改めて、異世界転生の場合┈┈case-1





なぁなぁで生きる毎日だった。


流され続けて、自分の意思を強く持てない、そんな日々。


愛想笑いと適当な相槌。

周りの意見にゆらゆらと揺れる。



自分の意思で決定したら、責任が生まれてしまうから。

周りの意志を尊重したら、無責任でもいいと思ってて。




イジメはダメな事。

でも周りが何も言わないなら、そのままでもいいのかな。


将来したい事。

本当にやりたい事は周りにバカにされるだろうから、現実的な方がいいよな。


好きな人。

周りから見たら不釣り合いだし、あの人の方が皆勧めてくるしな。



そうやって選択していく内に、気付けば僕は周りから見て“いい人”になれるように生活するのが癖になっていた。


“いい人”と言っても“善い人”じゃなくって、都合の“いい人”。

波風を立てないし、不用意な混乱も生まない、無難で無害な“いい人”。




でも、迷子の子とかがいたら、それは一緒に親御さんを探してあげる。

でも、重い荷物を持ったおばあさんがいれば、それは持ってあげる。



何でってそれはもちろん、周りの人が求めてるから。


“お前が行けよ”


“君がやれよ”


“助けてやればいいのに”



周囲の意見に流されて生きてく内に、そんな声が聞こえる様な気がしてきたから。


それを無視しちゃうと、矛先がこっちに向きそうな気がしてきたから。



多分皆、自分じゃないなら誰でもいいと思ってる。

誰かがやればいいって。


しかも別にそれに対して、皆は特に意識とかはしてないんだろう。


けど、もしその場の全員がやらなかったら?

そうするとそこの誰かしらに、その責任は回ってくる。

回り回って重くなった責任が。



なら重くなる前に僕が受け取ればいい。

そうすればそもそも責任が僕にない事なのに、わざわざ責任を負うなんて事が起きないから。


マイナスじゃなくてプラマイゼロで済むから。



ハイリスクハイリターンよりローリスクローリターン。

何だったらノーリスクノーリターンでいいとさえ思う。



敵を作りたくない。

それには、周囲に合わせる必要性がどうしても付いて回る。




他に誰もいなければ、こんな事そもそも考えなくて良いのにな。






そんな事を考えていたせいだったのかもしれない。

僕の前世・・は最悪だった。




周りの圧力に負けて、子供を助けて代わりに死んだ。



























その後、流れに流され続けた結果、産声をあげる事・・・・・・・さえ出来ない・・・・・・で死んでしまったんだから。



恵まれていたんだって思った。

選択肢を取る自由を放棄する。


それを選べた事も、自由の一つだったんだって。





だから本当の神様に会って、またチャンスをもらえる代わりに、神様の敵を倒す為に力をつけて協力をしてほしいって言われた時、僕は初めて自分の意思で決める事にした。


他の皆の意思も、神様の意思も、何も気にせずに。


だってこれまで二回の人生には、後悔しかなかったんだから。





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈





無事に新たな世界では、産声をあげる事が出来た。


どうやら前世での“病気になりにくい”という特性は残っている様で、僕は健康にすくすくと成長出来た。


ただまぁ、それ以外はやっぱり平凡な僕。

特にすごいと思える様な部分も、ひどい位に劣っている部分も無い。



























なら僕は何もしなくていいよね・・・・・・・・・・


前世の一件に巻き込まれてた他の皆の事は、神様の世界にいた時に知ってる。

僕なんかよりすごい人も当然わんさかいたよ。


それならこんな平凡で普通で平均的な僕が、役に立つ訳ないじゃないか。


病気になりにくい?

神様の敵を倒す事に対して、それが一体何の役に立つ?


あんなにすごい人達がいっぱいいたんだ。

神様だってきっと僕に期待なんてしてないよ。


それなら僕は邪神に関わらず、人生を楽しみたい。


だってその方がリターンは無いけど、リスクも無いから。



今世こそ、僕は好きな道を自由に選ぶんだ。


でもそこに生まれる責任はやっぱり持ちたくないんだよ。



神様に頼られた?


邪神が危ない?



そんな事どうだっていい。

勝手にしてよ。



どうせ、僕以外の誰かがやってくれる・・・・・・・・・



何も文句なんて無いでしょ?

どうせ皆同じ考えなんだから。









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転生例 No.11 …学生:A

転生先 …剣と魔法の世界

死亡原因 …魔物による全身の損傷。

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