異世界転移の場合┈┈case-3




目立つのって面倒くさい。

だからわたしは出来るかぎり素顔をかくす。



自分でいうのもなんだけど、わたしって美人だから。



美人はとくっていうけど、わたしはぎゃくだとおもう。


だってかおがととのってなければ、ただの庶民なわたしが、女子にいじめられたり変態に誘拐されたり先生にせくはらされたりしないでしょ?



いい意味でもわるい意味でも目立つのはいや。

だからわたしは出来るかぎり存在かんをけす。



存在かんをけすための努力ならわたしはおしまない。

かみをのばして眼鏡とますくでかおをかくして、趣味の読書をしていれば、それは立派な努力でしょ?



自分が目立つのはいやだけど、目立ってるひとをみてるのはすき。

めのまえでくりひろげられる物語をみている気分になれるから。



わたしのくらすには一人、そういうしゅじんこうみたいな男子がいる。

日常でかかわるのはむずかしいけれど、みているぶんにはとてもいい。



鈍感けいで難聴けいだから、みていてすごくむずむずするけど、多分ぎゃくにするどかったりしたら、あっさりひとの好意に気付いたりするだろうし、つまらないんだろうな。





そんな考察をしながらも日々たのしんでいたのに、不意にわたしの日常はぶちこわされてしまう。






あるときそのしゅじんこうくんが告白してきたのだ。


ふとしたときにたまたまわたしの素顔をみて、ひとめぼれしたとかなんとか言って。





好意をつたえてくれるのは正直うれしいけど、目立ちたくないわたしのこたえは勿論のー。

となりにいるよりは、ある程度の距離でみていたいから。



けどしゅじんこうくんはあきらめきれないとかいって、わたしにからんでくるようになってしまった。



わたしはくらすではなるべく地味にしてたから、かれをすきな女子どもはもう不満と嫉妬のあらし。

わる目立ちもしたくないのに、あくまで傍観しゃでいたいだけなのに、これはひどすぎる。





そのひも一人かえろうとしてたら、いつもどおりしゅじんこうくんがおいかけてはなしかけてきて、いつもどおりはーれむの女子共からの嫉妬の視線が、ずーっとちくちくざくざくつきささっていた。



いつもとちがうのは、不意にしゅじんこうくんの足元にあらわれた魔法じんみたいなひかり。

色々さっしたわたしは必死に魔法じんをけせないかと、ふみにじったり頑張った。



しかし、とうの本人であるしゅじんこうくんは、なにをはなせばわたしから興味をもってもらえるかばかりかんがえてるし、女子どもはしゅじんこうくんに夢中か、わたしをにらんでるしで、魔法じんには気付いてない。




とりあえず友達からでどうですか?と、しゅじんこうくんはいままで何度もきいた言葉をあらためていってきたけど。


そもそも友達になっても目立ってすごしにくくなるから、いやなんだってば。





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈





やっぱりあの魔法じんはいせかい召喚のやつでした。

気付けばしゅじんこうくんとそのはーれむ、うぃずわたしはしらないおしろの広間にいた。


混乱するかれらを尻目に、わたしはばれないようにそっとすみのほうによって、すてーたすとかありそうな言葉をあたまのなかでねんじてみた。



きっと綺麗なひとだろうなと、こえだけでも想像がつくような美声で“すてーたすおーぷん”ってきこえたと同時に、めのまえに透明なでぃすぷれいみたいなものが。



すてーたすきたぁーーー!



確認したら“隠密”なる素敵なすきるがあったから、つかおうと意識を集中してみた。




多分出来た。



だれもきづいてなさそうだったので、きっと発動できている。

そうおもったわたしはこっそり広間をぬけだした。





広間をぬけだし、しろもぬけだしたわたしは、これからなにをしようかとかんがえて、結果しゅじんこうくんたちの冒険を傍観することにした。


わたしの予想どおりなら、しゅじんこうくんは勇者としてこの世界に召喚されたはずだから。






結果はやっぱり予想どおりのいせかい召喚だった模様。


しろから冒険へと出発した、しゅじんこうくんはーれむあらため勇者くんぱーてぃーに、隠密すきるをつかったわたしはあっさりついていくことが出来た。




隠密は完璧だった。



勇者くんぱーてぃーのはらんばんじょうな冒険の、困難やら、成長の過程なんかも間近でみることが出来たし。


ついには魔王との最後のたたかいにまで、ついてくることが出来たし。

























勇者くんのはなった奥義だとかひっさつわざにもまきこまれるくらい、わたしは完璧に気付かれなかったみたい。



左脚が千切れかけ、みぎの半身はかたからさきがごっそりけしとんで、身体のあちこちがあまりの高熱で蒸発している、とおもう。




ただ、そんなことはいまはどうでもいい。

この決戦がおわるまでは、なんとしても隠密を維持しないと。



もし勇者くんがわたしに気付いたら。

もし自分の攻撃でわたしがしにかけてるって気付いてしまったら。


勇者くんはきっと、動揺してるうちに魔王にころされてしまうから。






わたしはいままでずっと見続けてきたからしっている。



勇者くんはわたしもこっちの世界にきていることに気付いてないってことも。


わたしにもう一度あうために魔王をたおしてもとの世界にもどろうとしているってことも。


それほどわたしをすきだということも。




…それを勇者くんがはーれむのみんなにぽつりとこぼした結果、あの雌豚どもがくにのえらい人達と結託して、勇者くんをもとの世界にかえらせない作戦を画策してるってことも。









…勇者くんの、むかしからやっちゃうきにしてるくせも、格好わるいからとかくしている趣味の手芸も、ちょっと複雑な家庭の環境も、ありとあらゆる全身のほくろの位置も、しょうがっこうでであった初恋のひとも、それがじつはわたしでむかしからずっとわたしをすきだったってことも、







いままでずっとずっと、ずーっと見続けてたからしっている。





勇者くんが奥義とかにまきこんでしまわないようにとはーれむ全員に個別ではった、結界という安全な場所から。



たたかいもせず声援をとばす、よくにまみれたけがれた雌豚どもをみると、とても明確な殺意をおぼえるけど。









それよりも、この世界にわたしたちを召喚したえらい人達と、

そのえらい人達に召喚するちからをあたえた、すてーたすのこえのぬしらしい女神。



わたしだけの”しゅじんこうくん“を、みんなの“勇者くん”にかえようとした奴等にたいしては、殺意だけでのろいころせそうなほど憎悪がつよかった。










とりあえず。




まけないでね、勇者くん。




わたしがみてるから。







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転移例 No.3 …学生:J

転移先 …異能と魔法の世界

死亡原因 …失血

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