第26話 パンチラから始まる魔法生活②

意識を取り戻すと激しく揺れる乗り物の中に居るようだった。車の中にしては、激しく揺れるのとエンジン音がとてもうるさい。耳につけられたインカムから声がする。



「まずは私たちの目的な。魔法少女の目的は町の平和を守るために存在しているんだ」


「私たちは特別に魔法を使うことを許されているの」


「だけど破魔町以外の人間に正体がばれてはいけない」


「ばれたらそいつを仲間に引き込むしかない。じゃないと、そいつもバレた魔法少女も処罰をうける。だいたいカエルやナメクジにされるな」


「だからいつも人払いの呪文をかけて魔力がない人間はのけていた」


「でもあそこにいたということはお前にも才能があるってことだ。一緒に頑張っていこう。レッツ魔法少女!」


いやいや、むりむり。


「で、かおりさん・・・」


「ん、なにかな?ほのかくん」


「どうして私は椅子に縄でぐるぐる巻きに縛られているのかな?」


 意識を取り戻したあとに矢継ぎ早に説明をされて気づかなかったが、かなり強めに縛られていて一切身動きがとれない。


「魔法少女になる覚悟は決まったか?」


「い・や・で・す。なんでそんなけったいなものにならなければならないんですか」


「けったいやて!!!数千年の歴史をもつ魔法国マジランドで女王様もなられた高貴な職業たる魔法少女にけったいなどと言いおって、バチ当たるで」


 赤い毛玉がいった


「ていうかあんた何?きもいんですけど」


「がーーーーん、ワイのプリティボデェ見てわからんのかい!魔法少女ゆうたら、マスコットじゃろがい」


「まぁ落ち着けって。答えは聞いてない。まずお前に選択しはない。はい、か、YESだけだ。お前の魔力量じゃあ変身すらできないから、まずは変身できないとな」


「変身なんてでーきーまーせーん!」


「いやしないと死ぬから」


ぱかっ


床が開き、真下には町が見えた。


 は?一瞬の浮遊感と猛烈な風が吹き荒れる。

 

「うそあああああああああああああああああああああああ」


あっという間に小さくなる飛行機。


「んなんじゃこりゃあああああ」


落下の衝撃からか魔法が解けたのか簡単に縄がほどけたけど。



 風の轟音が耳元を通り抜けた。目下に広がるのは見慣れぬ町の景色。

 あ、あそこ私たちの学校だー。私明日からあそこにかようんだー。


「て、いってる場合じゃない!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!マジで死ぬー!」


 私、ほのか中学1年生。現在知らない町の上空でパラシュートなしの自由落下中。

 学校の制服がブレザータイプのスカートのため、逆テルテル坊主状態で落下している。

 パンチラっとかではなく、パンモロである。

 今きっと上空を見上げた人は妖怪パンモロ星人を見たとSNSで拡散するだろう。


「ああああああああああ!」


 なんとか、テレビでみたことのあるうつ伏せの姿勢にもっていこうと体をかがめるがうまくいかない。

 ああ!!もうスカートじゃまああ!!猛烈な風のためたなびく布がうっとしくて仕方がない。


「どぅおらあああ!」


 よし、スカートは脱げた!!あっというまにスカートは空のかなたに消えていった。さらば私の防具。数回しか着てないけど。これであとはうつ伏せの姿勢になって少しでも空気の抵抗を増やす。


「しっしっし!ほのか!早く魔法に目覚めないと死ぬぜ」


 上空で聞こえるはずのない声。周りを見渡すもだれもいない。


「上だよ上、ベージュパンツ」


 くっそこいつ。今うつ伏せになったところなのに!

 身体をひねって上を見る。


 黒い山高帽子に赤みがかった髪色をした女がこちらを見ている。目の色はサファイア色。不敵な笑みを浮かべる。

 彼女も落下はしているのだが、服の乱れは一切ない。


「地面まであと数十秒だ。言い残すことは?」

「本棚とHDDは何も見ずに処分しといてえええええ!!!」

「それでいいのかよ」

「他になに言えばいいの!!」

「変身とかメタモルフォーゼとかチェンジとかあるだろ」

「あー!もうやけだ!変身!」

「まだ気合いが足りない!」

「メタモルフォーゼ!!」

「信じる心が足りない」

「チェンジ!!!」

「色気も足りない」

「うっさいわ!!!!」


当然何も起こらず、虚しく風の音が駆け抜けるだけだった。


「才能ないなー」


 呆れた顔で言った。溜息をついて懐から杖を取り出す。長さは20cmほど。材質は木。表面はみたことのない文字が細かくびっしり刻まれている。


飛翔ふらい!彼のものに空を駆ける力を与えよ!」


 そう言い放った。

 するとどうだろう。私の落下スピードがみるみると遅くなっていく。これなら地面に激突せずにす


「ぐべっ」


 かわいい女子中学生が出しちゃいけない音を立てながら、顔面から地面に突っ込んだ。

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