改めて、異世界転生の場合┈┈case-8
我慢する事が何より苦手なあたしだったけど。
あたしは神様の話を聞いてようやく理解したの。
神様は不利な状況を耐えて耐えてどうにか乗り越えたらしい。
しかもかなり得をしたらしい。
つまりはそう。
“不自由を我慢した事”でより自由を手に入れたって事。
あたしも前前世でセクハラとかに耐えていたら何かの拍子に社長とかにだってなれてたかもしれない。
前世でも理不尽に耐えていたら人々のトップに立てていたかもしれない。
そう考えると我慢をする事は利口なのかもしれない。
思えば小さな頃に認められていた事が否定されて、あたしはあたしだけが抑圧されているんだと思い込んで余裕が無くなっていたんだと思う。
一度死んで、二度死んで。
魂だけでこの“箱庭”で過ごして。
冷静に自分を見つめ直すことが出来るようになった。
というより子供の頃の記憶が既に遠いものになっていたから考えられるようになったのかも?
とにかくあたしはもう過去とは違う。
耐える事の必要性を知ったんだから。
正直もう転生なんてしないで、ずっとここで魂のまま過ごしていたい。
死ぬのは怖いし。
けどその恐怖だって我慢出来れば、きっと良いチャンスにも巡り会える。
今までの失敗も取り返せるかもしれないから。
あたしは神様に再転生を願い出た。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
新たにあたしが生を受けたのは、とてつもなく貧乏な家庭だった。
毎日食べる物に困る程のね。
けれどあの絶望的な世紀末を少しでも耐えた経験が活きたわ。
自給自足の生活だって何のその。
しかも魔法なんて便利なものもあるんだから我慢なんていくらだって出来る。
私が得意な魔法は水の魔法。
飲料水はいつでも確保出来るし、お湯を出してお風呂にだって使える便利な魔法。
恵まれていない中でも恵まれている方だって分かってるから我慢も苦じゃない。
多分あたしはこの世界ではそこまで我慢してない側だから。
こう考えられるようになったのもあたしの心が成長したからかもしれない。
もう二度と同じ間違いなんて犯さないって断言出来た。
魔法について家族の誰にも村の誰にも、何とも言われなかったから当たり前なものなんだと思ってた。
けどそれは多分あたしがいれば水に困らないっていう理由あっての、暗黙の了解として何も言わなかっただけなんだろうね。
思えば確かに他の誰も魔法を使っているのを見た事がない。
けど、あたしの水魔法も派手なものでもないし、生活の中でそこそこ使うぐらいなものなんだろうって違和感を持ってなかった。
違和感を唯一感じたのは少し前、行商人に水を出してあげた時の、その人と周りの反応ぐらい。
行商人は一瞬恐怖を、周りの村人は一瞬焦りを顔に滲ませてたから。
昔から人の反応を伺ってたあたしにとってはすごい気になる事だったんだよね。
その後、皆から“村の者の前以外では魔法を使うな”っていう意味合いの事をやんわり言われたし。
けどその時点で既に遅かったんだろうね。
その内、“魔女狩り”だって騎士の人達があの行商人の案内で村にやって来て、行商人の人があいつだってこっちを指さして叫んで。
あっという間に取り押さえられて、村の中心の木に縛り付けられた。
騎士の人達が他の村人に魔女を隠してたのかって聞いてるのが聞こえて。
村人達や家族が口々に騙されてたとか脅されてたって訴えてるのが聞こえて。
その証明って事で目の前にやって来た皆から、石だったりが投げつけられた。
皆憎しみを込めた表情で暴言を吐きながらね。
これも我慢した。
我慢出来た。
たまに辛そうにやってる人もいたから。
我慢してればその内終わると思ってたから。
でもあたしの想像以上に、この世界で魔法を使うっていうのは駄目な事だったらしい。
木に縛られたあたしの前で司教みたいな感じの人が、昔話みたいな本を読んで村人に聞かせてた。
それによると昔突然この世界に現れた魔法使いが、散々魔法で好き勝手やらかしたらしい。
だから魔法は許しちゃいけない。
そう言いながら杭みたいなのを持って近づいて来る。
何で?
何でそんな昔の事のせいで、せっかくあたしが得た力を使う事を我慢しなくちゃいけないの?
何で?
何で皆が許してた事を突然否定されなきゃいけないの?
何で?
何であたしが世界中の皆に合わせて妥協しなきゃいけないの?
何で?
何であたしには。
自由が許されないの?
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転生例 No.18 …成人:B
転生先 …平凡な中世的世界
死亡原因 …心臓の損傷
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