異世界転生の場合┈┈case-5




ぼくの夢は長生きする事。

元気な身体になる事はもう諦めたから、せめてね?


この世に産声をあげた時から、病弱なぼくの世界は、ずーっと病院のベッドの上。


母さんは恨んでないよ。

というより恨みたくても恨めない。

ぼくを産んで、母さんはこの世を去ったから。



外を駆け巡る事も、健康的な日常も、結婚をしたりなんて甘い未来も、全て想像する事だってままならないぼくの、ベッドの上というとても狭くとても小さな世界での数少ない楽しみ。


それは物語を読む事。

物語を読んでる間は、胸の苦しさも、頭痛も、目眩も、息苦しさも忘れられる。



最近は異世界転生という物語がぼくの好み。

だって生まれ変われたら、外の世界に出られるから。






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そんな事を考えていた罰なのか、どうやらぼくは遂に死んでしまったらしい。


何で分かるかって言えば、オドオドとした女神様が顔色を伺いつつ、教えてくれたから。

加えて女神様は、異世界転生させてくれるとも教えてくれた。


感激した。

長生き以外に唯一密かに願っていた事、それが叶うんだよ?

この感激は誰にも分からないと思う。



多少融通を効かせてくれるそうなので、健康な身体での転生を願った。

そんなこと・・・・・でいいの?って女神様に聞かれた時は、思わず掴みかからんばかりに怒りが湧いた。


怯える女神様を見て、謝罪と共に反省を伝える。

だってこれで女神様の機嫌を損ねてしまうのは、都合が良くないと思ったから。


それに立場が圧倒的に上な筈の女神様が、下に下に謙るというのは、今まで経験した事の無い快感なんだもの。

好ましくすら思ったよ。


調子に乗ったついでに女神様に拝み倒して、転生直後には転生したという記憶が目覚めない様、封印して貰う事にした。


何故だかは自分でもあまり良く分からない。

多分母親というものに触れ合うのが、母親の苦労というのを知るのが、怖かったのかもしれない。


こうしてぼくは理想の条件で、異世界転生に臨む事が出来た。






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次に意識が戻ったのは、ぼくが転生の事を思い出した時。




















ぼくはベッドの上だった。


転生はちゃんとしたよ?夢なんかじゃない。





いや、それこそ前世なんてものが夢だったのかもしれない。







だって僕は今年で109歳。

呆けていても不思議じゃないもの。


若い頃の事は何となく覚えている。

剣聖と呼ばれ戦場を駆け巡った日々を。

病気なぞとは縁も無い健康そのものな日々を。


沢山の孫が代わる代わる面倒を看てくれる、暖かで誰もに羨まれる家庭もあって。

全ての願いを叶えた生ける伝説ともなって。















不満を感じるぼくは、我儘なのだろうか?









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転生例 No.5 …学生:E

転生先 …剣術の世界

死亡原因 …寿命


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