に伝えた時、神様は明らかにおかしいと言っていた。

何故なら神様も、戻せない事は知っていたけど理由までは知らなかったから。


そしてこの賭けに発展した。

賭けに勝ちあの狸お爺さんが知っている事が分かれば、それを解明し全員を元の世界に元の状態で帰す事が出来るかもしれない、そう神様が判断した結果だった。


…一つ神様が予想外だと言っていたのは、お爺さんから賭けを提案してきた事。

そして賭けにも関わらずお爺さんが、勝った時のリターンを指定しなかった事。


意図が読めない、と神様は困惑した様子をおれ達にだけ見せていた。



父の行方、世界の理、お爺さんの真意。

色々と気になる事は多いけど。


おれはおれに求められた役割をこなすだけ。

ロキに一矢報いた父の様に。





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踊れ、掌の上で。


既に殆ど儂の願いは達成された・・・・・・・・・・

後は精々足掻くが良いわい。


…こうなると彼奴の口癖の真意が少し分かる気がするのぉ。



ふと資料が目に入る・・・・・・・

…本当に何奴も悲惨なもんじゃ。


この作業とももう直ぐおさらば、か。

…ならせめて目新しい何かが有れば、尚えぇんじゃがなぁ。



…さて、そろそろ最初の結果が分かる頃じゃ。

一体どんな結末を迎えたかの…?

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