改めて、異世界転生の場合┈┈case-10
妬まれる側になった経験。
そしてそれに気付かずに捨てた経験。
もしかしたら誰にでもある経験かも。
両想いだって気付けなくて恋を諦めたり、才能がある事に気付けなくて努力を止めちゃったり。
何もかもを妬んでた私は、妬む為に周りをよく観察してた私は、そんなのいっぱい見てきたもん。
だから知ってるの。
気付けなくてチャンスを捨てた人達は後から気付いた時にどんな反応をするかって事をね。
悔しがったり残念がったりやり直そうとしたり…。
でもそんな反応って、正直軽いと思うんだよね。
だって本当に惜しい事をしたって思ったら絶望するんだよ?
ずーっとずーっと待ち望んでた私がそうなんだもん。
…正直心が折れたの。
しくしく。
でもそれと同時に冷静に分析しちゃってる私もいたの。
それで気付いたの。
“妬んだ相手が落ちぶれる=幸せ”っていう式が、“妬むと決めた相手を陥れる=幸せ”にいつの間にかすり替わってたってね。
だからもし次があるなら、陥れるのはやめようって決めたの。
だってせっかく他人を陥れても、私が幸せになれないんなら意味ないじゃん?
…また転生させてもらえる事になったから、今度は素直に乙女ゲームの世界に主役として転生させてほしいの、ってお願いしたんだ。
主役なら幸せになれるって確定してるもんね。
主役なら悪役は勝手に落ちぶれるもんね。
くすくすっ。
邪神を殺す為に強くなってって言われたけど、正直あんまり興味無いんだよね。
だって殺すだけだと転落してくのが見られないもん。
でも主役にしてもらえるんだし多少は貢献しないとだよね。
何か方法考えないと。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
生まれ変わったらそこは異能力がある世界だったの。
やったー!
喜ぶのと一緒に納得。
強くする為に転生させるんだから確かにこういうの無いとだもんね。
私の主役としての今世はどうやら、数百年に一度しか現れない癒しの能力者で、世界の危機を救う為に必要でー、って感じで突然異能力者の学校に入学させられる、みたいな?
私が生まれ変わってから何年かかけて、歴史書とかで色々と調べ回った結果、多分そんな雰囲気だって分かったの。
とりあえずそこからさらに何年かかけて、乙女ゲームとしての悪役、世界の危機、攻略対象達、その辺りについてを、調べ切るまでひたすら情報収集したの。
予想込みだけど大体理解したの。
けどそこからさらに大忙しだったの。
大変だったぁ、ふーっ。
でも今回は陥れるつもりが無いから、準備が無い所は前世より楽だったの。
じゃあ何が大変だったの?って言うなら、誰からも妬まれる側になる為に自分磨きするのが、未経験な事だしまったく慣れてなくて大変だったんだよー。
そんな苦労の甲斐もあって学園に呼ばれる頃には、見た目とか礼儀正しさとか可愛く見える仕草とか癒しの能力の強さとかも、ぜーんぶばっちり!
見る人全員に妬まれるような、“カンペキな主役”になれたの!
いざ、私が妬まれて、悪役が落ちぶれる、サイコーの舞台の学園へ!
楽しみだなぁ…。
にやにや。
そんな楽しみな気分はすぐ無くなったの。
誰も妬んでくれないの。
聖女様だー、とか言って崇めてくるばっかりなの。
悪役って私が目星を付けてた子も私に会ってすぐに、こんな悪い事を考えてましたー、お許し下さいー、みたいな涙ながらの懺悔してきたんだもん。
違うの。
私が求めてる事はこんなのじゃないの。
攻略対象の事を好きな女の子達に会っても、私が相手なら仕方ありませんー、とか言ってあっさり身を引くの。
違うの。
もっと醜く妬んでよ。
妬んでくれそうな根暗な感じの人とかがいたら挑発もしてみたんだけど、その内全員懺悔をしに来てスッキリした顔で帰ってくの。
違うの。
勝手に楽にならないでよ。
スラムに行けば貧富の差とかで妬まれるかなとも思って行ってみたら、私が来る事が分かれば国がスラムを改善しようとするー、とか言って皆ニコニコ歓待してくれるの。
違うの。
私を喜ばないでよ。
何でも出来るカンペキな人なんか妬んで当然だよね?
なのに何で誰も妬まないの?
妬んでよ。
嘲笑ってよ。
それを見返せるのが今世なのに。
世界の危機の正体だった、天変地異が起こった時、私はあえて何もしなかったの。
そうすれば、カンペキだと思ってた相手を妬む余地が生まれるかなってね?
そしたら皆はりきって、頑張って、天変地異を乗り切っちゃうし、逆に称えられるしでもう訳わかんないの。
ここでアナタ様に頼っていたら今後同じ事が起きたらー、とか、日頃のアナタ様を見て皆自分を見つめ直していたからー、とか、色々言われたけど。
違うの。
そんな人じゃないの。
だからお願い。
妬んでよ。
このままだと。
私がただおかしくて、ただ可哀想な子みたいでしょ?
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転生例 No.20 …成人:C
転生先 …異能力有りの乙女ゲームの世界
死亡原因 …老衰による衰弱
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