改めて、異世界転移の場合┈┈case-10






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此れは酷いのぉ。

邪神が居ると思しき世界は、儂が訪れた時点で既に混沌としておった。


邪神を殺す為、唯其れだけの為に何人もの転生者と転移者が来たが故の混迷。

各々が好き放題やりおるからもう滅茶苦茶じゃの。


しかし、ここまで荒れても邪神は出てきておらんのか…。

一体何処に隠れおったのかのぉ。


儂は一先ず辺りを散策するとしようかね。






…全く、何処もかしこも死体ばかりで気が滅入るわい。

中には見知った顔も居るから尚更よ。


今迄も異世界に渡った折に何度かこういった事は有ったがの。

…年寄りも先に逝くでないわ。


…よく見れば遊楽神最近のお気に入りの機人娘も惨たらしく死んでおるな。

やはり遊楽神は此奴らを派遣しておったか。


じゃが見通しが甘かったの。

其れに、邪神の居る世界で死んでしもうては、幾ら遊楽神と言えど魂の回収に時間がかかる。

暫くは使い物にならんじゃろな。


さて、残る怪しい反応は…。




何じゃ、如何にもな強い狂気を感じて来てみれば嬢ちゃんか。

目の前に転がっとるのは…、やれやれ。

やり合う相手を間違えた上に、死んでおるんじゃ世話無いわい。

まぁ役目はこなしただけ褒めてやるべきかの。


あ、嬢ちゃんはそのまま頼むぞい。





邪神め、何処に居るんじゃ…。

もしや自らの空間に閉じ込もっとるのかのぉ。


そうなると通常で有れば打つ手無しじゃろうな。

…じゃが、儂も伊達に何度も異世界を渡っておる訳では無いのじゃよ。


儂は今迄渡った世界の数だけ、異能力を持っておる。

中でも自信が有るのは、己の生命を糧に行う儀式魔法、其れと自らの魂を管理する術じゃ。


この二つの術を掛け合わせる事で、人身を超えた効果を実現させるのが儂の得意技じゃわい。

…まぁ死の苦しみは味わうがのぉ。



先ずは自らの生命を糧に、邪神の居る空間が有るかどうかを確かめる所から始めようかのぉ。



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…ふぅ、何度やっても慣れんわい。

じゃが空間が在る事は分かった。

次は其処へ跳ぶとするかのぉ。



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そうして、ようやく見つけたわい。

昔に見た姿そのまま。

気色の悪い触手を纏った女子、此奴が邪神じゃ。


此方に気付いても一切感情を見せんのは、どうせ人間相手には殺されんとでも高を括っとるんじゃろうな。


その通り、神を人間が殺す事なんて奇跡でも起きん限りは叶わん。


…じゃが甘いのぉ。

遊楽神は邪神との争いで弱っておったんじゃ。

であるなら彼奴も、少なくとも弱体化しておるのは間違いない。


此方に反応を示さないのも、もしかすると弱っておるからかもしれんな。


弱体化しとるなら儂の魔法で充分じゃ…、と言いたい所じゃが正直厳しいのは事実。


という訳で此奴には儂の“とっておき”の作戦を使わせて貰うとしよう。


儀式魔法の光が儂と邪神を包み込んでいく…。





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さて儂の必殺の作戦じゃが。


転移を何度もしておる儂は、感覚的に何となく会った事の有る者が転移していた場合、大体何処の世界に居るのかが分かるのじゃよ。


そして神を殺す為には色々と条件が有るんじゃがな?

その中の一つの条件が、“神を殺した事が有る事”、なんじゃよなぁ。


居るじゃろ?

最近紛いなりにも神を殺した事が有る、儂が会った事も有る奴がのぉ。



という訳で、勇者の男の元へ儂は動きを見せないままの邪神を連れて来たという訳じゃ。

此奴の今居る世界の者達には迷惑を掛けるが致し方有るまい。


殆ど完璧な作戦じゃろ?

正に儂にとっては“とっておき”じゃったからのぉ。




























だと言うのに何を思ったか此奴、邪神を殺す事を躊躇いおった!


邪神は居るだけで不幸を撒き散らす、言わば害悪じゃぞ!

下手すれば此奴が居るという事が、全ての世界に不幸を産んでると言っても過言では無い!


じゃと言うのに何を躊躇う!

此方に関心の無い今しかチャンスが無いと言うのに…!!


もう何かを壊すのはうんざり?

巫山戯るな小僧がっ!

貴様の我儘でどれだけの者達の未来が変わると思うておるんじゃ!


…隙を突くのは恐らく今しか無いと言うのに…!






…認めよう。


焦る儂は確かに油断しておったんじゃろう。


意識の外から、儂の腹を割く様に生える剣。

背から腹へと突き抜けた剣が、明確に儂の生命の灯火を遠い何処かへと引っ張る様な感覚。


久々じゃのう、自分以外に命を奪われるというのは。




やはり恐ろしいのぉ。

死という物は…。








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転移例 No.20 …成人:F

転移先 …異能と魔法の世界

死亡原因 …肺の損傷と多量の失血

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