第三幕 一章 ~更に、異世界転生の場合~
更に、異世界転生の場合┈┈case-1
正直な所、僕はもう異世界になんて行きたくなかった。
“箱庭”でダラダラと平穏に過ごしていたい。
でも今回の転生は強制的に決められていて、僕に選択の自由は与えられなかった。
最悪だよね。
それに、強制するならせめてちゃんと情報公開すべきだと思う。
僕が聞いたのは、あの少しおっかない神様陣営だって事と、後はとりあえず長生きしろって事だけ。
何の為なのかだとか、長生きの基準とか、その辺りの説明は一切されなかった。
どうせ僕に期待してないから適当に扱ったとかそんな理由だろうね。
勝手に巻き込んどいて酷すぎるよ。
転生する世界も選べないらしいし、本当に不親切すぎる。
神様相手じゃなかったら訴えるレベルだよ。
あーあ。
せめて僕が無双出来るか、安らかに死ねる世界だと良いなぁ。
…無理だよね。
だって僕、病気しにくい健康体なだけだし。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
転生した異世界なんだけど、
大きな戦争とかも無いし、魔物とかそういう化け物もいない。
ライフラインも整っているし、治安も良い。
町を歩くと至る所にコンビニがある様な、そんな現代的な世界だった。
平和主義な僕にぴったりの世界で、本当に良かったよ。
…最初に“ほとんど”平和って言ったのは、流行っている病気のせい。
僕が生まれるよりももっとずっと前からその病気はあって、罹ってしまった人はすぐに死んでしまう厄介な病気なんだ。
予防方法は一切無いし罹ったら治らない。
その代わりに人から感染もしない。
時折不意に罹る、そんな感じ。
僕もビクビクしてたんだけど、そういえば僕って唯一病気関係だけには強いんだったと思い出した時、ある意味無双なんじゃないかって気付いて興奮したよ。
何にも使えなさそうだった僕の特殊能力が活かせる世界に送ってくれるなんて、案外僕はちゃんと考えた上で転生させて貰えたのかもしれないね。
いつ来るかも分からない不意打ちの死を、誰もが警戒する独特の緊張感がある社会。
その中で僕だけは余裕を持って人生を謳歌していた。
僕の能力が病気に“
いや。
“
ある時、僕はその病気に罹ってしまった。
前世で死を経験したお陰で、死んでしまう時の感覚は分かってる。
でも僕が例の病気に罹っても、死ぬって感じは無かった。
ただ苦しくて辛いだけ。
これは予想でしかないんだけど、僕の能力は感染リスクの半減みたいな感じなんだと思う。
そして多分、この病気には終わらない辛さと致死性の二つの要素があって、それを半減した結果、致死性の方に病気のなりにくさが効いたみたいで。
ただただ辛い。
地獄の苦しみが続くってこういう事を言うんだろうね。
ひたすら全身が痛んでバラバラになりそうな感覚なんだよ。
しかも本当に、いつまで経ってもそれが終わらないんだ。
もう一つ、怖い事がある。
それは最近になって急に感染者が増え、人口が一気に減っている事。
このままの勢いだと二年も経てば人類は滅亡するかも、らしい。
二年程度なら平均寿命的に僕はまだまだ生きてるだろう。
そうなったら僕は二年後に唯一の生存者だ。
この苦しみを受けたまま、たった一人で孤独に生きる?
想像するだけで目眩に襲われる。
無理だそんなの。
でも人類滅亡までの二年間で治療法が見つかるかもって考えたら諦めきれない。
何で変に希望が残ってるんだろう。
絶望しか無かったら諦められるのに。
日々そんな事を思いながら、僕は痛みと苦しみでのたうち回り続けている。
早く終わって。
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転生例 No.21 …学生:A
転生先 …パンデミックの起きる現代的世界
死亡原因 …自ら舌を噛み切った為。
転生例 No.22,23 …学生:C,学生:K
転生先 …上と同じく
死亡原因 …共に感染した結果。尚、感染の拡大はKの体内で変異した事による。
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