異世界転生の場合┈┈case-10




この世の全部、全部が全部、妬ましいの。


生まれてこの方、妬まない事なんて一度もなかったの。


一番最初の妬みはまだ可愛い方だと思うよ?

パパと仲良くするママを妬ましく思っただけだもん。


次に妬んだのは近所に住む同い年の子。

うちは貧乏だったから、お金持ちのあの子が妬ましかったの。


何でこんなに妬むんだろうって思った事?

ないよ?

自分で分かってるんだもん、私は私が可哀想だから周りを妬むんだって。









私はパパと愛人の子で、パパはママには連れ子って言ってるんだって。

でもね?ママは実はそれを知ってて、パパがいない時、こっそり私に言い聞かせて教えてくれたんだよ?










お前は意地汚い可哀想な子だ。

望まれてない子、必要ない子、要らない子、だって。







何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も








まぁそんな感じで妬み続ける毎日を送ってたんだけどね?

ある時、私の未来を変えるような出来事があったの。



さっき言ってた近所のお金持ちのおうち。

そこのおうち、お父さんが社長だったんだけど、その会社が突然潰れちゃったの。



ぞくぞくっ



その日から今までは自信満々、堂々としてた子が、たまにオドオドするようになったの。



ぞくぞくぞくぞくっ














ざまぁみろ。
















実際その頃には、善悪の分別とかはもう分かってたけどね?

ほら、私って可哀想な子でしょ?



だから妬ましく思えるような凄い人には、それ相応のマイナス評価もあるくらいがちょうどいいと思って。

私は意地汚いから、バレないようにこっそり、こーっそり、新しい評価を付けてあげることにしたの。




まず手始めの中学校時代では。


何でも出来る委員長サマは、裏では万引き常習犯。

色んなスポーツ大会で優秀な成績収めまくりのスポーツ推薦クンは、ライバルに不良をけしかけて潰す悪の親玉。



続きまして高校時代に入ると。


皆のアイドルなマドンナ先生は、男子生徒と寝るわいせつ教師。

地元で人気の優しい奥サマは、家では子供にネグレクト三昧。

他校にすら顔を知られる程の超イケメンクンは、ストーカーで盗撮魔。




私が新しい評価を付けてあげるとあら不思議!

ほんとに・・・・そうなっちゃうの・・・・・・・・


しかもそれが広まって、皆引っ越したりしていなくなっちゃうんだ。

なんでだろうね?

不思議だね?



くすくすくす











ざまぁみろ











大人になってね?

私は高校の先生になったの。


何で先生になったかって言ったら、大人より子供の方がやりやすいから・・・・・・・

未だに私のせいにして、接近禁止命令ムシして近付こうとしてくる人とかもいるんだからね?

ぷんぷん。



それにうら若き高校生たちに、妬ましく思う事なんて腐るほどあったしね?


で、先生を続けて三年目。

ようやく担任のクラスも持つ事になって、さぁ色々頑張るぞー!な初日に、教室がピカーって光って、私の生徒みーんないなくなっちゃったの。


私ビビっと来たんだ。

あ、最近ハマってる本にある、クラス転移ってやつだって。


すっごく妬ましいのに、その相手がいなくてぐぬぬぬしてたら。


集団誘拐したーとかクラス全員殺して埋めたーなんて周りに好き勝手騒がれて、

ゴタゴタしてる隙を突いてやってきた元ママにブスリ。



殺されちゃったの。






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可哀想な私を神サマは見捨てなかったの。


異世界転生できるって聞いて、私の頭に浮かんだのは、私の大好きなとあるジャンルの異世界転生のお話。


それを思い浮かべたら、私はもうそれしか考えられなくなっちゃったの。

だから神サマにこうお願いしたんだよ?




乙女ゲームの世界に悪役として転生させてほしいの、って。




とっても賢そうな神サマはそれを聞いて理解不能って顔をしてたの。

というより実際言われたもん。むむむ。


アタマが良くてなんでも出来そうな神サマには、尚更わからない条件でしょうねー。ぷんぷん。


けどアタマが良いっていうのはステキ。

そういう人を散々利用してきた私にとって、色んな意味で神サマだもん。



とにかくオッケーしてもらえたし、これで“ざまぁ”って出来るんだなぁって、ホントに楽しみなの。






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なのに、それなのに、どうして誰も可哀想な私をかばってくれないの?



王子サマが学園に転入してきた、田舎で育てられた大貴族の隠し子に恋をした。

王子サマは、生まれた時から決まってた婚約者を婚約破棄してーっていう、よくあるやつ。


その婚約者に生まれ変わったのが私なの。


こういうのって悪者に見えて実は可哀想な私を、陰ながら見てた人が助けてくれたりしてさー。

逆に王子サマと転入生チャンが追い詰められて、“ざまぁ”ってなるのがお約束なの。


成功の約束された王子サマだって、ぽっと出でも優遇される転入生チャンだって、すっごくズルいもんね、すっごく妬ましいもんね。




生まれ変わって調べ続けた結果、多分ここはそんな世界だって分かったから、今度はひたすら準備を続けたの。


どんな準備って?

小さい頃からずーっとずーっと周りの印象を操作し続けたの。


いざっていう時に私が悪いと思われないように、念入りに、綿密に、悪い事もぜんぶ周りが勝手に暴走してやってもらってーってね。




そうやって恵まれた二人に新しい評価を付ける為だけに、私は努力し続けてきたのに。


転入生チャンが私に嫌がらせをしてた証拠だって、王子サマと転入生チャンの不貞の証拠だって、勿論・・あるから、皆が私を可哀想に思ってるのは間違いないハズなのに。









なのに王政の国だから、王子サマの言いなりで当然とか理不尽すぎるの。



こんなに長いあいだ準備してきたんだもん、お願い誰か助けてほしいの。




それで周りの人に助けてーって目を向けたら、ヒソヒソ聞こえた話が私の耳に届いたんだ。












“確かに可哀想だけど、王子サマの婚約者なんて、妬ましい立場にいたあの子のブザマな姿はとっても愉快”って。























私って、可哀想以外にもなれるんだ。







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転生例 No.10 …成人:C

転生先 …乙女ゲームの世界

死亡原因 …自傷行為による多量の失血


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