第14話 占い師ラックっきゅ!イケメンはきらいっきゅ!

「こっち」


さきちゃんのつれられるがままに寮の地下『ドア』へ向かう。寮の地下には、破魔町の各所に直通でワープできる『ドア』がある。学校や町役場、商店街、マジックストリート…。ゲートを利用するためには、自分の魔力を使わないといけないから、魔力量の少ない私はあまり利用しない。しないというかできない。てか、ドケチのさきちゃんが『ドア』を使うなんて。よっぽどのことだ。


「さきちゃん『ドア』使うの?私悪いけど、さっきちょこっと魔法を使って、魔力が、たりなくて」


「わたしが魔力を出す」


さきちゃんが、魔力とは言え、おごる…だと。いったい今日のさきちゃんはどうしてしまったのだろうか。明日は雨かな?


「握手券のチケットも私がもつ」


槍が降るな。明日は。


いくつかの『ドア』を通りすぎ、紫色のドアの前へ。さきが杖をドアノブにあてて、魔力をこめる。ドアがカタカタと小刻みに振動したあと、また静かになったのを見計らって、ドアを開ける。目の前には古びた本屋。店主が一度私たちを見たけど、いつも通り新聞を読み始めた。店から出るドアを開けると中央広場だ。4つの区の中心には御神木がそびえる。また破魔町の役場や重要な施設はこの中央広場に隣接するように建っている。


 中央広場に着くと、夜の7時を回っているのにも関わらず、まだ長蛇の列が続いていた。占いを待っている人の列は広場をぐるりと一周して、メインストリートへと伸びていた。


「ひょえー。まじか。さきちゃん明日にしよっか」

並んでいる人は老若男女を問わない。この街の住人たちだ。ていうか、あのイケメン占い師の人気どれほどのもんだ。


「…こっちだよ」


 さきちゃんはわたしの手を掴み、ぐいぐいと進んでいく。

「ちょ、さきちゃん?今日はえらく積極的じゃない?」


「ほのかは町を救った魔法少女。だからVIP席がある」


 並んでいる人たちには、申し訳なかったが、夢見がちな表情してるから大丈夫だよね。せっかくイケメンと出会うんだから、言葉遣いは丁寧にしなきゃね!


「ねぇねぇほのか」


「なぁにぃ?カトリーヌ」


「誰ッキュか?!」


 まったく、溢れんばかりのセレブリティが分からないのかしら?ってか空気読め。相手はテレビに出るようなセレブよセレブ!ミッキュがカバンの中でニッコリほほえんで囁く。


「今ならスカート覗き放題っきゅね」

「黙ってて、ボケナス」


 さきに連れられて歩いていくと広場の中央で御神木をバックにラックが待ち構えていた。洒落た帽子を被り、水晶玉をかかげる。


 おぉイケメンだ。生で見るとまた一段とかっこいいな。彼が微笑むだけで、世界に草木が芽生えるだろうさ。


「はじめまして。わたくし、宮内ほのかと申しますですわ」


精いっぱいの営業スマイルを浮かべ、落としにかかる。


「やぁ、可憐でまな板なお嬢さん。君のまな板で、野菜を切ると、さも上手にきれるだろうZe!」


「・・・はい?!」


 よし、わかった!戦争だな。髪の毛1本残らないと思え。イケメン?しらねぇよ。男は全員敵だ。胸ばかり見やがって!

 杖を持ちうでまくりをして、ラックに近づこうとするとさきちゃんがこちらに杖を向けた。


「…おっと、さきちゃん、邪魔をするのかい?」


 魔力の揺らぎを感じて、両手を静かにあげる。親友に対してニヒルに微笑み振り返るがさきちゃんは何も言わない。


「あぁ、無理無理!彼女は僕の魔法にかかってるからね。まさに夢の中さ」


 ラックがそう嘯く。


「すぐに攻撃しないのは、なんでかな?もしかして、スーパーイケメン占い師さんは私に惚れた?」


 そういうとほのかは体をくねらせた。ミッキュはカバンの中で吐いた。


「ふふふっバカ言っちゃいけないな。僕の魔法があれば、絶世の美女も虜にできるのに、なんでこんなクソ田舎のちんちくりんガールに熱を上げなきゃいけないのさ。なぁ?白肌大根ガール?」


「誰が起伏の乏しいスットーンボディだ!」


 大根にだって艶めかしボディの大根あるわいっ!


「…魂よ…魂よ…わが問いに答えよ…。さすれば、極楽浄土へ導かん」


さきちゃんが杖をふるうと、カラフルな鬼火が宙に浮かび始める。


「たましいゆらめけ…幽霊少女ゴーストライダー


さきちゃんの姿が鬼火に包まれ魔法少女姿に変わる。町はずれにある竜宮神社の跡取り娘でもあるさきちゃんは巫女服をかわいらしくアレンジした魔法少女服だ。

だが、今夜は違う。私に敵意を持っている。


憑依ダウンロード剣豪ソードマスター


宙に浮かぶ蒼い鬼火が彼女の杖に宿るとそのまま日本刀を模す。

そのまま一気に斬りかかってきた。


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