改めて、異世界転生の場合┈┈case-9





俺は強い。

ケンカじゃ負けたことがねぇ。


今どき不良だなんてだせぇとか言う奴は片っ端からのしてきた。

不良上等。喧嘩上等。


俺が俺であるって示すのが不良って道だ。

それの何がだせぇんだ。


お勉強だのかしこまったやつはでぇきれぇだ。

人生なんざどれだけ濃いぃ経験したかだかんな。



そう思ってた俺だが、ある時に筋もんの奴らにボコボコにされた。

俺がのした奴らの中に筋もんの弟がいたとか何とかで。


ふさけんじゃねぇ!

そいつがてめぇでカタつけろや!

そう思ったが、そいつらには正直ビビっちまって何も言えなかった。


ボコられて、その事実を隠してたらその内、気付いたら広まってて、今まで俺にビビってた奴らが調子付きやがったんだ。


俺が大した事ねぇだとか言いやがってふざけんじゃねぇ!

けどそいつらをぶちのめしたら、また筋もんの奴らがしゃしゃり出て来やがる。


だからって、そんなクソみてぇな日常に耐えてたら、調子に乗った奴らが俺の妹を犯しやがった。

俺は底辺みてぇな不良だが、妹は別だ。


クソ厳しい親父とババアに勉強勉強ってしつこく言われても、まじめで優しい子に育った妹は俺のだいじなだいじな宝物みてぇな存在だ。


その妹に手ぇ出しやがったんだ。

誰だか知らねぇが絶対に許さねぇ。



そうして可能性のある奴らを全員ボコっていってたら、不意にナイフで刺されたんだ。

誰の命令だか、ビビってたのか知らねぇけど、ふざけんじゃねぇよ‥。


俺はぜってぇに俺の妹に手ぇ出した奴だきゃあ許さねぇかんな‥。





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈





…気付いた時にゃあ、俺は知らねぇ世界に生まれ変わってた。


なんでそんなことがわかるんだって言やぁ、俺の腹にナイフの刺し傷がねぇからに決まってんだろうが。

しかも、見たことねぇ母ちゃんに乳吸わせてもらうような経験させられちゃあ疑いようがねぇ。




図体がでかくなってきたとき、俺は自分が前よりも強くなってるって気付いたんだ。

ジャンプしてみりゃあ屋根より高くとびあがれるし、岩を殴りゃあ粉々に消しとぶんだからやべぇぐれぇ強くなってんのは確実だ。


俺ぁ新たな人生を手に入れたんだ。

前の人生みてぇにクソみてぇな奴らに人生狂わせられる事もねぇ。

…妹があの後どうなったかだけは気になるがぁよぉ。



そんでも、今の俺の人生は俺だけのもんだ。


自由に過ごさせてもらおうと思ってた。




























ただ、どうしても言葉がぁわかんねぇとなると話は別だ。


勉強が苦手だったせいかもしんねぇ。

どうにも父ちゃん母ちゃんが話す言葉すら、小せぇ頃から聞いてんのに理解がまったくできなかった。


どれだけ図体がでかくなってこようが、前の人生とくらべてさらに強くなってようが、それはいつまでたっても変わりゃあしなかった。



言葉がわからねぇってだけで、人間ってのはこんなに不安になるもんなんだな。


しかもこっちを見て話す奴がいりゃあ、どいつもこいつも悪口言ってやがるように感じちまってストレスもたまる。


そういう奴を手当り次第ぶん殴ったりできりゃあ楽だったかもしんねぇけど、いまの俺がそんなことすりゃあ殺しちまう。

バカな俺でもそれくれぇはわかる。



行き場のねぇ不安。

行き場のねぇ苛立ち。



一人でも言葉がわかる奴がいりゃあ、どれだけ気が楽か。

でもそんな奴はどこにもいねぇ。





どこにもいちゃくれねぇんだ。







-----------------















転生例 No.19 …学生:O

転生先 …現代的な世界

死亡原因 …大量の海水による窒息

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る